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第四章 戸惑い、変わる思考
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部活終わり、さっそく赤塚が駆け寄って来た。
「夜野くん! さっきはありがとう! 先生にもオッケーもらえたしほんと助かりました」
バドミントンのラケットを胸に抱えて頭を下げるから、向き合って首を振った。
「いや、別にそんな丁寧にお礼なんていいから」
さっきすでに感謝されているのに、改めてありがとうと言われると、慣れていないこっちはむず痒くなる。
「でね、さっそく委員会が明日の放課後あるみたいで。これ、話し合いの内容だって。また明日よろしくね」
「あ、ああ。分かった」
プリントを一枚渡されて受け取ると、赤塚は女子の輪の中に戻っていった。
なにやらキャーキャー騒がしい。いつも楽しそうだよな、女子は。会社でもよく見かけていた光景に、ため息をついた。
なにがそんなに楽しいのかなんて、考えたこともないけれど。
視線をプリントに落としていると、横からヌッと変顔をした政光が現れるから、思わず全身飛び跳ねるみたいに後退りする。
「見ーちゃった」
姿勢を正して隣に並んだ政光が、また揶揄うように言ってくるから、ジトっとした目を向けて何も言わずにいた。
「赤塚かわいいよねー」
「は?」
「佑衣斗、やっぱモテていーなぁ」
「勘違いするなよ。委員会のプリント渡されただけだ」
ピラっとプリントを政光の顔の前に見せつけると、一気に顔色を変えた。
「はぁ⁉︎ 委員会⁉︎ は? まじで? なんで? 佑衣斗が? え?」
いちいち反応がウザいのどうにかならないかな。と、もう何も語りたくなくて無視を決め込むと、ラケットバックを肩にかけた。
先に外に出る僕を追いかけて来た政光は、まだしつこい。
「え? 委員会? なんの?」
「環境」
「……そんなんあった?」
立ち止まって、ふむと考え込む政光を置いて、校門を出る。
「ってか、何委員でも別に良いけどさ、赤塚に頼まれたの?」
「……まぁ、やらないかって言われて一度断ったけど」
「けど?」
「なんか、他のやつにも断られてたし」
「で? やろうと?」
そうだけど? と、ため息を吐き出した僕を見て、やっぱり政光は目を見開いている。
「らしくねぇ!」
「……らしいってなんだよ」
確かに、今の僕の行動は自分でも今までと全然違って、らしくないと言われると納得もしてしまう。
けれど、なんだか政光には当時の自分のことを見透かされている様な気がして嫌な気分になる。
「佑衣斗は自分の考えが真っ直ぐあって、誰にも邪魔させないような明確な意思……みたいなもんがあるよなぁ、なんて思ってたんだけど。お前もこっち側の人間だったか!」
「……は?」
「今度、真部(まなべ)たちとも遊ぼうぜー、じゃあなー」
賑やかなテンションのまま、政光は大きく手を振ると行ってしまった。辺りは嵐が去った後のように静かになってホッとする。
そして、政光の言葉を思い出す。
『誰にも邪魔させないような明確な意思』
なんだよ、それ。そんなかっこいいやつじゃない。僕は。
友達も親友もいなくて、人との関わりを拒絶して、ただ単に今の何も出来ない自分の状況から、一刻も脱したくて、精一杯だった。
大人になれば自由になれる。自分の思い描くようなことが、きっと出来る。なんて夢を見て、ただ真っ直ぐに振り返ることをせずに歩いて来た。
ただ、真っ直ぐに。復習も反省もせずにいたから、だから、後悔だってしなかったのかもしれない。
後悔するくらいなら、諦めた方が楽だ。そう思っていた自分は、大人になんてなりきれていなかったのに、あの頃の同級生から見たら、前へ進んでいるように見えていたんだな。
ずっと、足踏みのまま止まってしまっていたんだ。
