ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太

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雷鳴は思わぬ方角へ

第三章 50話『視覚』

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 日が一気に明るくなったように思えた。
 裏路地から歩いて出たカイドウとガヴェルド。2人は会話を交わしながら、王立図書館までの道を歩んでいた。

「えっ!本当に魔導騎士団の人だったの!?」

 想像より声が大きくなってしまった。
 そんな反応を示したカイドウに向かって、ガヴェルドは「なんだよ、疑ってたのか?」と呟いた。

「……うん。最初は嘘か何かだと思ってたんだ。……だって、この国に住んでて魔導騎士団の事を知らない人はいないよ。精鋭揃いで、国を守る役目にも関わらず、敵国を滅ぼせる力を持った驚異的な戦力を持つ騎士団だ」

「強いっつー噂のせいで、カイドウにそう判断させちまったんだな。いいような悪いような、複雑だぜ」

 ガヴェルドは苦笑いしながら空を見上げた。雲ひとつない快晴で、路地から抜けた時にパッと明るくなったと感じられたのも納得だ。

「じゃあ遠征帰りってのも……」

「勿論本当だ。ついさっき詰所に行って水晶で報告をしてきた。上の連中は直接出向いてこいって言ってたが、王城に入るなんて堅苦しくてごめんだね」

 ガヴェルドの言い草から、本当に嫌そうなのをカイドウは感じ取った。やはりこのガヴェルドという騎士は、騎士らしくて騎士らしくない。だがそこが魅力的なのだと、カイドウは感じ取る。

「そういや、図書館には何を調べに行くんだ?あそこにはすげぇ種類の資料があるから、探すのでも一苦労だ。よけりゃ、どんな資料がどこにあるか、大まかな位置くらいは教えてやれるぜ」

「え、それはありがたいけど……なんでそんな事知ってるの?」

 カイドウは疑問に思って訊く。
 いくら魔導騎士団員とはいえ、そんなものの位置まで覚えさせられる訳がない。
 第一、あの図書館の資料を管理しているのは国から選ばれた司書だけだ。その人物ならば資料の大まかな位置を把握していてもおかしくないが、司書でもないガヴェルドがそれを口にしたのが、とても不思議に感じられた。

「1億6832万8197」

 と急にガヴェルドが謎の数字を発した。その数字はとても大きく、一体何を表しているのさ分からなかった。

「これはあの図書館に所蔵されてる資料の数だ。俺はガキの頃、その冊数全てを読み漁った」

「……!?」

 その言葉にカイドウは目を大きくした。
 全ての資料……それ即ち、このレリックという国の歴史や文化、それ等全てを網羅したという事になる。しかもそれが子供の頃というのが驚きだ。

「……まぁ言っても、ほとんど覚えちゃいねぇんだけどな。それでも、大まかな位置位は覚えてるぜ」

 忘れてしまっているというのも無理は無いだろう。何せ1億を超える資料の数々を全て読んでいるのだから。それが事実というのならば、ガヴェルドはとてつもない人物だ。

「えっと……僕は魔道具について調べようと思ってるんだ」

「ほぅ、魔道具か。魔道具の資料だけでも数千万くらいあるから大変そうだな……。棚の位置は入口入ってすぐ左側にあるぜ」

 思ったよりも単純で分かりやすい位置にあった事に、カイドウは胸を撫で下ろした。
 しかし、そんなカイドウよりも、ガヴェルドの方が安心しているように思えた。

「いや助かったぜ。正直、教えてやるなんて言ったけどよ、複雑で俺も覚えてねぇような本だったらどうしようかと思ったぜ」

「はは、流石にそんな誰も知らない資料なんて読もうと思わないよ」

 そんな会話を交わしていると、次第に目指していた建物が大きくなっていく。
 王立図書館の前の階段もこれまた大きく、何十段あるか分からない白い石の階段が並んでいた。

「何事もなく着いて良かったな」

「うん。ここまでありがとう、ガヴェルド」

「いいって事よ。……魔道具ってジャンルは広く深ぇ。大変だとは思うが、調べもん、頑張れよ」

 片手をズボンのポケットに仕舞い、振り返る事なく手を振ってカイドウを送った。
 その大きく勇ましく感じられる背中を見て、カイドウは改めて、謎のカチューシャの正体を探る決意を固めた。


―――


 一方その頃、カイドウと別れた一同は、アミナの言った通り、露店の食べ物を食べ歩きながら、王都の光景を大いに楽しんでいた。

「ん~~!やっぱりこの串焼きが美味しいです!」

 アミナは手に持った肉の串を食べながら言った。
 先日食べたガルフィンのハンバーグも我ながら美味かったと思ってはいたが、やはり料理のプロには勝てず、何の肉かも分からない串焼きが1番美味しく感じられた。

