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Karte9:ただいまです 前編
第37話 一人旅の始まり
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3月も下旬に差し掛かった。ある日の朝です。
「それじゃ、薬局の方はお願いしますね」
「急患はハンス殿の診療所へ運べば良いのだな?」
「はい。ハンスさんには事前に連絡してあるので。エドもしっかり店番お願いね」
「ほんとに付いて行かなくて良いのか」
「うん。今回は日程が長いからね。薬局の方をお願いするよ。それとも、そんなに私と一緒が良いの?」
「バートさん、そこの薬師さっさと馬車に積んじゃってください」
「その言い方はひどくない⁉」
「ソフィーが悪いんだろ」
「だからって人を荷物みたいに言わないでよっ」
「まったく――二人とも、バート殿を待たせているんだ。そのくらいにしないか」
つい口喧嘩を始めてしまう私たちを前にアリサさんが呆れ顔で仲裁に入る。その近くではバートさんが馬車に寄り掛かり、リンゴを齧りながら楽しそうにこちらを見ています。
「嬢ちゃんたちはほんと仲良いな。そろそろ出ないと王都行きの馬車に間に合わないぞ」
「は、はい。それじゃ、二人とも。お店の方はお願いしますね」
「ああ。久しぶりの王都なんだ。ソフィーもゆっくりして来いよ」
「ありがとね。それじゃ行ってきます」
見送るエドたちに軽く手を振って馬車に乗り込む私。バートさんの馬車には何度も乗ったことがあるから楽に乗り込める。
エルダーから馬車を乗り継ぎ10日以上掛かる王都、リンデンバウムへ行く理由はただ一つ。商売道具ともいえる薬師免状の更新をするためです。
(王都かぁ。なんだかんだ言って一度も帰ってなかったね)
考えてみれば免状の更新の為とはいえ、王都に戻るはここに来て初めて。里帰りに少し浮かれている自分がいるのは言うまでもありません。
私たち薬師がその証として授けられる免状は年に一度、王都にある薬師協会で更新手続きをしなければただの紙切れと化してしまいます。当然免状がなければ薬師を生業には出来ません。だから年に一度、王都に戻って更新手続きを受けるのが薬師の常識なのです。
「すみません。まだ朝早いのに馬車を出してもらって」
「ちょうどセント・ジョーズ・ワートへ仕入れに行く用事があったんだ。気にするな。それにしてもさ――」
「はい?」
「嬢ちゃんと坊主はほんと仲良いよな」
「そうですか?」
「ああ。昔の俺とリゼを見てるみたいだ。嬢ちゃんたち位の時は二人でよく喧嘩したもんだ」
「昔から知り合いだったんですか」
「ああ。俺とリゼは幼馴染なんだ。ガキの頃からなんかあれば喧嘩してたな」
最後はいつもリゼが勝っていたと苦い笑いをするバートさんはどこか楽しそう。なんとなく羨ましく思えるのは幼馴染と言える人がいないからかな。
「そういや、この間エドと喧嘩したらしいじゃないか」
「え? ああ、知ってたんですか」
「アリサの嬢ちゃんが家賃払いに来た時に言ってたんだ」
「お恥ずかしい限りです――家賃?」
「知らないのか? 毎月遅れることなく払いに来るぞ」
そうだ。アリサさんはバートさんが管理する空き家だった家に住んでるんだった。
「俺としては住んでくれるだけで十分なのによ、毎月きっちり家賃を払ってくれるんだ。大したもんだよ」
「その分のお給金は払ってますし、家賃の不払いなんかされたら雇い主の私が困ります」
「ハハ。そりゃ違いねぇな。朝早いし、眠たくないか? 昨日も遅くまで薬作ってたんだろ」
「大丈夫ですよ。調薬や勉強で遅くなるのはいつもことですから」
「気にせず寝てくれても良いからな」
「ありがとうございます」
大丈夫と言ったものの、今日はまだ眠い。しばらく薬局を空けることになるから必要と思われる薬を一通り作って、今日の準備をしていたら朝になってたからね。寝たのって1時間くらいかな。
(……馬車の揺れってなんだか眠くなるよね)
