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第5章 展開する物語の章
第62話 ロングウッドの森でア・レウラ・ムーロに到った
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それから何やら準備し始めたサーリールだった。ア・レウラ・ムーロの場所を探してくれるのだ。
「時間が掛かるかい?」
「せっかちな奴だな、ちょっとくらい待て無いのか。直ぐに済むからそこに座って待っておれ」
俺は仕方なしに切り株が有ったのでそこに座って待つことにした。
「えっ」
周りの景色が一瞬で変わる。目の前に見覚えのある巨木があった。ア・レウラ・ムーロだ。但し、クマさんの姿は無かった。
「ア・レウラ・ムーロじゃないか。瞬間移動でもできるのか?」
「瞬間、なんだ?」
「いや、いい。ア・レウラ・ムーロまで連れて来てくれたんだな、ありがとう、本当に助かった」
「約束しただろう。私は約束を守る男だ」
サーリールは見た目はちいさなただのおっさんだが義理堅い魔法使いだ。瞬間移動もできるところを見ると相当上位の魔法使いだろう。特級や師匠と同じ伝説級かも知れない。
「サーリール、あんたのような魔法使いはロングウッドの森に沢山いるのか?」
「私のような魔法使いとな」
「そうだ。あんたは伝説級魔法使いとか?」
「伝説級?なんだそれは」
ロングウッドの森の魔法使いは世俗的な事には疎い者が多いのか。
「魔法使いは初級、中級、上級、特級、伝説級などの階級があるを知らないのか?例えばヴァルドア・サンザールは伝説級になるんだが」
「ヴァルドアが伝説級?それなら私もそれほど違いは無いかも知れんな。ただ森の魔法使いはナーザレスとルナジェールのどちらかが一番だと思うぞ。ヴァルドアは森の魔法使いではないのでな」
「そうなのか。それであんたと比べると落ちるくらいの魔法使いが森には沢山いると?」
「いや、それは違う。私の知っている中ではナーザレスかルナが一番、という意味だ。私の知らない魔法使いが何人いるのかは判らんな」
クマさんなら全体を把握しているのだろうか。サーリールは他者にあまり興味がないタイプのようだ。
「少なくとも若返りの魔法を使えることでナーザレスが一番、という考え方もあるとは思うが、癒しの魔法にかけてはルナが確実に一番だ。彼女のお陰で森は生き続けられていると言っても過言ではない」
ルナは偉大な魔法使いなのだ。ただ彼女はロングウッドの森を自分の魔法で支えているので森からは出られないらしい。
「森全体を把握しておるのはナーザレスだろうがな」
「ここで待っていればナーザレスに会えるかな?」
「それは判らん、何せ初めて来たからな。ナーザレスが私に会いに来たことはあっても私がナーザレスに会いに来たことは無いのだ。そもそも会う用がない」
仲間意識は無いのかもしれない。森を守るためとかの理由が無いと共闘してはくれないのだろう。ロングウッド連合軍構想は始まる前から頓挫しそうだ。
「サーリール、ア・レウラ・ムーロを探してくれた魔法の腕を見込んでもう少しだけ手伝ってはくれないか?」
頼みごとをするのだ、下手に出るのは吝かではない。
「何だ、何をすればよいのだ?」
頼みごとをされるのには慣れていないのだろう、なんだか嬉しそうだ。というか他人と話をすること自体が稀有なのかも知れない。ロングウッドの森の魔法使いはお互い干渉しないのだ。
「ナーザレスかルナを探すのを手伝って欲しい、というさっきと同じ頼みごとなんだが」
「なんだ、結局それか。森に居る魔法使いの居場所を探すのは至難の業だ。マナの量や特徴を探る能力でもあれば別だがな」
ダンテの能力は希少だったのか。ただの上級魔法士ではない、ということだな。いつか手下に迎え入れたい奴だ。
「ではここで待つしかないのか」
「私も忙しい身だが、一緒に待ってやろうか?」
サーリールはとことんいい奴だ。というか、ただの寂しがり屋かも知れない。長い間、誰とも話をしなければ俺もこうなるのか。
「いいのか?それとも誰か、若しくはどこか案内できるところはないか?」
