108界目の正直:異世界召喚はもうイヤだ!

阿都

文字の大きさ
22 / 57
第2章「ほのぼの冒険者ライフ」

08,飲み会と決心

しおりを挟む
 図書館で調べた結果。
 ラドル・エル・クレーフェは確かにこの世界にいる。

 貴族年鑑にしっかり名が記されていて、その経歴も俺が知っている通りだった。
 魔族戦争の資料にも、引退の身ながら戦術顧問として参加していたことが記されている。戦後は息子である現クレーフェ伯を手伝いつつも、領地で隠遁生活に入っているらしい。

 これで、とりあえずの目的はできた。

 彼らに会うことが、フラグになるのかは分からない。
 しかし、現在のところなんの手がかりもなく、ヴァクーナからのお告げもない以上、できることをやるしかないんだ。

 ヴァクーナは、俺の召喚転生が第一のフラグだと言った。
 『*****』に対応できる最低限の資格を持っている証だ、と。

 俺の存在が何かの鍵になるというなら、俺と関連性が深いものに当たってみるのも1つの手だと思う。

 この世界で俺と関係する何かがあるとしたら、それは前世界で俺と関わった人たちと異界同体である存在。
 107回目の世界と双界の関係にあるこの世界で、同じ運命を背負っているだろう人たちだ。

 共に魔王を倒したコリーヌ、ラドル、マーニャ。
 俺の剣を鍛えてくれた剣匠アダマス。
 そして、秘法術を指導してくれた大法術師デズモンド。
 とりあえず、この5人が挙がってくる。

 とは言っても、アダマスは少し存在が変わっているみたいだから、手がかりがない。

 デズモンドも探すのが難しい。
 というのも、前世界のデズモンドはもともと有名ではなかった。この世界でもまったく名前を聞かない。
 実力はそれこそシアやコリーヌすら手玉にとれるほどの法術使いだけれど、名が広がるのを極端に嫌っていたんだ。
 いくつもの偽名を持っていて、世界中を旅していた。俺が出会えたのはただの偶然。
 もし同じ性格だとすると、はっきり言ってどこにいるのか見当がつかない。

 結局、ラドルやコリーヌを探すほうが確実だ。


「ラドル殿について、か」

 チャドの家にブラムを招いて、酒でも酌み交わしながら話を聞いてみることにした。
 チャドはもちろん、イネスもいる。どうせなら皆で話したほうがいろいろ情報が集まりそうだし、たまには男同士で酒盛りもいいだろう。

「ふーん。カズマは貴族に興味があるんだ」

 ……なのに、なぜトリーシャがいるんだろうか。
 っていうか、女性陣も全員いる。完全にトリーシャパーティーの飲み会になっていた。

「いいじゃない。ザルバ種討伐の打ち上げもしていなかったし」

 ダメなの? と首を傾げつつ、鳥肉のフライを手に取るトリーシャ。

 まぁ、確かに問題があるわけじゃないんだけどさ。
 チャド宅の居間は広くて、7、8人ぐらいなら余裕でくつろげるし、ハリエットの料理はとてもうまいから、歓迎といえば大歓迎なんだけれど。
 男同士で気楽に飲むのもいいと思っただけだよ、うん。

 ちなみに、シアも料理が上手だ。
 意外だと言ったら、即座に法術ワイヤーでぐるぐる巻きにされました。ごめんなさい。

「貴族というより、知将っていわれたクレーフェ伯に興味があるんだよ」
「確かにあの方は素晴らしい知略の持ち主だが、知将という感じではなかったな」

 ブラムはいつものように、ジョッキを傾けつつ静かに話す。

「直接会ったことがあるのか?」
「ああ。一度だけ傭兵として、彼のもとで戦ったことがある」

 気さくな方だ。
 私たちが『クレーフェ様』などと呼ぼうものなら、豪快に笑って「戦場を離れたらラドルと呼べ。お主らは戦友じゃ」とおっしゃってくださった。
 戦場や訓練では鬼のように厳しかったが、一度その場を離れると、まるでただの先輩冒険者のようだったよ。貴族とはとても思えなかった。

 ブラムの思い出話に、トリーシャが感心したように頷く。

「へぇ。貴族にもそんな人がいるんだね」
「チャドさんみたいな方ですね」
「おいおい、ハリエット。男爵家から放り出された俺と、もとクレーフェ伯を比べるというのは、流石に無理があるぞ」

 チャドが苦笑いしている。
 でもなぁ。前世界のことではあるけれど、実際に一緒にいた俺から見ても、結構チャドはラドルに似てると思う。
 もちろん能力的にはタイプが違う戦士だけれど、豪快な割に気配り上手だったり、貴族出身なのに庶民的だったり。

「戦争途中で戦線から姿を消されたと聞いた。重傷を負われて後方に下がっただとか、戦死されたとか、密命を帯びて独自に動かれているのだ、とか。いろいろと噂話が広がったものだ」
「結局生きていて、今度こそ引退されたんだろ?」
「ああ。ラドル殿の領地は一時魔族に蹂躙されて、ひどい有様だったようだ。あの方のことだ。おそらく今も、朝から晩まで働かれているだろうな」

 ブラムの話からすると、この世界のラドルも、俺が知っている性格そのままに思える。
 しかも、戦争中にいなくなった、というのも気になるな。
 やはり魔王討伐に参加したのだろうか。

「……それでも貴族は貴族だろうが。オレは気に食わねぇな」
「イネスの貴族嫌いも半端ないわね」
「シアさんの法術好きとどっちが上だろう、って感じですもんね」
「ちょっと、ハリエット! そこ比べるとこじゃないから!」

 イネスを酒の肴にして、女性陣が盛り上がってるな。
 でも、そうか。なんとなく感じていたが、イネスは貴族が嫌いなのか。
 チャドのことは認めているようだけれど、他の人に比べるとちょっと距離を取っているイメージがあったもんな。

「……で、カズマ。お前はどうしたいんだ?」
「ん? いや、特になにもないよ。興味があっただけ」
「ふむ。そうか」

 ブラムは、ほんの少しだけ探るように俺を見た後、黙って酒を飲み続けた。
 本当に察しが良すぎて、恐ろしいよ。

「カズったらー。ちゃんと飲んでるー?」
「飲んでるよ。っていうか、シアは飲み過ぎじゃないか?」
「いーじゃない。ザルバ種討伐の打ち上げだしー。今度、カズと法術談義する前祝いだしー。ティーチが美味しいしー」
「なんだよ、その微妙な前祝いは! それより酒に弱いくせに飲み過ぎだって。帰れなくなるぞ!」
「ふふふー。カズとほうじゅつについてかたりあうの、すっごくたのしみー」
「ダメだ。これは完全に潰れる……」
「カズマ、もう諦めろ。トリーシャ、悪いが後で送ってやってくれ」
「はいはい。いつものことだから大丈夫よ」
「なんだよ、カズマ。泊めてヤればいいじゃねぇか」
「家主を前に変なこと言うな、イネス! しかもなんか妙な発音だったぞ!」
「か、かかカズマさん! まさかシアさんにそんなこと!」
「ん? なんなら一晩、家を空けようか?」
「あら。なに、カズマ。結局シアに捕まっちゃったの?」
「ハリエットも、チャドも、トリーシャも! 変なところでノリが良すぎる!」

 無茶苦茶を言いつつ、笑うトリーシャたち。
 俺は、飲み食いする皆と話を楽しみつつ、クレーフェ伯領へ行くことを決めていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...