彼女と彼女の想いとぶれない僕の想い

面倒くさい男

「よう。雨嶋」

「こんにちは。先輩」

　昨日、佳華との関係が終わったがそんなことはどうでもいいことだ。だから何も気にすることなくいつも通り学校に行きいつも通り昼休みを迎え後輩に会いに来た。いつも通り、いつも通りだ。

「先輩どうしたんですか？元気ないですよ」

「僕には最初から元気なんてものはないさ」

「じゃあそのくまは？」

「これは痣だ。同じクラスの佐藤くんに殴られた」

　嘘だ。

「嘘ですよね。先輩のクラスに佐藤なんて人いませんよ」

「……」

　そういえば言ってたな。全生徒の名前を憶えていると。

「どうしたんですか？昨日はあんなにデートに行くってはしゃいでたのに。確か明日でしたっけ。あっ、なるほど。佳華先輩と何かありました？」

　……。これ以上黙っていても隠せなさそうだ。

「実はな。雨嶋」

　僕は雨嶋に昨日起こったことを全て話した。これ以上詮索されても厄介だから話した。理由はそれだけだ。

「はー。先輩って面倒くさいですね」

　雨嶋はため息の後、不愉快な言葉を口にした。

「先輩は佳華先輩が好きなんですか？」

「どうだろうな」

　今思った。僕って面倒くさい。

「では佳華先輩が困っていたら先輩はどうします？」

「助ける」

「そうです。それでいいんです」

　そうか。それでいいのか。

「分かったよ。雨嶋。僕が佳華のことをどう想っているかは別にしてやるだけやってやる」

「先輩って本当面倒くさいですね」

　そう。僕は本当に面倒くさい男、鳴宮悠斗だ。