できれば他の魔法使いとも会っておきたい。知己を得ておけば後々役立つこともあるだろう。本気でエル・ドアン対ロングウッド連合軍なんてことを考えて居る訳ではないが、可能性はゼロではないとも思っていた。
「私はナーザレスとルナ以外にはここの魔法使いは誰も知らないし会ったこともない」
ということは二人が森で一番というのも他に比べる選択肢がないだけか。ただ、もっとすごい魔法使いが居るかもしれない、というのはいい情報なのかもな。
「そうなのか、では仕方ないな。ここで待つか」
「私の家で待ってもいいぞ」
「いや、あんたの家で待っていてもクマさんもルナも来てくれる保証はないだろ?」
「ナーザレスは二日に一回は来るがな」
おいおい、そういった情報は最初に言ってくれ。
「そうなのか。で、今日は来ていないと?」
「そうだ。だが多分一週間ほどは来ていないな」
「それは確かか?普段二日置きに来るのに、ここ一週間は来ていないと?」
「お前の言う通りだ。確か少し前にもそんなことがあったが」
間違い無い。クマさんは今師匠に若返りの魔法を掛けているのだ。場所は、そうだ、ルナの居所か。他は考えられないな。
「なるほどな。それじゃあ、やはりここで待つか」
ここで待っていれば若返りの魔法を掛け終えてクマさんが戻って来るはずだ。サーリールの棲家で待つより確実だろう。
「えっ」
サーリールは少し意外だと言う顔をした。そしてそれは少し寂しそうな顔でもあった。
「私の家に来ないのか?」
確かに話の流れで、その可能性もあった。まあ、どちらでもいい、という程度のものだが。
「行かないが、何か問題でも?」
「問題と言うか、まあなんだ。ここで待っているとしても、いつナーザレスが戻って来るのか判らないぞ」
「まあそうだよな。でもあんたの家で待っていても、それは同じじゃないか?」
俺は少しサーリールに意地悪をしてみた。というか、まあ、勿体ぶってみただけだ。
「よし、判った、あんたの家で待とう。ここまで連れて来てくれた恩もあるしな」
「恩?何の話だ?」
サーリールは鈍感なのか乗ってこない。元の場所に戻る時も彼の力を借りる必要があるかもしれないので機嫌を取っておいて間違いはないだろう。
「時間が掛かるかい?」
「せっかちな奴だな、ちょっとくらい待て無いのか。直ぐに済むからそこに座って待っておれ」
俺は仕方なしに切り株が有ったのでそこに座って待つことにした。
「えっ」
周りの景色が一瞬で変わる。目の前に見覚えのある巨木があった。ア・レウラ・ムーロだ。但し、クマさんの姿は無かった。
「ア・レウラ・ムーロじゃないか。瞬間移動でもできるのか?」
「瞬間、なんだ?」
「いや、いい。ア・レウラ・ムーロまで連れて来てくれたんだな、ありがとう、本当に助かった」
「約束しただろう。私は約束を守る男だ」
サーリールは見た目はちいさなただのおっさんだが義理堅い魔法使いだ。瞬間移動もできるところを見ると相当上位の魔法使いだろう。特級や師匠と同じ伝説級かも知れない。
「サーリール、あんたのような魔法使いはロングウッドの森に沢山いるのか?」
「私のような魔法使いとな」
「そうだ。あんたは伝説級魔法使いとか?」
「伝説級?なんだそれは」
ロングウッドの森の魔法使いは世俗的な事には疎い者が多いのか。
「魔法使いは初級、中級、上級、特級、伝説級などの階級があるを知らないのか?例えばヴァルドア・サンザールは伝説級になるんだが」
「ヴァルドアが伝説級?それなら私もそれほど違いは無いかも知れんな。ただ森の魔法使いはナーザレスとルナジェールのどちらかが一番だと思うぞ。ヴァルドアは森の魔法使いではないのでな」
「そうなのか。それであんたと比べると落ちるくらいの魔法使いが森には沢山いると?」
「いや、それは違う。私の知っている中ではナーザレスかルナが一番、という意味だ。私の知らない魔法使いが何人いるのかは判らんな」
クマさんなら全体を把握しているのだろうか。サーリールは他者にあまり興味がないタイプのようだ。
