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水上商業都市 ルドヴィーコ へようこそ
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翌朝。
再び事務所に戻ってきたユノと共に、幸雄はヴェネツィア風の商業都市を歩くことに決めた。
目的地はユノが所属する海洋新報ギルドだ。
彼女曰く、「それだけの目利きができるなら雇って貰えるかも」とのことだった。
寝床以外に、働く場所まで工面してくれるユノ、幸雄にとって彼女は女神そのものだった。
「ありがたや~、ありがたや」
「その代わり、稼げるようになったら家賃入れて貰うからね」
コクコクと頷く幸雄に、ユノは『夢の不労所得だ……うれしっ』と喜びを噛み締めていた。
そんな狸の皮算用を横目に、事務所のある住宅街を離れて、長い距離を歩き続ける。
すると赤い屋根と白い壁はそのままに、建物群はその高さを変える。
同時に朝と磯の臭いが鼻腔を通り抜けていった。
どうやらオフィス街に辿りついたようだ。
「ココは水上商業都市『ルドヴィーコ』のど真ん中、人口はおよそ30万人もいると言われるの。大都市の中心に来た感想はどう? 」
幸雄は改めてココが、別世界だと分からされたような気分だった。
運河の両脇には5階建ての石造りの建物が隙間なく並んでいる。
日当たりは最悪だが、土地の坪単価は銀座並みだろう。
運河には、通勤客をすし詰めに載せた乗り合いの蒸気船が、黒い煙を吐きながら行き交っている。
「うへぇ……こっちの世界も満員電車はあるのかよ」
船縁から零れ落ちそうなほど密集したサラリーマンたちを見て、幸雄は顔を顰めた。
「どう? 凄いでしょ? 」
こんな大都市は見たことがあるまいと、ユノはしたり顔で幸雄の顔を覗きこむ。
幸雄はそんな彼女に渋谷を見せたら、ひっくり返るだろうなという感想を持ちつつ頷いた。
「ああ。立派だぜコイツは……ここが毎日90万食の飯が消費され、排泄される巨大な胃袋の中心地だってんだろう。ワクワクするぜ。港が三日止まれば暴動が起き、一週間止まれば餓死者が出るんだ。食料の備蓄がマストな超危険都市だぜ。ヘッヘッヘッヘッ……」
「危険都市……? 畑がないからそう思ったのかな……。ココは世界一食料が飽和していると言っても過言じゃないんだよ。特にこの街で作られるパンなんてふわふわでさ、一度食べたらきっとやみつきになっちゃうよ」
彼女のいうことを裏付けるように、陸海では大量の物資が行き交いしていた。
水上には他にも食料や物資を乗せた大小さまざまな船が往来しているが、陸上も負けてはいない。
道路には線路が引かれ、狭いビルとビルの間を蒸気を鳴らして列車が走り、それが過ぎれば馬車の音が後を追うように聞こえてくる。
青い朝日が街を埋め尽くす中で、街はもう目を覚まして動き出しているようだった。
そんな通りを歩いている途中で、幸雄はある馬車を目にする。
「あぁ、これって昨日見た配送業の……だせぇ名前の……」
ロゴマークは間違いなく昨日見たのに名前が思い出せない。
「あれって配送ギルドの”疾風”じゃない? 」
ユノが先に答えた。風のマークの配送ギルド”疾風”、幸雄が間違いなく上がると見た企業だった。
「あ、そうそう疾風だ」
「あそこのタイヤだけ他の馬車と違う! 彼ら、タイヤを新しくしたみたい」
それだけではないように幸雄には見えた。サスペンションも新調して、他の馬車よりも揺れが抑えられているように見える。あれなら、他の馬車よりも強い衝撃に耐えられるだろう。
「良いところに投資してんじゃん。そりゃ、配送業なら乗り物にベットするよな」
