108界目の正直:異世界召喚はもうイヤだ!

阿都

文字の大きさ
19 / 57
第2章「ほのぼの冒険者ライフ」

05,討伐の終わり

しおりを挟む
 奇襲してきたザルバ種は返り討ちにしたけれど、これで全てが終わったとは限らない。

 事前の情報では、確認できたのは10体程度だったそうだ。
 先ほど討ち取った数は11体。
 ザルバ種は戦う際に必ず1グループ5、6体で行動するから、数としてはとりあえず一致している。

 でも、油断はできない。そもそも全体数をごまかしていた可能性だってある。
 楽勝気分でラトール村まで行った途端に、奇襲をやり返されて最終的にこっちが壊滅しました、では目も当てられない。

「皆、まだ気を抜かないで! 村の無事と残党がいないことを確認するまでは、戦闘続行よ!」

 トリーシャの言葉に、その場の全員が頷く。

 ここに集っているのは階梯1級パーティーのみ。個人でも最低2級もちの冒険者だ。さすがに心得たもので、みんな抜かりなく次の戦闘の準備に取り掛かっている。

 ……って、最低ランクは3級の俺でした。
 もっとも油断しちゃいけないのは俺じゃないか。

 たとえ107回も召喚転生して経験を積んだとしても、前世界で魔王を倒したのだとしても、この世界においては俺はまだまだ新米だ。
 今までだってスキルと経験にあぐらをかいて、死に戻ったことが何度かあった。
 107回目の世界とこの世界は双界の関係にあってあまりずれはないし、今回はスペックを完璧に持ち越しているから、今までよりはマシかもしれない。
 でも、本番のこの世界では死に戻りは許されないんだ。
 油断してはいけない。さらに慎重に動かないと。

 各パーティーから何名か選出して先行部隊をつくり、その後に本隊が続くことになった。
 俺達からはブラムとイネスが先に行く。
 二人とも隠密行動が得意だし、タイプは違うけれど冷静沈着だ。前衛と後衛に分かれての連携も息がぴったりだから、滅多なことでは不覚を取らないだろう。

「イネス、大丈夫かなぁ……」
「ハリエットも心配性ねぇ。あのイネスよ? 殺しても死なないわよ」
「……シアさんのなかでイネスってどんな存在になってるんですか?」

 不安そうなハリエットを慰める(で、合ってるよな?)シア。
 それを見て苦笑するトリーシャとチャド。

 イネスとハリエットは幼馴染らしい。
 傍から見ていると、自由気ままなイネスと、それをハラハラ見守っているハリエットは、まぁ、なんというか。
 うん、リア充だね。爆発してしまえって感じだ。

「そして、それを見守るチャドお父さんとトリーシャお母さん……」
「……カズマ、討伐が終わったらちょっと訓練につき合ってね」
「あ、いや。シアと約束があるから遠慮します」
「あら、私の誘いよりシアとの約束が大切なんだ。ふーん、いつの間にか仲良くなったみたいねぇ」
「……えっと、トリーシャお嬢様。その不穏な手甲の輝きは何でしょうか」
「おいおい、いい加減にしろ二人とも。じゃれあっている場合か」

 チャドが苦笑しながら間に入るけれど、それも分かってやっていることだ。
 どんなにバカ話をしているように見えても、俺もトリーシャも、目はぜんぜん遊んでいない。
 シアとハリエットは霊力探査を常に発動させている。
 チャドはもちろん、俺もトリーシャも、気配を探るために霊力で身体能力を上げて、神経を研ぎすませていた。

 村が無事で、魔族も残っていないことを心の底から望んでいる。
 でも、そうじゃないなら、すぐにでも全力を出せるように準備は怠らない。


 先行部隊から、連絡係がきた。

「村は無事です。情報にあった1級パーティーと接触しました。教会に立てこもって徹底的に籠城することで、なんとか防衛していたそうです。数は11体で間違いなしと確認しました」

 その瞬間、確かに皆、肩の荷が下りたのだろう。
 誰ともなく大きく息をついて、やっと笑顔がうかび、伝染し始めた。

「よし。でも村に着くまではまだ油断するなよ!」

 他のパーティーのリーダーが、念には念を入れて皆に呼びかける。
 俺たちも頷いたけれど、笑みが溢れるのは止められなかった。

 これで一件落着! のはずだったのだけれど……。

「……カズマ。あとで訓練につき合ってもらうからね。忘れないように」
「あ、本気だったのか……。リョーカイです」

 伏兵はどんなところに潜んでいるか、分からない。
 予想外の奇襲を受けて、俺は背筋が凍りつく羽目になるのだった……。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...