39 / 52
Karte10:ただいまです 後編
第40話 久しぶりの王都
しおりを挟む
王都に到着したのはエルダーを出て10日目の昼過ぎ。馬車を降りたのは王宮の北側にある馬車ターミナル。広場のようになったターミナルは王宮を囲うように配された環状道路と一体になっており、この道路を中心に東西南北に大通りが伸びています。
「えっと、協会は南通りの入り口にあるから――」
久しぶりの王都に気持ちが昂る私だけど、まずは一番の目的である免状の更新をしないと。王宮に沿って反時計回りに歩けば南通りに出るし、ここからなら協会までそんなに距離もないからこのまま歩いて行こうかな。
(ここから薬師協会までなら馬車を使う必要はないよね)
荷物と言えるものはトラベルバッグだけなので歩いて協会へ行くことにした私。リンデンバウム最大の街とあって人も馬車も多く、なによりとても賑やかです。
「そういえばお昼食べてなかった。なんか買っちゃおうかな」
ご飯時だからかな。道の左右にはパンやサンドウィッチを屋台が多く出ていました。中にはスープやパスタといった手の込んだものを売る店もあり、他の街では見かけない王都ならではの光景です。
城壁で囲まれた『都市』と呼ばれる街の主だった通りには露店が多く並んでいます。セント・ジョーズ・ワートにも当然あるけど、王都はその数がけた違いに多く業種も様々が特徴。食べ物を売る店はもちろん、花や雑貨を売る店もあります。市場に近いところだと薬草を売る露店もあるらしいけど、師匠からは質が悪いから買ってはいけないと言われたっけ。
「セント・ジョーズ・ワートも華やかだけど、やっぱり王都は違うね。そうだ。あとであの店にも行こうかな」
あの店とは師匠の薬局と同じ東通りにあるお菓子屋さん。そこのクッキーが私のお気に入りで王都にいる頃はよく買ってました。せっかくだからアリサさんへお土産に買っていこうかな。エドの分は……可哀そうだから買ってあげるか。
「エドは食べれるなら何でも良いってところがあるからね。きっとありがたみの欠片もなく食べちゃうよね」
この間、セント・ジョーズ・ワートで買ってきた焼き菓子も「ソフィーが作るのと変わんねぇ」とか言って一気に食べちゃったし、少しは味わって食べてほしいよね。
「それにしても、ほんと人多いよねぇ」
ほんの一年前まではこの大都市で過ごしていた私だけど人の多さに圧倒されてしまいます。
「これだけ人がいるとちょっと騒々しいね」
皆が顔見知りでゆっくりと時間が流れる村の雰囲気とは違うこの空気感。王宮という国の中枢が近くにあるせいかもしれないけどすれ違う人は皆どこか忙しそうに見える。
(――あ、警備の兵だ)
王都、特に王宮の周辺は近衛兵をはじめ多くの兵士が警備に当たっています。国王の住まいがあるのだから当然だけど、甲冑を纏った兵士って結構威圧感があるんだね。
(一年離れただけでこんな風に思うなんて――やっぱり私も変わったのかな)
村とは違って欲しいものがすぐ手に入る暮らしは便利だし、この街が私の故郷だからほんの数日でも帰って来れたのは嬉しい。だけど――
「――村の方が好きかな」
王都に住んでいた私が言えることじゃないけど、エルダーでの暮らしの方が合ってると思う私がいました。
「えっと、協会は南通りの入り口にあるから――」
久しぶりの王都に気持ちが昂る私だけど、まずは一番の目的である免状の更新をしないと。王宮に沿って反時計回りに歩けば南通りに出るし、ここからなら協会までそんなに距離もないからこのまま歩いて行こうかな。
(ここから薬師協会までなら馬車を使う必要はないよね)
荷物と言えるものはトラベルバッグだけなので歩いて協会へ行くことにした私。リンデンバウム最大の街とあって人も馬車も多く、なによりとても賑やかです。
「そういえばお昼食べてなかった。なんか買っちゃおうかな」
ご飯時だからかな。道の左右にはパンやサンドウィッチを屋台が多く出ていました。中にはスープやパスタといった手の込んだものを売る店もあり、他の街では見かけない王都ならではの光景です。
城壁で囲まれた『都市』と呼ばれる街の主だった通りには露店が多く並んでいます。セント・ジョーズ・ワートにも当然あるけど、王都はその数がけた違いに多く業種も様々が特徴。食べ物を売る店はもちろん、花や雑貨を売る店もあります。市場に近いところだと薬草を売る露店もあるらしいけど、師匠からは質が悪いから買ってはいけないと言われたっけ。
「セント・ジョーズ・ワートも華やかだけど、やっぱり王都は違うね。そうだ。あとであの店にも行こうかな」
あの店とは師匠の薬局と同じ東通りにあるお菓子屋さん。そこのクッキーが私のお気に入りで王都にいる頃はよく買ってました。せっかくだからアリサさんへお土産に買っていこうかな。エドの分は……可哀そうだから買ってあげるか。
「エドは食べれるなら何でも良いってところがあるからね。きっとありがたみの欠片もなく食べちゃうよね」
この間、セント・ジョーズ・ワートで買ってきた焼き菓子も「ソフィーが作るのと変わんねぇ」とか言って一気に食べちゃったし、少しは味わって食べてほしいよね。
「それにしても、ほんと人多いよねぇ」
ほんの一年前まではこの大都市で過ごしていた私だけど人の多さに圧倒されてしまいます。
「これだけ人がいるとちょっと騒々しいね」
皆が顔見知りでゆっくりと時間が流れる村の雰囲気とは違うこの空気感。王宮という国の中枢が近くにあるせいかもしれないけどすれ違う人は皆どこか忙しそうに見える。
(――あ、警備の兵だ)
王都、特に王宮の周辺は近衛兵をはじめ多くの兵士が警備に当たっています。国王の住まいがあるのだから当然だけど、甲冑を纏った兵士って結構威圧感があるんだね。
(一年離れただけでこんな風に思うなんて――やっぱり私も変わったのかな)
村とは違って欲しいものがすぐ手に入る暮らしは便利だし、この街が私の故郷だからほんの数日でも帰って来れたのは嬉しい。だけど――
「――村の方が好きかな」
王都に住んでいた私が言えることじゃないけど、エルダーでの暮らしの方が合ってると思う私がいました。
8
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる