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一章〜ギルド設立を目指して〜
十三話 乗り越えた先にギルドはある①
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★
「昨日のーー」
「ああ、昨日のな。『ローズ』ってまた、大物が出てきてビックリしたな。何でも、最近ではローズ様の方は要注意人物として国連騎士省で取り上げられてるしな」
「はい、祝の料理と飲み物だみんな。しかし、ギルド『ローズ』がら戻っていてとはーーこりゃ、また国が動く時かね」
バーのカウンターで、私達は一人一品、好きな食べ物を選ばせてもらい、マスターとの約束通りタダ飯食らいをしている。
マスターがおまけで、好きな飲み物を無料で付けてくれた。
私とネネは、ここで出会った。そして、シュートとアリアータは、試験で出会った。
問題なく私達は、仲良くやれた。それは似た者同士が集まっていたからもしれない。
試験から帰ると、ゲートの前でマスターは待ってくれていた。
私を見るとすぐに、頭に手を乗せ、
『ーー頑張ったな、お嬢ちゃん』
と、言って微笑んでくれた。
それで、私が仲良くなったメンバー全員が今こうしてただ飯を食べている訳でーー。
しかしそれでも、昨日の突然現れたギルド『ローズ』のリーダーと副リーダー、ローズとベルクのことが私達四人の頭からは離れず、最悪の意味で印象強く残っている状態だった。
「さて、『ローズ』と言えば、実は昔。最弱ギルドと呼ばれていたんだ」
「「え?」」
前みたく、コップを拭きながらマスターはそう言った。
私達は信じられず、素直に驚いた。
あの世界三大ギルドに入る『ローズ』が、かつては最弱ギルドだった事実ーー誰が信じるだろうか。
いや、確実にーー誰も信じないはずだ。
それでも、私達は信じた。だからこそ、全員で驚いてしまった。
マスターは嘘をつくような人間でないこと、ここ集会場に集う皆が知っている。
マスターの言うことは嘘ではない。それに、マスターの見た目年齢からするに、ちょうど『ローズ』が設立された頃、丁度騎士団に所属していたと考えて良い。
もしかしたら、集会場でマスターを既にしていたかもしれないが、どちらにせよ、このバルテン王国で生まれたギルドの始まりから知っていて当然だ。
「最弱と言っても、ただ弱い訳ではなかった。ローズのメンバーは多過ぎた。ために、一人一人が力を押し殺してギルドに居たんだ。だけど、ローズは我慢ならず、自分と本気で戦って最後まで立っていた者達をメンバーとして迎え、倒れた者達は即刻ギルド脱退を命じたーー結果が、今の『ローズ』。バルテン王国が誇る最強の四人組だね」
「いや、でもさーーなら、何で二人だけ試験に紛れ込んだんだ?」
「君はシュート君だったね。紛れ込んではいないさ、ただ、君達の面を拝みに、頃合いを見計らって幻影魔法なんて使って接近したはずだ。ローズはね、気が短い女だからね、絶対に紛れ込むことはしないはずだーーいや、するはずがない」
「だけどおっさん。不思議ならねーよ、あんな奴らがどうして、戻ってきては無名の俺達を見に来たんだ?」
「それは多分ーーいや、それ私にも分からない。すまないね」
今、マスターは重要なことを言おうとした。
「ちぇー。分かんねーのかよ」
しかしシュートはラガーを飲みながら、マスターを頼りないとばかりに細い目で見ているが、私としてはもう一押ししてほしいところだ。
だが、この男も大概の馬鹿だ。マスターの分からんないを、真に受けて一押しどころから一引きした。
さて、マスターが何を言いたかったのかは、この際置いておくとして、もちろん『ローズ』の一件もだ。
私達が先に考えるべきは、離れるかーーこのまま居るか。
試験が強制終了したあと、ドレインの効果で半日程度魔法の使えなかった私達同様の冒険者達は、その時組んでいたメンバーで基本的にギルドを設立している。
私達くらいが、こうしてまだフリーのまま残っている。