「私は圧倒的にこいつだな。こういうもん久々に食ったぜ」

 メイが差したのは、木の皿に盛られた茶色い麺で、香ばしい匂いが食欲をそそられる。
 彼女の頭の上に乗っている小さな魔獣でさえ、その香気には勝てないらしい。ちょくちょくつまみ食いをしていた。

「カルムさんはどうでした?」

 アミナはカルムにも何が1番美味しかったか聞こうとして問いかけた。
 するとカルムは未だに買った食べ物と睨めっこしていた。

「……驚きました。魚とは生で食べられるのですね。干物にするか焼くしか出来ないと思っていました……」

 そう、彼女が買ったのは生魚の切り身。言うなれば刺身だ。
 露天で売っているのが珍しく感じられたのと、見た事の無い食べ物であった為、アミナに聞いてから購入をした。

「とろける食感、程よい脂。そしてこの何とも形容しがたい塩味を持った調味料……。凄いです……」

「カルムさんはお刺身が美味しかったんですね。確かに生魚って、漁港や港町でしか食べられませんからね。鮮度を保つのが難しいので、王都には下ろせても、他に行く前に保存の利く干物なのどにしてしまうんです」

 感動しているカルムの横でアミナは言う。

「やけに詳しいなお前。なんでだ?」

「ふっふっふ……お忘れですかメイさん。私の出身は第四大陸の港町バンカー。生のお魚など、沢山見てきたのですよ!」

 何故か自信満々にアミナは言う。
 それに対してメイは「あーそういやそうだったな」と呟いて食べ終わった皿を、食器回収箱と書いてある木箱に投げ入れた。

「こんなお魚が毎日食べられるなんて……アミナ様、ズルいです」

「なっ……こんな所で変に嫉妬されるとは思いませんでしたよ」

 真面目な表情でそう言うカルムに対して苦笑いをうかべるアミナ。その隣を歩くメイの頭に乗るフィー。
 カイドウの願い通り、全員観光を楽しんでいる様子だった。

 そんな中、アミナ達の斜め前で、杖を持った少年と女性がぶつかった。

「うわっ」

 少年は尻もちをついて倒れてしまった。その光景を目にしたアミナは思わず「あっ」と声が漏れてしまった。

「す、すみません!僕目が見えなくて……」

 少年が杖をついている理由はそれだった。
 するとぶつかられた女性は怒る素振りも無く、ただ笑顔を浮かべて膝を地面についた。

「いいえ、私も不注意でした。……貴方目が見えないのですね、可哀想に。……ちょっと失礼」

 女性がそう言って少年の顔の前に手を伸ばした。何をしているのか、傍から見た場合何も分からないが、少年とその女性にだけ、何が起きているのか分かった。

 しばらくして女性が少年の顔から手を離すと、少年はゆっくりと閉じられた瞼を開けた。すると、少年の顔は一気に驚きに染まり、杖を落とした。

「見える……見える!目が見える!!」

 少年の心からの言葉にアミナは目を見開いた。
 あの女性は何をした。何故か少年の見えない目を見えるように出来たのか。瞬時にそんな疑問が浮かび上がる。

「良かったですね。貴方に祝福があらんことを」

 そう言って女性は少年から離れた。
 アミナはどうしても女性のやった事が気になり、その女性へと話しかけた。

「凄いですね。一体どうやったんですか?」

 アミナはせを向ける女性へと声をかけた。
 振り返った女性の頬には大きな傷があり、女性にしては背が高く、アミナよりも10cm近く大きいように思えた。

「いえいえ、大した事ではありませんよ。あの男の子に祝福が与えられただけです。……失礼ですがお名前を伺っても?」

「あぁ、急に話しかけた上に自己紹介もせずすみません。アミナと申します。貴女は?」

 アミナが問いかけると、女性は笑顔のまま答えた。

「私は『フォルネウス・べルーラ』と申します。以後お見知り置きを、アミナさん」

 2人が挨拶を交わした所に「おーい何してんだアミナ」と声をかけられた。メイがアミナを呼んでいるようだ。

「すみませんフォルネウスさん。こちらが話しかけたのに……」

「大丈夫ですよ。それより早く行ってあげてください」

「はい、それでは失礼します。……あっ!」

 何か思い出したかのように立ち止まり、アミナは振り返って手を振った。

「私達しばらく王都にいるので、また出会ったらよろしくお願いします!」

 そう言い残してアミナは走り去った。
 フォルネウスはアミナの背中を笑顔で見送り、彼女もまたアミナに背を向けて反対の方向へと歩き去っていった。

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