「へぇ……確かにあれなら、中に入った荷物も揺れずに遠くまで運べそうね。陸路でしか届けることの出来ない場所もあるだろうし、あれなら企業価値も高くなりそう」
そんな風に二人が橋から見ていると、疾風の馬車がパン屋や商店に荷物を降ろしているところに偶然居合わせ、店主と配達員の会話を聞くことが出来た。
「おいおい、困るよ。またこんな埃っぽい袋かい!? 」
「こっちもギリギリでね。まぁ一時の辛抱さ」
そんな会話を聞きながら、ふとユノは幸雄と話していた先ほどの会話を思いだす。
三日止まれば暴動、一週間止まれば餓死者が出る。
幸雄のそんな不吉な予言に彼女は「ぱ、パンが無ければケーキを食べればいいじゃない……! 」と心の中にいる邪悪な幸雄に対抗する。
しかし幸雄は目ざとく、馬車から降ろされた小麦袋の日付に焦点を絞った。
「今日って何月だい」
「五月だけど……それがどうかしたの? 」
指さした袋にユノも目を凝らす。
「あの袋に書いてあるのって……」
「四月のものだね。別に賞味期限は大丈夫だよ? 」
「ユノ、お前が言ったんだぞ。ココは大都市で人口30万人が暮らしてるって。毎日九十万食が消える、そんな大都市で、一ヵ月も眠ってた麦が市場に流れるってどういう意味だと思う? 」
幸雄は港の方角に視線をやる。この予想がどうか外れますようにと。
「うそ…まさか新しい麦が入ってきてないの……? 」
「おそらくな。製粉所は今、新しい麦を挽くのを止めて、備蓄していた古い在庫を吐き出し始めてるところだろう。……このままだと、来週にはパンの値段が跳ね上がるぞ……まあ、当てずっぽうだけどな」
本来であれば、ココからネットで情報を更に収集して監視銘柄に入れるかどうか決めるところだ。
しかし、今の彼にはその”当てずっぽう”を裏打ちする情報が欠けていた。
「最新の情報なら、うちのギルドにあるかも。急いで! 」
ユノと幸雄は情報の最前線が集う海洋新報ギルドに急いだ。
再び事務所に戻ってきたユノと共に、幸雄はヴェネツィア風の商業都市を歩くことに決めた。
目的地はユノが所属する海洋新報ギルドだ。
彼女曰く、「それだけの目利きができるなら雇って貰えるかも」とのことだった。
寝床以外に、働く場所まで工面してくれるユノ、幸雄にとって彼女は女神そのものだった。
「ありがたや~、ありがたや」
「その代わり、稼げるようになったら家賃入れて貰うからね」
コクコクと頷く幸雄に、ユノは『夢の不労所得だ……うれしっ』と喜びを噛み締めていた。
そんな狸の皮算用を横目に、事務所のある住宅街を離れて、長い距離を歩き続ける。
すると赤い屋根と白い壁はそのままに、建物群はその高さを変える。
同時に朝と磯の臭いが鼻腔を通り抜けていった。
どうやらオフィス街に辿りついたようだ。
「ココは水上商業都市『ルドヴィーコ』のど真ん中、人口はおよそ30万人もいると言われるの。大都市の中心に来た感想はどう? 」
幸雄は改めてココが、別世界だと分からされたような気分だった。
運河の両脇には5階建ての石造りの建物が隙間なく並んでいる。
日当たりは最悪だが、土地の坪単価は銀座並みだろう。
運河には、通勤客をすし詰めに載せた乗り合いの蒸気船が、黒い煙を吐きながら行き交っている。
「うへぇ……こっちの世界も満員電車はあるのかよ」
船縁から零れ落ちそうなほど密集したサラリーマンたちを見て、幸雄は顔を顰めた。
「どう? 凄いでしょ? 」
こんな大都市は見たことがあるまいと、ユノはしたり顔で幸雄の顔を覗きこむ。
幸雄はそんな彼女に渋谷を見せたら、ひっくり返るだろうなという感想を持ちつつ頷いた。