なにもかっこいいことなんてない。
ため息を吐き出してバスから降りると、バス停に昼川が立っていた。
「夜野くん! さっきはありがとう! 先生にもオッケーもらえたしほんと助かりました」
バドミントンのラケットを胸に抱えて頭を下げるから、向き合って首を振った。
「いや、別にそんな丁寧にお礼なんていいから」
さっきすでに感謝されているのに、改めてありがとうと言われると、慣れていないこっちはむず痒くなる。
「でね、さっそく委員会が明日の放課後あるみたいで。これ、話し合いの内容だって。また明日よろしくね」
「あ、ああ。分かった」
プリントを一枚渡されて受け取ると、赤塚は女子の輪の中に戻っていった。
なにやらキャーキャー騒がしい。いつも楽しそうだよな、女子は。会社でもよく見かけていた光景に、ため息をついた。
なにがそんなに楽しいのかなんて、考えたこともないけれど。
視線をプリントに落としていると、横からヌッと変顔をした政光が現れるから、思わず全身飛び跳ねるみたいに後退りする。
「見ーちゃった」
姿勢を正して隣に並んだ政光が、また揶揄うように言ってくるから、ジトっとした目を向けて何も言わずにいた。
「赤塚かわいいよねー」
「は?」
「佑衣斗、やっぱモテていーなぁ」
「勘違いするなよ。委員会のプリント渡されただけだ」
ピラっとプリントを政光の顔の前に見せつけると、一気に顔色を変えた。
「はぁ⁉︎ 委員会⁉︎ は? まじで? なんで? 佑衣斗が? え?」
いちいち反応がウザいのどうにかならないかな。と、もう何も語りたくなくて無視を決め込むと、ラケットバックを肩にかけた。
先に外に出る僕を追いかけて来た政光は、まだしつこい。
「え? 委員会? なんの?」
「環境」
「……そんなんあった?」
立ち止まって、ふむと考え込む政光を置いて、校門を出る。
「ってか、何委員でも別に良いけどさ、赤塚に頼まれたの?」
「……まぁ、やらないかって言われて一度断ったけど」
「けど?」
「なんか、他のやつにも断られてたし」
「で? やろうと?」
そうだけど? と、ため息を吐き出した僕を見て、やっぱり政光は目を見開いている。
「らしくねぇ!」
「……らしいってなんだよ」
確かに、今の僕の行動は自分でも今までと全然違って、らしくないと言われると納得もしてしまう。
けれど、なんだか政光には当時の自分のことを見透かされている様な気がして嫌な気分になる。
「佑衣斗は自分の考えが真っ直ぐあって、誰にも邪魔させないような明確な意思……みたいなもんがあるよなぁ、なんて思ってたんだけど。お前もこっち側の人間だったか!」
「……は?」
「今度、真部(まなべ)たちとも遊ぼうぜー、じゃあなー」
賑やかなテンションのまま、政光は大きく手を振ると行ってしまった。辺りは嵐が去った後のように静かになってホッとする。
そして、政光の言葉を思い出す。
『誰にも邪魔させないような明確な意思』
なんだよ、それ。そんなかっこいいやつじゃない。僕は。
友達も親友もいなくて、人との関わりを拒絶して、ただ単に今の何も出来ない自分の状況から、一刻も脱したくて、精一杯だった。
大人になれば自由になれる。自分の思い描くようなことが、きっと出来る。なんて夢を見て、ただ真っ直ぐに振り返ることをせずに歩いて来た。
ただ、真っ直ぐに。復習も反省もせずにいたから、だから、後悔だってしなかったのかもしれない。
後悔するくらいなら、諦めた方が楽だ。そう思っていた自分は、大人になんてなりきれていなかったのに、あの頃の同級生から見たら、前へ進んでいるように見えていたんだな。
ずっと、足踏みのまま止まってしまっていたんだ。
なにもかっこいいことなんてない。
ため息を吐き出してバスから降りると、バス停に昼川が立っていた。
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