身代わり悪役令嬢は目立ちたくない 乙女ゲー世界で王立学院に入った庶民メイドですが、平穏に暮らしたいのになぜか周りが放っておいてくれません

草部昴流

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第一章

第七話

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「そこで、ライナ、きみにお願いしたいのだ。リラマリアの名前で彼女に代わって学院に入学してはくれないだろうか」

「え?」

「つまり、リラマリアの身代わりになってほしいのだ。そうすれば、わが家の名誉は守られるし、きみも学院で学ぶことができる。きみに十分な学力があることは知っている。どうかお願いできないだろうか」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 わたしは思わずその場に立ち上がっていました。

「たしかに何でも云ってくださいと申し上げましたが、それは無理です。わたしにリラマリアさまの代理が務まるはずがありません。わたしはお嬢さまとは似ても似つかない顔立ちですし」

「学院にリラマリアの顔を知っている人間はいないだろう。もちろん、性格も。また、きみの学力が学院に通うために十分であることはわかっている。我々としても、他に選択の余地がないのだよ、ライナ。どうか頼む。この通りだ」

「しかし」

「しかし?」

 わたしは大きくため息を吐きだしました。

 いくらお嬢さまの不在を隠さなければならないからと云って、「身代わり」を用意するなんて、しかもそれがわたしだなんて、あまりにもめちゃくちゃです。まるで理屈が通っていません。

 ですが、大恩ある伯爵さまに頭を下げられると、それ以上拒絶できないこともたしかでした。

 ぐぬぬ。

「わかりました」

 しばらく逡巡してから、しかたなくうなずきます。

 まったく気は進まなかったけれど、伯爵さまがそう望まれるのならしかたありません。

「ご意向の通りにさせていただきます。もちろん、リラマリアさまとして入学する以上、伯爵家の名誉を傷つけないことをお約束します。でも、ほんとうに良いのでしょうか」

「もちろんだよ。いや、良かった」

 伯爵はニッコリとほほ笑みました。

 リラマリアさまはいまだ行方不明ですし、何も良くないと思うのですが。

 しかし、こうなったらやってみるよりしかたないです。

 こう見えて、わたしはやるときはやる女。リラマリアさまになりきってみせましょう。

 それに、正直を云えば、あこがれの学院に行けることは楽しみでないこともなかったのです。できれば、自分自身として行きたかったところですが。

 学院生活における第一目標は、目立たないこと。

 これに尽きます。

 まあ、大丈夫でしょう。

 わたしはとくべつ目立つことのない地味な人間ですから、きっと学生たちの集団に埋没してしまうに違いありません。

 せいぜい平凡で平穏な学生生活を楽しみましょう。

 そう、このときは、そのように思っていたのです。
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