彼女と彼女の想いとぶれない僕の想い

金子真子

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夢で見た男

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 佳華真音。聞き覚えのある名前だと思ったがどこで聞いたか分からない。もしかすると聞き覚えがあるというのは気のせいなのかもしれない。だがまあその人物のことが気にならなかったわけではないので雨嶋と別れた後調べてみた。確かにこの人物は僕がいた高校に在籍していた。引っ越したのも事実だ。だがその後のことを何一つつかむことができなかった。ん?友人のいない僕がなぜそこまで同級生のことを調べられたのかって?僕は仮にも探偵だ。それなりの情報網的がある。だが彼女が引っ越してからの情報はそれを張り巡らしても分からなかった。まるで誰かが意図的に隠しているかのように。そして友人に近しいはずの佳華真音のことを僕は知らない。おかしな話だ。もしかしたらこれは雨嶋の嘘なのかもしれない。普段のお返しの虚言だったのかもしれない。

「まだ思い出せないのか?」

 突然頭の中で低い男の声が響いた。何だ?考えすぎて頭がおかしくなったのか?そう思ったがその声は「やれやれ。少し協力してやろう」と続いた。

 すると次の瞬間どこからか中年の男が事務所に現れた。

 夢で見たあいつだ。

 今起こった状況に頭が追いつかない。

「よう。鳴宮悠斗」

 男は僕をフルネームで呼んできた。

「何だ?その顔は?俺を見てもまだ思い出せないのか?失礼な奴だ。仕方ない、ほれ」

 男が僕に何かを投げる動作をすると頭の中で知らない記憶が流れ込んできた。

「さてそろそろ把握できたか?鳴宮悠斗」

「ああ。思い出したよ。神ノ原神(かみのはらじん)」

 すべて思い出した。目の前にいるこいつのことも。雨嶋のことも。佳華のことも。夢のことも。全部。

一章完
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