「ーーさて、話題転換よ。ギルドをどうするかーーってことに」
「うーん、それよねー」
アリアータは、ワイングラスを揺すりながら目を細めた。
もしかすると、私達との行動がアリアータには合わなかったのかもしれない。
ただ、大人の常識として、我慢するところをしていただけーー笑顔を見せていただけなのかもしれない。
ワイングラスをゆっくりと置くと、アリアータは鞘を握って席から立ってしまう。
私は止めようと手を伸ばす。しかし、私に止める権利は無かった。
「ーーアリアータはな、ああ見えて、暗い過去持ってるからな。まあ、追い掛けなくても戻ってくると思うぜ」
「……」
「お前もお前だなリリー。俺達は気が済むまで飲んでるから、早く連れ戻すなら連れ戻しにいけって、リーダー」
「……シュート」
「おーいおっさん、ラガーおかわり」
シュートが横目で、私に「行け行け」と言う。
私は迷わず、席を立ってアリアータの後を追うことにする。
多分彼女は、月を見ているーー。
バルテン王国で、アリアータとは月を意味するから。なんて、私も大概馬鹿なのだ。
「シュート君、君はリリーちゃんを気に入っているみたいだね」
「プライベートに首突っ込むなよおっさん。別に……ただ、俺はあいつにーー」
「言わなくて良いんだよ」
「ーーん? 二人、何か言った?」
「「何も」」
シュートとマスターが、私の名前を出した気がして振り返る。
でも私の空耳だったのか、いや、私の名前が出ただけで内容は大したことないようで。二人は首と、手を振ってくる。
私は二人に手を振られながら、とりあえず、アリアータの元へ向かうこととする。
集会場の外へ出て、ベンチに腰掛けていないことを確認してから、帰ったなんて最悪のパターンを想像しながらもとりあえず辺りを見渡してみる。
すると、集会場の屋上へ登るために誰かが立てたハシゴがあった。
ハシゴを試しに登ってみるとそこにアリアータは居た。
膝を抱え、しんみりとした空気を放っている。
ちなみに、私の馬鹿な考えは合っていた。月をチラチラと何度も見ている。
「ーーアリアータ」
「……リリー。追い掛けて来たんだ」
「そうね。月が月を、自分で自分の姿を見つめているところを見に来てあげたわ。何? 考え事?」
「そうかも。流石リーダーね、良く分かってる」
アリアータは足を伸ばし、その横に私は腰を下ろした。
一般的に考えて、育ちは私の方が良いはずなのに、胡座をかいてしまうのは多分、王族の縛りから解き放たれた反動だった。
アリアータと二人で、少しの間沈黙の中で涼しい風を肌で感じながら月を見上げていた。
私から聞くことはしない。
アリアータは長いこと黙っていたが、しかし、諦めたのか、口を開くのは案外とすんなり渋る様子も無くだった。
「私ね、前ギルドに所属していたの。冒険者なりたての三年前。だから、十七歳の時のこと」
「へえ~十七歳から冒険者してたのね」
「まあね? それで、ギルドに入ったは良いものの、今では魔法が全てになって、私みたいな剣を振ることしか脳のない時代遅れは強制脱退されてーーだからこうして、今は一人な訳よ」
「強制脱退ねえ……私は、別に時代遅れでも古臭くても、一つのことを捨てずに持ち続けるアリアータを尊敬するけど。だって、それでも剣を捨てなかったのでしょう?」
「それは……そうね。だって、私の剣術は父から受け継いだ形見だから。魔法に転身する気は起こらなかったわあ。だから、更に剣術を極めて魔法適正値をカバーすることができた。私が前居たギルドは『クイーン』なの。知ってるでしょ?」
ギルド『クイーン』は、そのメンバー全員が女しかおらず、それもかなりのやり手ばかりで有名だ。
『クイーン』はレベッカも昔話していた覚えがある。確か、闘技場でのバトルロワイヤルにチーム戦参加して、クイーン四天王と呼ばれる四人だけで闘技場諸々破壊した荒くれ者達とも。
『クイーン』と言う割には、男よりも荒々しい気がするギルド。
