22 / 73
第7章 対決! 3人の十二神!
2話 不慮の事故よ!
しおりを挟む
目を閉じて耳を澄ませていたシルバーが、ぱちりとまぶたを開いた。
「誰かひとり潰れたみたいです」
「不慮の事故よ」
「ええ、不慮の事故ですね」
私は地面にできた大きな穴を見下ろした。
「まさか、ここにゴーレムが埋まってるなんて思わなかったわ。羽根型の鍵を近づけたら、突然起動するし」
「ものすごい速さで飛んでいきましたね」
「ね~」
「アビー様、そのゴーレムという名前ですが」
シルバーは、ゴーレムが飛んでいった方向を見ながら言った。
「ゴーレムとは、魔物の名前では?」
「名前は魔物と同じゴーレムだけど、あれはキナラ王家が兵器として作った人形よ。戦争が終わって、廃棄する場所に困って埋めたのね」
「なるほど。急に動き出しましたが、暴走していたのでしょうか」
「暴走状態なら起動する前に気づけるわ。多分防衛装置が発動したのよ。この地域周辺を守護していたみたいだし、周辺の村が野盗にでも襲われて反応したんじゃない?」
私は思わずため息をついた。気が重いけど、ちゃんと見にいったほうがよさそう。
「面倒だけど村に行って証拠隠滅……じゃなくて、人命救助とゴーレムのコアを抜き出さないと」
「コアですか?」
「動力に使用されているコアは、魔道具の材料にもなるのよ。さて……」
私は足元に座っているフロストを見下ろした。身体中を土まみれにして、褒めてほしいと言わんばかりに尻尾を振っている。
「いい働きだったわ、フロスト! 特別に私だけの椅子兼ペットとして所有してあげる!」
「ご主人様! どうかこの俺を所有してください!」
「いい返事ね! 今度首輪を作ってあげるわ!」
「ワンワン!」
フロストは嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
私が右手の紋章を向けると、フロストの身体が紋章に吸いこまれるようにして消えた。
その様子を見ていたシルバーが眉をひそめる。
「里親に出しましょう」
「だめ。空気椅子で紅茶を飲むなんて御免よ。さ、早く回収に行くわよ」
「はい……」
むすっとしたシルバーを連れて、ゴーレムが薙ぎ倒していった木々をたどっていく。やがて、小さな村が見えてきた。
「あ、アビー様、ゴーレムを見つけましたよ」
シルバーが指差した方向を見ると、民家の前にゴーレムが転がっていて、それを取り囲むように人だかりができていた。
「よかった、停止してるわね。そこの村人A、ちょっと失礼するわよ」
「村人A!? いや、ちょっと待ちなさい!」
ゴーレムに近づこうとすると、村人たちに強く引き止められた。
「危ないよ、お嬢さんたち! こいつは突然森のほうから飛んできたんだ! いつ動き出すかわからないぞ!」
内心ドキッとしたけど、私がゴーレムを起動したなんて誰にもわかるはずがない。多分。
「大丈夫よ。防衛装置も停止しているし、勝手には動かないわ」
「そんなことがわかるのかい?」
「もちろん、私は魔術師だもの。それよりも……」
民家とゴーレムの間に、人ひとり分の隙間がある。そして大量の血痕。うん、これは間違いない。
「誰か死んだ?」
素知らぬ顏をして尋ねると、村人たちはなぜか顔を見合わせた。悲しんでいる、という雰囲気ではない。
「新しい領主様のひとりだよ。無駄に頑丈だったのか、なぜか死んでない」
「あら、言い方にトゲがあるじゃない。嫌われ者なの?」
「そりゃそうさ。突然やってきて、重税と無給労働を課せられたんだぞ! しかも奴隷にされかけた!」
「せっかく山賊から解放されたってのに、このままじゃ前より生活が厳しくなっちまう」
村人たちはその新しい領主様とやらに、強い不平不満を抱いているみたい。これは好都合。
「嫌われ者でよかったわ。焦って損したじゃない」
「うん? 何か言ったかい?」
「何も言ってないわよ~!」
その時、村人のひとりがおずおずと近づいてきた。
「もしかして、あなたはアビー様ではありませんか? 灰色の髪の従者を連れた、聡明な魔術師様の……」
「ええ! 聡明な魔術師アビーとは私のこと!」
「おお! 本物だ~!」
私がアビーだと知った村人たちは歓声を上げた。悪くない気分ね。
「救世主アビー様! お願いがございます!」
「へ?」
期待のまなざしを向けてくる村人たちに、私は間抜けな声を上げてしまった。あ、これ面倒なやつだわ。
「アビー様、このまま領主たちが居座れば、このシューラ村はいずれ崩壊します。ですが、魔法が使えない我々では、魔術師である彼らに太刀打ちできません」
「ふうん、ああ、そう」
「報酬は用意いたします! どうか、我らにお力をお貸しください!」
どうやって断ろうかと考えていた私は、ふとあることに気がついた。
「ちょっと待ちなさい。領主は魔術師なの?」
「あ、はい。新しい領主はパロット、ロック、ラヴァと名乗る三人の魔術師です。たしか、十二神がどうとか……」
「シャリスの言っていた三人じゃない」
