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3 11月25日
自信なんて持てない
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「……自信、なんて。持てないですよ」
どう話しかけたらいいのか分からないまま、言葉が出てこないでうつむいていると、そのうちみんなあたしから離れていく。先輩みたいに馴れ馴れしく話しかけるなんて出来ないし、そんなことをして嫌われてしまったらと思うと、怖くて一歩が踏み出せない。
だったら、好かれず、嫌われず、何の興味も持たれない存在なら、1番いいのかもしれないと、今のあたしが出来上がっている。
椿くんの解釈は合っている。
誰もが興味を持って、憧れて、好きになって、つい騒いでしまうくらいにかっこいい椿くん。そんな人たちとも交われないあたしは、椿くんにまったく興味がないと思われても、仕方がない。だって、あたしがそう見えるようにずっとしてきたんだから。
でも、そのあたしが、まさかこんなに椿くんのことを推しているなんて事実が分かったら、椿くんはどう思う?
気持ち悪いかな。きっとそう思うよね? なんだか、急にその時が来ることが、怖くなる。
「理人先輩の目的はなんなんですか?」
「え?」
「あたしが椿くんのこと激推ししてること、気持ち悪いって思ってます? 椿くんにそのこと気づかせたくて、こんなことしてるんですか?」
「え、そんなこと思ってない」
「じゃあ、なんでダブルデートなんてしなきゃないんですか。あたしは別に椿くんと仲良くならなくていいんです。推しは、手が届くところにはいてはいけないんです」
それに、椿くんの気持ちが最優先だから。先輩と遊ぶためとは言え、あたしなんかとダブルデートなんてしたくないだろうから。
湧き上がってきた涙を、ぎゅっと膝の上で握ったこぶしに力を込めてこらえた。
「ニコちゃん。椿のことも考えてそう言ってくれてるなら、アイツを助けると思って誘いに乗ってやってよ。ニコちゃんが思っているような、気持ち悪いとか、そういうことはいっさいないから。俺だってそんな風には思っていないからね。それだけは分かって」
毛先が内側に綺麗にカールして入り込む。目元はこの前より気持ち長め。だけど、毛先をくるりと内側に巻き込んでくれたから、目より少し上にふんわりとカールしている。
タオルを肩からはずして、「お疲れ様でした」と肩を優しく押す理人先輩に、あたしは戸惑いながら椅子から降りて、頭を下げた。
「……ありがとうございました」
外はまだほんのりと夕焼けが残る藍色の空。
晴れた時の夕空は、グラデーションがより綺麗に見えて心が澄んでいく。
理人先輩にイライラしてしまうのは、ウジウジとした湿っぽい自分の性格のせいだ。いつも綺麗な澄んだ空ばかりを羨ましがって見つめて、それだけで満足しようとしていた。あたし自身が変わろうなんて、一ミリも思ったりしなかった。変わりたいなんて思わなかったし、変わろうとも思わなかった。
でも、理人先輩があたしの髪に触れて、ヘアサロンまりあの鏡に映るあたしは、いつだって帰る時には別人のように変身させられる。それはもちろん嬉しいけれど、でも、なんだかあたしじゃないみたいで、引け目も感じる。
あたしは、一体どうしたらいいんだろう。
どう話しかけたらいいのか分からないまま、言葉が出てこないでうつむいていると、そのうちみんなあたしから離れていく。先輩みたいに馴れ馴れしく話しかけるなんて出来ないし、そんなことをして嫌われてしまったらと思うと、怖くて一歩が踏み出せない。
だったら、好かれず、嫌われず、何の興味も持たれない存在なら、1番いいのかもしれないと、今のあたしが出来上がっている。
椿くんの解釈は合っている。
誰もが興味を持って、憧れて、好きになって、つい騒いでしまうくらいにかっこいい椿くん。そんな人たちとも交われないあたしは、椿くんにまったく興味がないと思われても、仕方がない。だって、あたしがそう見えるようにずっとしてきたんだから。
でも、そのあたしが、まさかこんなに椿くんのことを推しているなんて事実が分かったら、椿くんはどう思う?
気持ち悪いかな。きっとそう思うよね? なんだか、急にその時が来ることが、怖くなる。
「理人先輩の目的はなんなんですか?」
「え?」
「あたしが椿くんのこと激推ししてること、気持ち悪いって思ってます? 椿くんにそのこと気づかせたくて、こんなことしてるんですか?」
「え、そんなこと思ってない」
「じゃあ、なんでダブルデートなんてしなきゃないんですか。あたしは別に椿くんと仲良くならなくていいんです。推しは、手が届くところにはいてはいけないんです」
それに、椿くんの気持ちが最優先だから。先輩と遊ぶためとは言え、あたしなんかとダブルデートなんてしたくないだろうから。
湧き上がってきた涙を、ぎゅっと膝の上で握ったこぶしに力を込めてこらえた。
「ニコちゃん。椿のことも考えてそう言ってくれてるなら、アイツを助けると思って誘いに乗ってやってよ。ニコちゃんが思っているような、気持ち悪いとか、そういうことはいっさいないから。俺だってそんな風には思っていないからね。それだけは分かって」
毛先が内側に綺麗にカールして入り込む。目元はこの前より気持ち長め。だけど、毛先をくるりと内側に巻き込んでくれたから、目より少し上にふんわりとカールしている。
タオルを肩からはずして、「お疲れ様でした」と肩を優しく押す理人先輩に、あたしは戸惑いながら椅子から降りて、頭を下げた。
「……ありがとうございました」
外はまだほんのりと夕焼けが残る藍色の空。
晴れた時の夕空は、グラデーションがより綺麗に見えて心が澄んでいく。
理人先輩にイライラしてしまうのは、ウジウジとした湿っぽい自分の性格のせいだ。いつも綺麗な澄んだ空ばかりを羨ましがって見つめて、それだけで満足しようとしていた。あたし自身が変わろうなんて、一ミリも思ったりしなかった。変わりたいなんて思わなかったし、変わろうとも思わなかった。
でも、理人先輩があたしの髪に触れて、ヘアサロンまりあの鏡に映るあたしは、いつだって帰る時には別人のように変身させられる。それはもちろん嬉しいけれど、でも、なんだかあたしじゃないみたいで、引け目も感じる。
あたしは、一体どうしたらいいんだろう。
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