そこに居たとなれば、当時でもそれなりにアリアータは強かったことになる。
しかしそれでも強制脱退させられた。剣しか取り柄が無いから。
「だからね、もうギルドは入らないで良いかなって。でも、あの赤髪馬鹿が試験参加するとか言うから心配で見に来たら、何だか楽しそうなあんた達が居て……」
「もう素直に言ったら? 楽しかったんでしょ、私達と行動していたの」
「見透かさないでよ。そう、だからギルドに入りたい……と思う反面」
「ーー怖くて逃げる自分も居るのね」
「ことごとく、締めを奪っていくわね……」
アリアータはため息を吐く。
「でもね~」
「ん?」
「入ったところで……なの。私の名前は、アリアータ。アリアータは月ーーでも、私は輝くことのできない、太陽がいない宇宙でただ浮遊するだけの球体なのよ」
「……はあ」
今度は私がため息を吐いてしまった。
アリアータは確かに、月で間違いない。
輝いていない月ーーまだ、輝かことができない月。
しかしそれは、太陽がいないからであり誰かが月を照らしてあげれば良いだけのことだ。
「ーーなら私達が太陽よっ!! 月がまだ輝けていないのなら、私達太陽が宇宙の何処を浮遊していようと見つけて照らすのっ!! 私はリーダーよ、それくらい簡単だわ」
私は気づいたら立ち上がり、アリアータの前に立って腰に手を当てていた。
えらっそうーーと、思われるかもしれない。
確証のない話だけど、それでも自信はある。
私はアリアータと月の間にいて、月明かりを背中から受けて影をつくっていた。
アリアータは目を見開き、驚きと同時に少量の涙を溢した。
「いつまでも逃げない。輝くわよみんなでーー世界に!」
「ええ、ええそうね! リリー、ううんリーダー。乗ったわっ!!」
私が手を伸ばすと、アリアータは涙を拭ってから手を取ってくれた。
「……前に進む」
「うん、怖くない」
「「夢は叶えるためにーー見るってね!」」
アリアータの満面の笑顔に、私も笑顔を返した。
すると、私の背中を照らしていた月が、真上に昇り出した。
斜めにでなく、真っ縦に。
「月が……」
「応援しているのよ、同じ月を。照らしてくれているのよ、新しい旅路についた、あんたのその勇気の一歩に」
「昨日のーー」
「ああ、昨日のな。『ローズ』ってまた、大物が出てきてビックリしたな。何でも、最近ではローズ様の方は要注意人物として国連騎士省で取り上げられてるしな」
「はい、祝の料理と飲み物だみんな。しかし、ギルド『ローズ』がら戻っていてとはーーこりゃ、また国が動く時かね」
バーのカウンターで、私達は一人一品、好きな食べ物を選ばせてもらい、マスターとの約束通りタダ飯食らいをしている。
マスターがおまけで、好きな飲み物を無料で付けてくれた。
私とネネは、ここで出会った。そして、シュートとアリアータは、試験で出会った。
問題なく私達は、仲良くやれた。それは似た者同士が集まっていたからもしれない。
試験から帰ると、ゲートの前でマスターは待ってくれていた。
私を見るとすぐに、頭に手を乗せ、
『ーー頑張ったな、お嬢ちゃん』
と、言って微笑んでくれた。
それで、私が仲良くなったメンバー全員が今こうしてただ飯を食べている訳でーー。
しかしそれでも、昨日の突然現れたギルド『ローズ』のリーダーと副リーダー、ローズとベルクのことが私達四人の頭からは離れず、最悪の意味で印象強く残っている状態だった。
「さて、『ローズ』と言えば、実は昔。最弱ギルドと呼ばれていたんだ」
「「え?」」
前みたく、コップを拭きながらマスターはそう言った。
私達は信じられず、素直に驚いた。
あの世界三大ギルドに入る『ローズ』が、かつては最弱ギルドだった事実ーー誰が信じるだろうか。
いや、確実にーー誰も信じないはずだ。
それでも、私達は信じた。だからこそ、全員で驚いてしまった。
マスターは嘘をつくような人間でないこと、ここ集会場に集う皆が知っている。
マスターの言うことは嘘ではない。それに、マスターの見た目年齢からするに、ちょうど『ローズ』が設立された頃、丁度騎士団に所属していたと考えて良い。
