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私が愛と呼んだもの
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電車の窓に付いた雨粒が流されていく。
走る電車の速さに置いてかれるように、剥がされるように。
まあ、当たり前か。同じ速さで走らなければ、置いてかれるのは。
スマホも鞄から取り出せないような混み合った電車の中で、私はぼんやり窓を見つめていた。
昨日、私は彼と喧嘩した。きっかけは味噌汁だった。いやはや、たいそれたことはない。そう、他人に話すほどでもない、日常の戯れに近い些細な喧嘩だ。
本当にいつも通り。誰にでもあるような小さな衝突。
でも、その日、私はいつもと違った。冷たい水が体を巡るような感覚があった後に気持ちがおさまり、そのままスッキリと朝を迎えられた。
電車が揺れる。
意識が逸れていたようだ。窓に手を付き、後ろからのし掛かる人々の重みに耐えた。
窓には流れた雨だれの跡が残っている。
同じ速さで走らないと一緒にはいられない。
私は頷いて、彼に今夜、これを告げないとと思った。
走る電車の速さに置いてかれるように、剥がされるように。
まあ、当たり前か。同じ速さで走らなければ、置いてかれるのは。
スマホも鞄から取り出せないような混み合った電車の中で、私はぼんやり窓を見つめていた。
昨日、私は彼と喧嘩した。きっかけは味噌汁だった。いやはや、たいそれたことはない。そう、他人に話すほどでもない、日常の戯れに近い些細な喧嘩だ。
本当にいつも通り。誰にでもあるような小さな衝突。
でも、その日、私はいつもと違った。冷たい水が体を巡るような感覚があった後に気持ちがおさまり、そのままスッキリと朝を迎えられた。
電車が揺れる。
意識が逸れていたようだ。窓に手を付き、後ろからのし掛かる人々の重みに耐えた。
窓には流れた雨だれの跡が残っている。
同じ速さで走らないと一緒にはいられない。
私は頷いて、彼に今夜、これを告げないとと思った。
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