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Karte8: 風邪って他人にうつすと治るよね
第35話 喧嘩
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――それから数日後。
「ねぇ、エド?」
「――却下」
「ちょっと、まだ何も言ってないでしょ」
アリサさんが薬草を採りに出掛けたある日の午後。エドと二人で店番をしながら調薬室の掃除をしていた時です。
「まだ何も言ってないのにその反応はナシでしょ」
「その顔はろくなことを考えていない顔だから」
「えー、その言い方は酷いんじゃない」
「じゃあ、試しに言ってみろよ」
「一緒に暮らさない?」
「却下」
「即答⁉」
せめて少しくらい考えて答えてよ。こんな可愛い子の提案をどうして即却下できるのよ!
「なぁ、ソフィー?」
「なによ」
「おまえ、また自分のことを『可愛い子』って思っただろ」
「何でわかったの⁉」
「顔に出てるから。一年も一緒にいたら分かるから。そもそも何で一緒に暮らさなきゃいけないんだよ」
「一緒に住んだ方が楽しいと思うよ?」
「24時間一緒は疲れる。そういや、俺が風邪ひいた後からなんか変だったな」
「そ、それは……」
エドってもしかして勘が良いのかな。二人で住んだ方が何かと都合が良いと思ったんだけどなぁ。
「あのなぁ……」
「なに?」
「確かに俺ん家は一人だけどさ、だからって一緒に暮らそうとか何考えてるんだ」
「だってそっちの方が都合良いでしょ。食事の用意や洗濯、全部分担できるんだよ」
「確かにそれは魅力的だけどさ――」
「だから一緒に暮らそうよ。ね?」
「『ね?』じゃねぇよ。だいたい、ソフィーは不用心過ぎるんだよ」
「だからそれはエドだから――」
「――そういうこと言ってんじゃねぇよ」
「エド?」
「おまえ、熱発疹の時のこと覚えてるか。俺が夜中にここ来た時すぐ鍵開けたよな」
「あ、あれはエドの声がしたから……」
「夜中だぞ? ちょっとは警戒しろよ」
「してるよ! 私だってエドの声がしなかったら開けてないよ!」
「さぁどうだか。おまえ、急患って言葉に弱いからな。急患だって聞けばすぐ開けたんじゃないのか」
「なによその言い方!」
「っ⁉ ソフィー?」
「その言い方はあんまりだよっ」
なによ。薬師なんだから仕方ないじゃない。あの時、すごく怖かったけどエドの声がしたからすごく安心したのに、それなのに――
「……エドの声がしてすごく安心したのに」
「ソフィー?」
「なんで分かってくれないのよ!」
「わ、悪かった。そんなつもりで言った訳じゃないんだ」
「もういいよっ!」
私は調薬室を飛び出すとそのまま自室に引き籠りました。ものすごいショックでした。エドって私のことそう思ってたんだ。背後でエドの呼ぶ声がするけど知らない。エドの顔なんか見たくもない。
私だってちゃんと分別はつけているのに、エドのことを信頼しているから身構えずいられるのになんであんなこと言うのよ。
「……エドのバカ」
部屋の片隅で膝を抱え込む私の頬を涙が流れます。今日は誰とも会いたくありません。
「ねぇ、エド?」
「――却下」
「ちょっと、まだ何も言ってないでしょ」
アリサさんが薬草を採りに出掛けたある日の午後。エドと二人で店番をしながら調薬室の掃除をしていた時です。
「まだ何も言ってないのにその反応はナシでしょ」
「その顔はろくなことを考えていない顔だから」
「えー、その言い方は酷いんじゃない」
「じゃあ、試しに言ってみろよ」
「一緒に暮らさない?」
「却下」
「即答⁉」
せめて少しくらい考えて答えてよ。こんな可愛い子の提案をどうして即却下できるのよ!
「なぁ、ソフィー?」
「なによ」
「おまえ、また自分のことを『可愛い子』って思っただろ」
「何でわかったの⁉」
「顔に出てるから。一年も一緒にいたら分かるから。そもそも何で一緒に暮らさなきゃいけないんだよ」
「一緒に住んだ方が楽しいと思うよ?」
「24時間一緒は疲れる。そういや、俺が風邪ひいた後からなんか変だったな」
「そ、それは……」
エドってもしかして勘が良いのかな。二人で住んだ方が何かと都合が良いと思ったんだけどなぁ。
「あのなぁ……」
「なに?」
「確かに俺ん家は一人だけどさ、だからって一緒に暮らそうとか何考えてるんだ」
「だってそっちの方が都合良いでしょ。食事の用意や洗濯、全部分担できるんだよ」
「確かにそれは魅力的だけどさ――」
「だから一緒に暮らそうよ。ね?」
「『ね?』じゃねぇよ。だいたい、ソフィーは不用心過ぎるんだよ」
「だからそれはエドだから――」
「――そういうこと言ってんじゃねぇよ」
「エド?」
「おまえ、熱発疹の時のこと覚えてるか。俺が夜中にここ来た時すぐ鍵開けたよな」
「あ、あれはエドの声がしたから……」
「夜中だぞ? ちょっとは警戒しろよ」
「してるよ! 私だってエドの声がしなかったら開けてないよ!」
「さぁどうだか。おまえ、急患って言葉に弱いからな。急患だって聞けばすぐ開けたんじゃないのか」
「なによその言い方!」
「っ⁉ ソフィー?」
「その言い方はあんまりだよっ」
なによ。薬師なんだから仕方ないじゃない。あの時、すごく怖かったけどエドの声がしたからすごく安心したのに、それなのに――
「……エドの声がしてすごく安心したのに」
「ソフィー?」
「なんで分かってくれないのよ!」
「わ、悪かった。そんなつもりで言った訳じゃないんだ」
「もういいよっ!」
私は調薬室を飛び出すとそのまま自室に引き籠りました。ものすごいショックでした。エドって私のことそう思ってたんだ。背後でエドの呼ぶ声がするけど知らない。エドの顔なんか見たくもない。
私だってちゃんと分別はつけているのに、エドのことを信頼しているから身構えずいられるのになんであんなこと言うのよ。
「……エドのバカ」
部屋の片隅で膝を抱え込む私の頬を涙が流れます。今日は誰とも会いたくありません。
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