もしかしたら、集会場でマスターを既にしていたかもしれないが、どちらにせよ、このバルテン王国で生まれたギルドの始まりから知っていて当然だ。
「最弱と言っても、ただ弱い訳ではなかった。ローズのメンバーは多過ぎた。ために、一人一人が力を押し殺してギルドに居たんだ。だけど、ローズは我慢ならず、自分と本気で戦って最後まで立っていた者達をメンバーとして迎え、倒れた者達は即刻ギルド脱退を命じたーー結果が、今の『ローズ』。バルテン王国が誇る最強の四人組だね」
「いや、でもさーーなら、何で二人だけ試験に紛れ込んだんだ?」
「君はシュート君だったね。紛れ込んではいないさ、ただ、君達の面を拝みに、頃合いを見計らって幻影魔法なんて使って接近したはずだ。ローズはね、気が短い女だからね、絶対に紛れ込むことはしないはずだーーいや、するはずがない」
「だけどおっさん。不思議ならねーよ、あんな奴らがどうして、戻ってきては無名の俺達を見に来たんだ?」
「それは多分ーーいや、それ私にも分からない。すまないね」
今、マスターは重要なことを言おうとした。
「ちぇー。分かんねーのかよ」
しかしシュートはラガーを飲みながら、マスターを頼りないとばかりに細い目で見ているが、私としてはもう一押ししてほしいところだ。
だが、この男も大概の馬鹿だ。マスターの分からんないを、真に受けて一押しどころから一引きした。
さて、マスターが何を言いたかったのかは、この際置いておくとして、もちろん『ローズ』の一件もだ。
私達が先に考えるべきは、離れるかーーこのまま居るか。
試験が強制終了したあと、ドレインの効果で半日程度魔法の使えなかった私達同様の冒険者達は、その時組んでいたメンバーで基本的にギルドを設立している。
私達くらいが、こうしてまだフリーのまま残っている。
「ーーさて、話題転換よ。ギルドをどうするかーーってことに」
「うーん、それよねー」
アリアータは、ワイングラスを揺すりながら目を細めた。
もしかすると、私達との行動がアリアータには合わなかったのかもしれない。
ただ、大人の常識として、我慢するところをしていただけーー笑顔を見せていただけなのかもしれない。
ワイングラスをゆっくりと置くと、アリアータは鞘を握って席から立ってしまう。
私は止めようと手を伸ばす。しかし、私に止める権利は無かった。
「ーーアリアータはな、ああ見えて、暗い過去持ってるからな。まあ、追い掛けなくても戻ってくると思うぜ」
「……」
「お前もお前だなリリー。俺達は気が済むまで飲んでるから、早く連れ戻すなら連れ戻しにいけって、リーダー」
「……シュート」
「おーいおっさん、ラガーおかわり」
シュートが横目で、私に「行け行け」と言う。
私は迷わず、席を立ってアリアータの後を追うことにする。
多分彼女は、月を見ているーー。
バルテン王国で、アリアータとは月を意味するから。なんて、私も大概馬鹿なのだ。
「シュート君、君はリリーちゃんを気に入っているみたいだね」
「プライベートに首突っ込むなよおっさん。別に……ただ、俺はあいつにーー」
「言わなくて良いんだよ」
「ーーん? 二人、何か言った?」
「「何も」」
シュートとマスターが、私の名前を出した気がして振り返る。
でも私の空耳だったのか、いや、私の名前が出ただけで内容は大したことないようで。二人は首と、手を振ってくる。
私は二人に手を振られながら、とりあえず、アリアータの元へ向かうこととする。
集会場の外へ出て、ベンチに腰掛けていないことを確認してから、帰ったなんて最悪のパターンを想像しながらもとりあえず辺りを見渡してみる。
すると、集会場の屋上へ登るために誰かが立てたハシゴがあった。
ハシゴを試しに登ってみるとそこにアリアータは居た。
膝を抱え、しんみりとした空気を放っている。
ちなみに、私の馬鹿な考えは合っていた。月をチラチラと何度も見ている。
「ーーアリアータ」
「……リリー。追い掛けて来たんだ」