まったく乗り気じゃなかったけど、気が変わった。
十二神が相手というなら、受けないわけにはいかない。
「シルバー!」
「はい、お受けするのですね」
シルバーの言葉に、村人たちは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます、アビー様!」
「礼はいいわ。そいつらは今どこにいるの?」
「彼らはあの集会所にいます」
村人が指差した先には大きな家が建っていた。なんて潰しがいのある家かしら。
「ただ、ラヴァという女はいないようです」
「ふたりだけか。ま、いいわ! ぶっ潰してあげる」
その時、ゴーレムを起動した例の鍵が反応を示した。どうやら、この村の中にもゴーレムが埋まっているらしい。
「ちょうどいいわ。ゴーレムコアを使って、とある魔道具を作りたいのよね」
私は村人たちの顔を見回して、にこっと微笑んだ。
「領主どもを徹底的にぶちのめすために必要なものがあるの。手伝ってくれるかしら?」
「はい、喜んで!!」
村人たちは声をそろえて言った。ノリが良くて助かるわ。
「待ってなさいよ、パロット、ロック。最高のおもてなしをしてさしあげるわ」
私は集会場を見つめて、不敵な薄笑いを浮かべた。
「誰かひとり潰れたみたいです」
「不慮の事故よ」
「ええ、不慮の事故ですね」
私は地面にできた大きな穴を見下ろした。
「まさか、ここにゴーレムが埋まってるなんて思わなかったわ。羽根型の鍵を近づけたら、突然起動するし」
「ものすごい速さで飛んでいきましたね」
「ね~」
「アビー様、そのゴーレムという名前ですが」
シルバーは、ゴーレムが飛んでいった方向を見ながら言った。
「ゴーレムとは、魔物の名前では?」
「名前は魔物と同じゴーレムだけど、あれはキナラ王家が兵器として作った人形よ。戦争が終わって、廃棄する場所に困って埋めたのね」
「なるほど。急に動き出しましたが、暴走していたのでしょうか」
「暴走状態なら起動する前に気づけるわ。多分防衛装置が発動したのよ。この地域周辺を守護していたみたいだし、周辺の村が野盗にでも襲われて反応したんじゃない?」
私は思わずため息をついた。気が重いけど、ちゃんと見にいったほうがよさそう。
「面倒だけど村に行って証拠隠滅……じゃなくて、人命救助とゴーレムのコアを抜き出さないと」
「コアですか?」
「動力に使用されているコアは、魔道具の材料にもなるのよ。さて……」
私は足元に座っているフロストを見下ろした。身体中を土まみれにして、褒めてほしいと言わんばかりに尻尾を振っている。
「いい働きだったわ、フロスト! 特別に私だけの椅子兼ペットとして所有してあげる!」
「ご主人様! どうかこの俺を所有してください!」
「いい返事ね! 今度首輪を作ってあげるわ!」
「ワンワン!」
フロストは嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
私が右手の紋章を向けると、フロストの身体が紋章に吸いこまれるようにして消えた。
その様子を見ていたシルバーが眉をひそめる。
「里親に出しましょう」
「だめ。空気椅子で紅茶を飲むなんて御免よ。さ、早く回収に行くわよ」
「はい……」
むすっとしたシルバーを連れて、ゴーレムが薙ぎ倒していった木々をたどっていく。やがて、小さな村が見えてきた。
「あ、アビー様、ゴーレムを見つけましたよ」
シルバーが指差した方向を見ると、民家の前にゴーレムが転がっていて、それを取り囲むように人だかりができていた。
「よかった、停止してるわね。そこの村人A、ちょっと失礼するわよ」
「村人A!? いや、ちょっと待ちなさい!」
ゴーレムに近づこうとすると、村人たちに強く引き止められた。
「危ないよ、お嬢さんたち! こいつは突然森のほうから飛んできたんだ! いつ動き出すかわからないぞ!」
内心ドキッとしたけど、私がゴーレムを起動したなんて誰にもわかるはずがない。多分。
「大丈夫よ。防衛装置も停止しているし、勝手には動かないわ」
「そんなことがわかるのかい?」
「もちろん、私は魔術師だもの。それよりも……」
民家とゴーレムの間に、人ひとり分の隙間がある。そして大量の血痕。うん、これは間違いない。
「誰か死んだ?」
素知らぬ顏をして尋ねると、村人たちはなぜか顔を見合わせた。悲しんでいる、という雰囲気ではない。
「新しい領主様のひとりだよ。無駄に頑丈だったのか、なぜか死んでない」
「あら、言い方にトゲがあるじゃない。嫌われ者なの?」
「そりゃそうさ。突然やってきて、重税と無給労働を課せられたんだぞ! しかも奴隷にされかけた!」
「せっかく山賊から解放されたってのに、このままじゃ前より生活が厳しくなっちまう」
村人たちはその新しい領主様とやらに、強い不平不満を抱いているみたい。これは好都合。
「嫌われ者でよかったわ。焦って損したじゃない」
「うん? 何か言ったかい?」
「何も言ってないわよ~!」