ゴトゴトと揺れる馬車の中で欠伸を堪える私。寝不足の私を気遣ってなのかバートさんはそれから話し掛けてくることなく、いつのまにか寝てしまった私でした。
「それじゃ、薬局の方はお願いしますね」
「急患はハンス殿の診療所へ運べば良いのだな?」
「はい。ハンスさんには事前に連絡してあるので。エドもしっかり店番お願いね」
「ほんとに付いて行かなくて良いのか」
「うん。今回は日程が長いからね。薬局の方をお願いするよ。それとも、そんなに私と一緒が良いの?」
「バートさん、そこの薬師さっさと馬車に積んじゃってください」
「その言い方はひどくない⁉」
「ソフィーが悪いんだろ」
「だからって人を荷物みたいに言わないでよっ」
「まったく――二人とも、バート殿を待たせているんだ。そのくらいにしないか」
つい口喧嘩を始めてしまう私たちを前にアリサさんが呆れ顔で仲裁に入る。その近くではバートさんが馬車に寄り掛かり、リンゴを齧りながら楽しそうにこちらを見ています。
「嬢ちゃんたちはほんと仲良いな。そろそろ出ないと王都行きの馬車に間に合わないぞ」
「は、はい。それじゃ、二人とも。お店の方はお願いしますね」
「ああ。久しぶりの王都なんだ。ソフィーもゆっくりして来いよ」
「ありがとね。それじゃ行ってきます」
見送るエドたちに軽く手を振って馬車に乗り込む私。バートさんの馬車には何度も乗ったことがあるから楽に乗り込める。
エルダーから馬車を乗り継ぎ10日以上掛かる王都、リンデンバウムへ行く理由はただ一つ。商売道具ともいえる薬師免状の更新をするためです。
(王都かぁ。なんだかんだ言って一度も帰ってなかったね)
考えてみれば免状の更新の為とはいえ、王都に戻るはここに来て初めて。里帰りに少し浮かれている自分がいるのは言うまでもありません。
私たち薬師がその証として授けられる免状は年に一度、王都にある薬師協会で更新手続きをしなければただの紙切れと化してしまいます。当然免状がなければ薬師を生業には出来ません。だから年に一度、王都に戻って更新手続きを受けるのが薬師の常識なのです。
「すみません。まだ朝早いのに馬車を出してもらって」
「ちょうどセント・ジョーズ・ワートへ仕入れに行く用事があったんだ。気にするな。それにしてもさ――」
「はい?」
「嬢ちゃんと坊主はほんと仲良いよな」
「そうですか?」
「ああ。昔の俺とリゼを見てるみたいだ。嬢ちゃんたち位の時は二人でよく喧嘩したもんだ」
「昔から知り合いだったんですか」
「ああ。俺とリゼは幼馴染なんだ。ガキの頃からなんかあれば喧嘩してたな」
最後はいつもリゼが勝っていたと苦い笑いをするバートさんはどこか楽しそう。なんとなく羨ましく思えるのは幼馴染と言える人がいないからかな。
「そういや、この間エドと喧嘩したらしいじゃないか」
「え? ああ、知ってたんですか」
「アリサの嬢ちゃんが家賃払いに来た時に言ってたんだ」
「お恥ずかしい限りです――家賃?」
「知らないのか? 毎月遅れることなく払いに来るぞ」
そうだ。アリサさんはバートさんが管理する空き家だった家に住んでるんだった。
「俺としては住んでくれるだけで十分なのによ、毎月きっちり家賃を払ってくれるんだ。大したもんだよ」
「その分のお給金は払ってますし、家賃の不払いなんかされたら雇い主の私が困ります」
「ハハ。そりゃ違いねぇな。朝早いし、眠たくないか? 昨日も遅くまで薬作ってたんだろ」
「大丈夫ですよ。調薬や勉強で遅くなるのはいつもことですから」
「気にせず寝てくれても良いからな」
「ありがとうございます」
大丈夫と言ったものの、今日はまだ眠い。しばらく薬局を空けることになるから必要と思われる薬を一通り作って、今日の準備をしていたら朝になってたからね。寝たのって1時間くらいかな。
(……馬車の揺れってなんだか眠くなるよね)
ゴトゴトと揺れる馬車の中で欠伸を堪える私。寝不足の私を気遣ってなのかバートさんはそれから話し掛けてくることなく、いつのまにか寝てしまった私でした。
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