毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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5 12月25日

クリスマスの疑問

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 勢いをつけたまま、ドアを開けて中に入ると、「いらっしゃいませー」とまりあさんの元気な声が響いてきた。

「あら、ニコちゃん! こんにちは」
「こ、こんにちは! あの、理人先輩って……」
「理人なら部屋にいると思うけど。呼んでこようか?」
「あ……すみません。お願いします」

 平日の夕方。お店は珍しくお客さんは誰もいない。すぐにまりあさんは「理人ー」と先輩の名前を呼びながら奥の部屋へ消えていく。
 今更になって、突然きてしまって迷惑ではないかと、反省してしまう。

「あれー、ニコちゃん? どしたー」

 やっぱり驚いた顔でお店に顔を出してくれた理人先輩は、もうすっかりオフモードなのかあまり見たことのないゆるいスウェット姿で髪も下ろしている。

「すみません、突然来てしまって」
「いいよいいよー、いつでも来て。そこ座る?」

 入り口付近に立ったままだったあたしに、待合いのソファーに座るように言ってくれるからそっと座った。

「あ、あの」
「うん」

 理人先輩は、なんの話だろうと悩むみたいな顔をしている。だから、もしかしたら椿くんがあたしに言った言葉が、理人先輩のせいじゃないかもしれないと、頭の片隅で考え始めてしまう。
 もしも、また理人先輩の計らいで椿くんがあんなことを言っているなら、理人先輩にお願いしてまた可愛くなって、クリスマスの日に椿くんと会えばいいだけだと思った。
 いや、でもその前になんであたしとクリスマスに会うのかが最大の疑問として残ってはいるのだけれど。まぁ、それはとりあえず今は考えないことにして。

「クリスマスって、なにか考えていたりします、か?」
「え?」

 いや、何この質問。これじゃあ疑っていると言うか、怪しんでいると言うか、何が聞きたいのかよくわからないよね?

「あ、えっと」

 自分でも何を聞けばいいのか分からなくて、俯いたまま膝の上で両手をキュッと握りしめた。

「クリスマス?」

 理人先輩が確かめるように聞いてくるから、あたしは小さく頷くだけ。

「もしかして! ニコちゃんようやく自分から動き出そうとしてる?」

 ワクワクと高揚しているような声で理人先輩が聞いてくるから、あたしは顔を上げた。

「……え?」
「クリスマスの日までにかわいくなって、椿のことを誘おうって話でしょ?」

 キラキラと楽しそうに話す理人先輩。あたしは頷くことも首を振ることも出来ない。
 そして、こんな反応をするってことは、やっぱり椿くんは理人先輩となにかを企てているわけではないとわかった。
 そりゃそうだ。理人先輩はこの冬は卒業だし色々と忙しい。あたしのモデルの件は勉強の一部としても、人の世話を焼いている暇なんてないはず。
 だとしたら、もしかして一条さんが?

「……い、いえ。あの、一条さんって」
「え? ユリカ?」

 でも、なんと聞けばいいんだろう。
 一条さんが企んでいるなにかを知っていますか? なんて失礼な聞き方だし。それに、一条さんがなんで椿くんにあたしをクリスマスに誘えと誘導するのか、そこがまず疑問だ。しかもそんなことになったら、椿くんがその誘いを断ればいいだけの話だ。
 推しの理人先輩に頼まれたのなら、引き受けない理由は無いけれど、一条さんに頼まれたことなら断ったってなんのダメージもないはずだから。
 それなのに、椿くんがあたしに12月25日の予定を聞いてくるって、やっぱりなにかあるとしたら理人先輩以外に考えられない。

「え、なにかあった?」

 悩み過ぎて顔に出てしまったのかもしれない。理人先輩が心配そうにあたしの顔を覗き込んでくるから、ハッとして笑顔を無理矢理作る。でも、言葉が出てこない。
 しばらく無言のままでいると、お店の入り口が開いてお客様が入ってきた。

「あ、いらっしゃいませ。今母のこと呼んできますね」

 すぐに理人先輩は立ち上がって、お客様に挨拶するとまりあさんに声をかけている。
 あたしは立ち上がってお客様と入れ替わるように入り口に立つと、頭を下げた。

「あの、突然すみませんでした。ありがとうございます。お邪魔しました」

 ドアを開けて外に出ると、歩き出す。
 すると、後ろから理人先輩が追いかけて来てくれたのか、名前を呼ばれて振り返った。
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