「そうね。月が月を、自分で自分の姿を見つめているところを見に来てあげたわ。何? 考え事?」
「そうかも。流石リーダーね、良く分かってる」
アリアータは足を伸ばし、その横に私は腰を下ろした。
一般的に考えて、育ちは私の方が良いはずなのに、胡座をかいてしまうのは多分、王族の縛りから解き放たれた反動だった。
アリアータと二人で、少しの間沈黙の中で涼しい風を肌で感じながら月を見上げていた。
私から聞くことはしない。
アリアータは長いこと黙っていたが、しかし、諦めたのか、口を開くのは案外とすんなり渋る様子も無くだった。
「私ね、前ギルドに所属していたの。冒険者なりたての三年前。だから、十七歳の時のこと」
「へえ~十七歳から冒険者してたのね」
「まあね? それで、ギルドに入ったは良いものの、今では魔法が全てになって、私みたいな剣を振ることしか脳のない時代遅れは強制脱退されてーーだからこうして、今は一人な訳よ」
「強制脱退ねえ……私は、別に時代遅れでも古臭くても、一つのことを捨てずに持ち続けるアリアータを尊敬するけど。だって、それでも剣を捨てなかったのでしょう?」
「それは……そうね。だって、私の剣術は父から受け継いだ形見だから。魔法に転身する気は起こらなかったわあ。だから、更に剣術を極めて魔法適正値をカバーすることができた。私が前居たギルドは『クイーン』なの。知ってるでしょ?」
ギルド『クイーン』は、そのメンバー全員が女しかおらず、それもかなりのやり手ばかりで有名だ。
『クイーン』はレベッカも昔話していた覚えがある。確か、闘技場でのバトルロワイヤルにチーム戦参加して、クイーン四天王と呼ばれる四人だけで闘技場諸々破壊した荒くれ者達とも。
『クイーン』と言う割には、男よりも荒々しい気がするギルド。
そこに居たとなれば、当時でもそれなりにアリアータは強かったことになる。
しかしそれでも強制脱退させられた。剣しか取り柄が無いから。
「だからね、もうギルドは入らないで良いかなって。でも、あの赤髪馬鹿が試験参加するとか言うから心配で見に来たら、何だか楽しそうなあんた達が居て……」
「もう素直に言ったら? 楽しかったんでしょ、私達と行動していたの」
「見透かさないでよ。そう、だからギルドに入りたい……と思う反面」
「ーー怖くて逃げる自分も居るのね」
「ことごとく、締めを奪っていくわね……」
アリアータはため息を吐く。
「でもね~」
「ん?」
「入ったところで……なの。私の名前は、アリアータ。アリアータは月ーーでも、私は輝くことのできない、太陽がいない宇宙でただ浮遊するだけの球体なのよ」
「……はあ」
今度は私がため息を吐いてしまった。
アリアータは確かに、月で間違いない。
輝いていない月ーーまだ、輝かことができない月。
しかしそれは、太陽がいないからであり誰かが月を照らしてあげれば良いだけのことだ。
「ーーなら私達が太陽よっ!! 月がまだ輝けていないのなら、私達太陽が宇宙の何処を浮遊していようと見つけて照らすのっ!! 私はリーダーよ、それくらい簡単だわ」
私は気づいたら立ち上がり、アリアータの前に立って腰に手を当てていた。
えらっそうーーと、思われるかもしれない。
確証のない話だけど、それでも自信はある。
私はアリアータと月の間にいて、月明かりを背中から受けて影をつくっていた。
アリアータは目を見開き、驚きと同時に少量の涙を溢した。
「いつまでも逃げない。輝くわよみんなでーー世界に!」
「ええ、ええそうね! リリー、ううんリーダー。乗ったわっ!!」
私が手を伸ばすと、アリアータは涙を拭ってから手を取ってくれた。
「……前に進む」
「うん、怖くない」
「「夢は叶えるためにーー見るってね!」」
アリアータの満面の笑顔に、私も笑顔を返した。
すると、私の背中を照らしていた月が、真上に昇り出した。
斜めにでなく、真っ縦に。
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