その時、村人のひとりがおずおずと近づいてきた。
「もしかして、あなたはアビー様ではありませんか? 灰色の髪の従者を連れた、聡明な魔術師様の……」
「ええ! 聡明な魔術師アビーとは私のこと!」
「おお! 本物だ~!」
私がアビーだと知った村人たちは歓声を上げた。悪くない気分ね。
「救世主アビー様! お願いがございます!」
「へ?」
期待のまなざしを向けてくる村人たちに、私は間抜けな声を上げてしまった。あ、これ面倒なやつだわ。
「アビー様、このまま領主たちが居座れば、このシューラ村はいずれ崩壊します。ですが、魔法が使えない我々では、魔術師である彼らに太刀打ちできません」
「ふうん、ああ、そう」
「報酬は用意いたします! どうか、我らにお力をお貸しください!」
どうやって断ろうかと考えていた私は、ふとあることに気がついた。
「ちょっと待ちなさい。領主は魔術師なの?」
「あ、はい。新しい領主はパロット、ロック、ラヴァと名乗る三人の魔術師です。たしか、十二神がどうとか……」
「シャリスの言っていた三人じゃない」
まったく乗り気じゃなかったけど、気が変わった。
十二神が相手というなら、受けないわけにはいかない。
「シルバー!」
「はい、お受けするのですね」
シルバーの言葉に、村人たちは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます、アビー様!」
「礼はいいわ。そいつらは今どこにいるの?」
「彼らはあの集会所にいます」
村人が指差した先には大きな家が建っていた。なんて潰しがいのある家かしら。
「ただ、ラヴァという女はいないようです」
「ふたりだけか。ま、いいわ! ぶっ潰してあげる」
その時、ゴーレムを起動した例の鍵が反応を示した。どうやら、この村の中にもゴーレムが埋まっているらしい。
「ちょうどいいわ。ゴーレムコアを使って、とある魔道具を作りたいのよね」
私は村人たちの顔を見回して、にこっと微笑んだ。
「領主どもを徹底的にぶちのめすために必要なものがあるの。手伝ってくれるかしら?」
「はい、喜んで!!」
村人たちは声をそろえて言った。ノリが良くて助かるわ。
「待ってなさいよ、パロット、ロック。最高のおもてなしをしてさしあげるわ」
私は集会場を見つめて、不敵な薄笑いを浮かべた。
62
あなたにおすすめの小説
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした
タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。
身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。
だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり――
それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「反省の色が全く無いどころか睨みつけてくるなどと……。そういう態度ならば仕方がありません、それなりの対処をしましょう」
やっと持たれた和解の場で、セシリアはそう独り言ちた。
***
社交界デビューの当日、伯爵令嬢・セシリアは立て続けのトラブルに遭遇した。
その内の一つである、とある侯爵家子息からのちょっかい。
それを引き金にして、噂が噂を呼び社交界には今一つの嵐が吹き荒れようとしている。
王族から今にも処分対象にされかねない侯爵家。
悪評が立った侯爵子息。
そしてそれらを全て裏で動かしていたのは――今年10歳になったばかりの伯爵令嬢・セシリアだった。
これはそんな令嬢の、面倒を嫌うが故に巡らせた策謀の数々と、それにまんまと踊らされる周囲の貴族たちの物語。
◇ ◆ ◇
最低限の『貴族の義務』は果たしたい。
でもそれ以外は「自分がやりたい事をする」生活を送りたい。
これはそんな願望を抱く令嬢が、何故か自分の周りで次々に巻き起こる『面倒』を次々へと蹴散らせていく物語・『効率主義な令嬢』シリーズの第3部作品です。
※本作からお読みの方は、先に第2部からお読みください。
(第1部は主人公の過去話のため、必読ではありません)
第1部・第2部へのリンクは画面下部に貼ってあります。
悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~
オレンジ方解石
ファンタジー
恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。
世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。
アウラは二年後に処刑されるキャラ。
桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる