彼女と彼女の想いとぶれない僕の想い

金子真子

文字の大きさ
15 / 29

守りたいと思ったかもしれない笑顔

しおりを挟む
 放課後、佳華と一緒に帰ることにはなったがなぜだか校門の前で待ち合わせとなった。今日は部活がないはずだ。だとすると僕と一緒に帰るところをクラスメイトに見られたくなかっただろうか。まあ僕には関係のないことだが。

 校門に着くと彼女はすでにそこで僕を待っていた。

「遅い。叩き潰すわよ」

 殺すよりかはましになったのだろうか。

「まあいいわ。はい。お疲れ様」

 と、ジュースを渡してきた。何に対してのお疲れだ?

「永遠に」

「毒でも入れたか?」

 とんでもない言葉を付け足しやがった。

「それは昨日のお礼というつもりではないけれど。それ類のものだと考えてくれていいわ」

「そうか。ならありがたく受け取っておこう」

 今日は空を飛ぶことはなく平和的に帰っていた。いや平和ではなかった。それは

「でね。あの女がね」

佳華が愚痴っていたからだ。平和とはいえない殺伐とした愚痴だった。溜まっていたものが一気に噴き出したのかもしれない。

「だからね。思うのよ。女に生まれて良かったって」

「何でだ?」

「女と結婚しなくていいから」

「皮肉だな」

「あとあなたに会えたから」

 一瞬、こいつ遂にデレたな、と思ったがよく考えたら全然デレてないことに気がついた。随分と紛らわしいことを言う女だ。

「悠斗君に会えたことは本当に感謝しているわ。この能力のことを知っているのはあなただけではないの。何人かに相談したわ。でも全員私のことを利用しようとしている人たちを知って逃げ出したわ。まあ仕方ないわ。怖いもの」

 確かにあいつら得体が知れないし中には空を飛べる人物までいるのだ。怖がって当たり前だ。

「でもあなたは逃げ出さなかった。私の手を握ってくれた。死ぬ気で守ってくれた。それがとても嬉しかった」

「何を言っている?僕はただ逃げるタイミングを失っただけだ」

 身を挺して彼女を守ったと解釈されているようだがそれは心外だ。僕はいい人ではない。悪い人だ。だからそれを訂正した。

「はいはい。あなたがそう言うならそれでいいわ。でもお礼だけは言っておくはありがとう」

 綺麗でおしとやかな笑顔で言った。僕はこの笑顔を守りたいと思ったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...