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運営に見放された

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「ゲームを起動。アクセス完了。コネクト完了。神経リンク可能。ゲーム画面切り替え中……」
「長いなー。やっぱりVRMMOって完全一体型だから色々と繋げるの大変なのかな?」
「98%……99%……ゲームへ移行します」
「やっときた!」

 私は今、1年前に出たVRMMORPG【ディーヴェルクオンライン】をやっと買えたからさっそくプレイしている。
 大学の友達は、みんなやっているけど、私はバイトを始めるのが遅かったことで遅れをとっている。
 だからこの夏休みの間に──追いつく!

「チュートリアルを飛ばします。無職システム作動、固定スキルを付与。レベル1固定スキルが強制設定されました」
「……。あれ?」
「ワールド転送完了。ナビゲーター切ります」
「えぇ──!? ちょっと待って──!?」

 チュートリアルを飛ばされ、最初に選択できる職業も無職に設定されてしまい──固定スキルレベル1などと聞いたことのないスキルを付与されてしまった。
 また、そのスキルを強制設定……。
 ──出だしから私のレベルは1から変動しなくなってしまったじゃない。

「チュートリアルでレベル8は上がるって聞いてたのに……チュートリアル飛ばしてレベル1。レベル上がらなかったら意味ないじゃん! と、とりあえず運営に問い合わせよね!」
「……はい。こちら【ディーヴェルクオンライン】、お客様サポートセンターです。ゲーム内からのお問い合わせですね?」
「はい! チュートリアル飛ばされたうえに、レベル1の固定スキルを強制設定されて!」

 女の人の声が、ゲーム内のスマートフォンから聞こえてきて、慌てて相談をした。
 あまりにもおかしいこの状況、バグや不具合で説明がつくならそれはそれでいいのだけど……レベル1の固定スキルなんて今までのゲームでも見たことない。

「確認したところ、そのような固定スキルは存在していません。チュートリアルは飛ばすことができないよう、プログラミングされておりますので何かの不具合、バグとは考えにくいです。部品の破損も考えられますが……こちらで解決策を見つけますのでそれまでは薬師をお勧めします」
「薬師……ですか? 何する系ですか?」
「お電話代わりましたー! 役職担当のリリーミ・シュテンと言いまーす! はーい! 薬師は普通にお薬調合して売って、回復して回復させてあげてー、時に爆薬や劇薬作って殺っちゃいまーす!以上でーす! ……プープープー」

 切られてしまった。
 役職、つまり職業担当さんのリリー……なんとかっていう人の言っていることが何一つ分からなかった。
 薬師だから普通にお薬作るしかないっていうことで理解はあっているかもしれないけれど……。

「とりあえず……仕方ないから薬師をやってみようかな。タブレットを開いて──職業アプリを押して、薬師をポチッと」

 薬師を選択した私の足元から、緑色のオーラが溢れ出して私の衣装が変わった。

「薬師と言うよりかは……薬剤師ねこれ」

 半袖のポロシャツ、ジーパン、白衣に冒険者ステータスが記載されているプロフィールカードを入れた名札。
 いや、もう薬剤師を通り越して──ただの医者に見えてきた。

「とりあえず……SSスクリーンショットしてツイートしておこう。薬師を超えて医者になったとか言って……」
 
 チュートリアルをしていない私は、貰うはずのコインと装備一式、ポーション数個とガチャ用のジェムを何一つ貰っていない。
 地図も貰っていないから酒場ギルドの場所が全然分からない。

「あれ? 君、見ない顔だね。レベル1……初期冒険者チュートリアラー?」
「あ、いえ! チュートリアルも飛ばされて、レベル1の固定スキルを強制設定された薬師の……名前まだ付けてなかった」
「うーん。見た目的には薬師ではなくて医者だよね! 面白いね君! リミア……リミアとかどうかな!?」
「いい名前です! リミア……っと! 出ました!?」
「出てる出てる! それにしても──チュートリアルしていないのにその容姿。もしかして君は現実でもその見た目なの?」

 忘れていたけれど、チュートリアル後に容姿をイジれる。
 だけど私はしていないから──全てが現実のままなんだ。

「多分そうだと……」
「可愛い……。君可愛いよ! うん! リミアって似合ってるよ! あ、私はカリーシェで君と同じ、容姿はそのままなんだ! 職業ナイトメアだからよろしくね!」
「カリーシェ? ──可愛い」

 カリーシェと名乗る職業ナイトメア。
 綺麗な西洋の鎧を身に纏った銀髪の高身長……でも日本語なところを見ると日本人、もしくはハーフ。
 その後ろから来た小さな魔法使いの女の子が杖に乗ってフワフワと浮遊しながら近づいてくる。

「リミアです! 今日始めてみたら……運営にも対処できない事態に巻き込まれてしまった永久レベル1の薬師です」
「……ププ。アハハハハハ! 面白いねリミアちゃん! なんでそんなことになったのか聞きたいよ! なんでなんで!?」

 可愛い顔で大笑いする魔法使いの女の子に事情を話すと、もっと大笑いして落ち着いてから色々と知っていることを教えてくれた。 
  
 「固定スキルでレベル1は無いよ? それとチュートリアルはプログラミングの際にスキップ不可だから……部品の破損かもしくは──分からない! けれど、知っているのは薬師は多分君がこのゲーム内では初めてだと思うよ? そうだ、名前はルルで職業は幻獣使い!」
「よろしくお願いします! カリーシェさん、ルルさん!」
「ちなみにだけど……なんでリミアちゃんは回復と毒のステータスがカンストしているんだろう」
「あれ? ……本当だ! えぇ──!?」
「つまり──」

 そう言って、ニヤニヤと嬉しそうになぜか私はルルさんに見られて……唇が当たりそうな距離まで近づいて笑顔で言った。

「ゲーム内で一人の薬師! 癒やし回復と、苦しめの毒。その2つをカンストしているリミアちゃんは──他プレイヤーを生かすも殺すもリミアちゃんの手にかかっているってことだよ!」

 薬を調合して回復、攻撃強化、防御強化等の加護ポーションを作ることができ、また劇薬や爆薬を混ぜて攻撃ポーションも作れるゲーム内唯一の薬師に──私はなっていました。
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