「少なくとも若返りの魔法を使えることでナーザレスが一番、という考え方もあるとは思うが、癒しの魔法にかけてはルナが確実に一番だ。彼女のお陰で森は生き続けられていると言っても過言ではない」
ルナは偉大な魔法使いなのだ。ただ彼女はロングウッドの森を自分の魔法で支えているので森からは出られないらしい。
「森全体を把握しておるのはナーザレスだろうがな」
「ここで待っていればナーザレスに会えるかな?」
「それは判らん、何せ初めて来たからな。ナーザレスが私に会いに来たことはあっても私がナーザレスに会いに来たことは無いのだ。そもそも会う用がない」
仲間意識は無いのかもしれない。森を守るためとかの理由が無いと共闘してはくれないのだろう。ロングウッド連合軍構想は始まる前から頓挫しそうだ。
「サーリール、ア・レウラ・ムーロを探してくれた魔法の腕を見込んでもう少しだけ手伝ってはくれないか?」
頼みごとをするのだ、下手に出るのは吝かではない。
「何だ、何をすればよいのだ?」
頼みごとをされるのには慣れていないのだろう、なんだか嬉しそうだ。というか他人と話をすること自体が稀有なのかも知れない。ロングウッドの森の魔法使いはお互い干渉しないのだ。
「ナーザレスかルナを探すのを手伝って欲しい、というさっきと同じ頼みごとなんだが」
「なんだ、結局それか。森に居る魔法使いの居場所を探すのは至難の業だ。マナの量や特徴を探る能力でもあれば別だがな」
ダンテの能力は希少だったのか。ただの上級魔法士ではない、ということだな。いつか手下に迎え入れたい奴だ。
「ではここで待つしかないのか」
「私も忙しい身だが、一緒に待ってやろうか?」
サーリールはとことんいい奴だ。というか、ただの寂しがり屋かも知れない。長い間、誰とも話をしなければ俺もこうなるのか。
「いいのか?それとも誰か、若しくはどこか案内できるところはないか?」
できれば他の魔法使いとも会っておきたい。知己を得ておけば後々役立つこともあるだろう。本気でエル・ドアン対ロングウッド連合軍なんてことを考えて居る訳ではないが、可能性はゼロではないとも思っていた。
「私はナーザレスとルナ以外にはここの魔法使いは誰も知らないし会ったこともない」
ということは二人が森で一番というのも他に比べる選択肢がないだけか。ただ、もっとすごい魔法使いが居るかもしれない、というのはいい情報なのかもな。
「そうなのか、では仕方ないな。ここで待つか」
「私の家で待ってもいいぞ」
「いや、あんたの家で待っていてもクマさんもルナも来てくれる保証はないだろ?」
「ナーザレスは二日に一回は来るがな」
おいおい、そういった情報は最初に言ってくれ。
「そうなのか。で、今日は来ていないと?」
「そうだ。だが多分一週間ほどは来ていないな」
「それは確かか?普段二日置きに来るのに、ここ一週間は来ていないと?」
「お前の言う通りだ。確か少し前にもそんなことがあったが」
間違い無い。クマさんは今師匠に若返りの魔法を掛けているのだ。場所は、そうだ、ルナの居所か。他は考えられないな。
「なるほどな。それじゃあ、やはりここで待つか」
ここで待っていれば若返りの魔法を掛け終えてクマさんが戻って来るはずだ。サーリールの棲家で待つより確実だろう。
「えっ」
サーリールは少し意外だと言う顔をした。そしてそれは少し寂しそうな顔でもあった。
「私の家に来ないのか?」
確かに話の流れで、その可能性もあった。まあ、どちらでもいい、という程度のものだが。
「行かないが、何か問題でも?」
「問題と言うか、まあなんだ。ここで待っているとしても、いつナーザレスが戻って来るのか判らないぞ」
「まあそうだよな。でもあんたの家で待っていても、それは同じじゃないか?」
俺は少しサーリールに意地悪をしてみた。というか、まあ、勿体ぶってみただけだ。
「よし、判った、あんたの家で待とう。ここまで連れて来てくれた恩もあるしな」
「恩?何の話だ?」
サーリールは鈍感なのか乗ってこない。元の場所に戻る時も彼の力を借りる必要があるかもしれないので機嫌を取っておいて間違いはないだろう。
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