「ああ。立派だぜコイツは……ここが毎日90万食の飯が消費され、排泄される巨大な胃袋の中心地だってんだろう。ワクワクするぜ。港が三日止まれば暴動が起き、一週間止まれば餓死者が出るんだ。食料の備蓄がマストな超危険都市だぜ。ヘッヘッヘッヘッ……」
「危険都市……? 畑がないからそう思ったのかな……。ココは世界一食料が飽和していると言っても過言じゃないんだよ。特にこの街で作られるパンなんてふわふわでさ、一度食べたらきっとやみつきになっちゃうよ」
彼女のいうことを裏付けるように、陸海では大量の物資が行き交いしていた。
水上には他にも食料や物資を乗せた大小さまざまな船が往来しているが、陸上も負けてはいない。
道路には線路が引かれ、狭いビルとビルの間を蒸気を鳴らして列車が走り、それが過ぎれば馬車の音が後を追うように聞こえてくる。
青い朝日が街を埋め尽くす中で、街はもう目を覚まして動き出しているようだった。
そんな通りを歩いている途中で、幸雄はある馬車を目にする。
「あぁ、これって昨日見た配送業の……だせぇ名前の……」
ロゴマークは間違いなく昨日見たのに名前が思い出せない。
「あれって配送ギルドの”疾風”じゃない? 」
ユノが先に答えた。風のマークの配送ギルド”疾風”、幸雄が間違いなく上がると見た企業だった。
「あ、そうそう疾風だ」
「あそこのタイヤだけ他の馬車と違う! 彼ら、タイヤを新しくしたみたい」
それだけではないように幸雄には見えた。サスペンションも新調して、他の馬車よりも揺れが抑えられているように見える。あれなら、他の馬車よりも強い衝撃に耐えられるだろう。
「良いところに投資してんじゃん。そりゃ、配送業なら乗り物にベットするよな」
「へぇ……確かにあれなら、中に入った荷物も揺れずに遠くまで運べそうね。陸路でしか届けることの出来ない場所もあるだろうし、あれなら企業価値も高くなりそう」
そんな風に二人が橋から見ていると、疾風の馬車がパン屋や商店に荷物を降ろしているところに偶然居合わせ、店主と配達員の会話を聞くことが出来た。
「おいおい、困るよ。またこんな埃っぽい袋かい!? 」
「こっちもギリギリでね。まぁ一時の辛抱さ」
そんな会話を聞きながら、ふとユノは幸雄と話していた先ほどの会話を思いだす。
三日止まれば暴動、一週間止まれば餓死者が出る。
幸雄のそんな不吉な予言に彼女は「ぱ、パンが無ければケーキを食べればいいじゃない……! 」と心の中にいる邪悪な幸雄に対抗する。
しかし幸雄は目ざとく、馬車から降ろされた小麦袋の日付に焦点を絞った。
「今日って何月だい」
「五月だけど……それがどうかしたの? 」
指さした袋にユノも目を凝らす。
「あの袋に書いてあるのって……」
「四月のものだね。別に賞味期限は大丈夫だよ? 」
「ユノ、お前が言ったんだぞ。ココは大都市で人口30万人が暮らしてるって。毎日九十万食が消える、そんな大都市で、一ヵ月も眠ってた麦が市場に流れるってどういう意味だと思う? 」
幸雄は港の方角に視線をやる。この予想がどうか外れますようにと。
「うそ…まさか新しい麦が入ってきてないの……? 」
「おそらくな。製粉所は今、新しい麦を挽くのを止めて、備蓄していた古い在庫を吐き出し始めてるところだろう。……このままだと、来週にはパンの値段が跳ね上がるぞ……まあ、当てずっぽうだけどな」
本来であれば、ココからネットで情報を更に収集して監視銘柄に入れるかどうか決めるところだ。
しかし、今の彼にはその”当てずっぽう”を裏打ちする情報が欠けていた。
「最新の情報なら、うちのギルドにあるかも。急いで! 」
ユノと幸雄は情報の最前線が集う海洋新報ギルドに急いだ。
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