この恋は推すわけにも退くわけにもいかない

藤谷葵

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第6話

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 放課後になり、みんなは授業からの解放感で、騒ぎながら段々と帰って行った。私もひとまず、帰る人たちに混ざる。
 だが、ふと思う。みんなが帰ったのをどうやって確認すればいいのだろう?
 そう思った私は、千聖に協力してもらい、校庭から会話をする振りをして、教室を見つめる。幸いなことに、花畑さんの席は窓際で、席についている姿が見える。
 そこでまた自分のミスに気付いて、千聖に泣きつく。

「ね、ねえ、これじゃあ、花畑さんがいるのはわかるけど、他のクラスメイトがいるかどうか分からないよ! どうしたらいい?」

 他人事の千聖は、目を太陽の日差しを遮りつつ、教室を見て呟く。

「あ、花畑さんが立った」
「え?」

 私は慌てて駆け出す。きっと、花畑さんが最後となり、誰も来ないので、帰ろうとしているのであろう。
 だが、玄関から教室の間までで、花畑さんの姿を見かけていない。たまたま立ち上がっただけで、まだ教室にいるのかもしれない。
 私は呼吸を整えて、そっと教室を覗き込む。
 教室内には、花畑さんが一人だけ椅子に座り、机に突っ伏している。それを見て疑問がわく。

(なんで、私の席にいるの?)

 疑問は置いておくとして、目的をやり遂げるために、教室のドアを開けて中に入る。
 ドアが開く音に、花畑さんが反応して、上体を起こした。

「あ……」

 花畑さんの小さな声。私が来ることが意外だったみたいな反応。それもそうか。男の子がラブレターを出したのかと思ったことだろう。

「え、えっと花畑さん……」

 私が言い淀んでいると、花畑さんは顔を真っ赤にしている。そして、小声で呟く。

「……もしかして、春木さん……?」

 この質問が、ラブレターのことを指しているのは、彼女の表情で分かる。私は勇気を振り絞り、頷いた。

「……うん……花畑さんへの想いは、手紙に書いた通り……その……気持ち悪かったよね。ごめんね」

 私は自虐した。想定していたことだから。だが、花畑さんは想定外のことを言い出した。

「……あたしも……初めて会った時から気になっていたの。同じクラスになったとき、もっと仲良くしたいって。でも、勇気が出せなくて」
「え?」

 そう言うと、花畑さんは再び私の机に突っ伏す。

「何度も言わせないでよ!」

 予想外の結果に、思考がついていかない。しばらくしてから、我に返る。

「え? じゃあ、付き合ってくれるってこと?」
「そうよ」

 お互いの顔が赤い。窓から差し込む夕陽の赤さなのか、両想いに頬が火照っているのか分からないほどに。

「い……一緒に帰ろう」
「……うん」

 彼女に手を差し出すと、彼女はその手を取った。
 そして、校舎を出ていく。千聖は気を利かせて、先に帰ったようだ。
 私と花畑さんは、セナ君のことで喧嘩をしながら帰って行く。
 手はお互いに握りしめたままに……。
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