身代わり悪役令嬢は目立ちたくない 乙女ゲー世界で王立学院に入った庶民メイドですが、平穏に暮らしたいのになぜか周りが放っておいてくれません

草部昴流

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第一章

第十一話

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「どうかひらにご容赦を」

 しばらく経ってから、わたしはアストリカさんのまえで深々と頭を下げていました。

 彼女は本人が云った通り、さる高位貴族の令嬢で、リラマリアさまの幼なじみでした。当然、わたしがリラマリアさまではありえないことを知っています。

 そのアストリカさんに、わたしはひと通りの事情を話し、どうかこのことは黙っていてくださいとお願いしたのです。

 彼女は女の子らしくないことに、寝台のうえにあぐらを掻いてわたしの話を聞いていました。

「ふーむ」

 アストリカさんはちょっと考え込むふぜいで頬を掻きました。

 何と云うか、ひとつひとつの仕草がそれぞれ貴族の令嬢らしくない人です。

 もっとも、リラマリアお嬢さまもそうでしたから、ひょっとしたらわたしの貴族女子に対するイメージは幻想に過ぎないのかもしれません。

「まあ、とりあえず、頭を上げてよ」

「はい」

 わたしはとても情けない気分で頭を上げます。

 アストリカさんは特に怒っているようには見えませんでした。

 しかし、油断はできません。庶民の娘が貴族のふりをして学院に入り込んでいるのです。ほんものの貴族としては、激怒してもおかしくないところであるかもしれないのです。

 わたしは可能なかぎり真摯な想いを込めて彼女の目を見つめました。

「うーん、そうやって正面から見つめられると照れるなあ。ライナさんって云ったっけ。あなた、可愛いね」

「はあ」

 わたしはべつに可愛くはないと思いますが。

 まあ、容姿を褒めてもらえることは嬉しいのですが、わたしはいたって平凡な人間です。

 少なくとも、この学院ではそうでなければならないのです。わたしはここで群衆に埋没して生活していくのですから。

「わたしはね、ライナさん。可愛い女の子が大好きなのさ。この学院には、貴族から平民から可愛い子がたくさんいるからしあわせだよ。その上、子供の頃いっしょに遊んでいたリラマリアがわたしのルームメイトになるって聞いたからそれは楽しみにしていたんだよ。それが、まさか、わけのわからない書き置きを残して逃げ出しちゃったなんてね」

「申し訳ありません」

 わたしはぎゅっと拳を握り締めました。

 お嬢さまが失踪してしまったのはわたしの責任ではないはずですが、どうしても謝らずにはいられませんでした。

 アストリカさんはそんなわたしを興味深そうに見つめながら、ちょっと吐息します。

「でも、まあ、いなくなってしまったものはしかたないか。昔からそういう意味のわからない行動を取る子だったよ。ライナさん、あなたも大変だね」

「いえ、そんな」
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