(アルファ版)新米薬師の診療録

織姫みかん

文字の大きさ
44 / 52
Special Episode:私とアリサさん

第45話 お姉さん?

しおりを挟む
 
 宿のご主人に教わった浴場は歩いて5分ほどと近場にある公衆浴場。入湯料を払えば誰でも入れる温泉施設らしく、大小さまざまなお風呂があるけど温泉の効能としてはどれも同じだそうです。
 「このとろみのあるお湯はなかなか良いものだな」
 「そうですね。それに硫黄のにおいはこのお湯が原因みたいですね」
 「これが美肌効果の正体なのか?」
 「うーん。断言はできませんが普通のお湯とは違いますし、なにかしらの影響はあるかもそれませんね」
 硫黄には殺菌効果があって皮膚病の治療薬の材料になるけど私は使わないし、それだけがこの温泉の秘密とは考えにくいな。この肌に纏わりつくようなとろみのあるお湯にも秘密があるような気がします。もしかしたら硫黄がお湯に溶けてこのぬめりを生み出しているのかもしれないね。それにしても……
 (納得いかないんですけどっ)
 隣でお湯を愉しむアリサさんをじっと見つめる私。見つめる先はただ一点、その明らかにスケール違いな胸。オイスターモドキの時に気付いたけどアリサさんって着やせするタイプなんだよね。
 「ソフィー殿。その、あまりジロジロ見ないでくれないか」
 「……納得いきません」
 「そう言われてもなぁ……」
 「教えてくださいっ。どうしたらそんなに大きくなるんですか!」
 「落ち着け。こればかりはなんとも……ああもう。そんな顔するな。ソフィー殿はそのままで良いと思うぞ」
 「嫌味ですか⁉」
 「落ち着け。ソフィー殿は新米薬師にしては十分すぎる知識や判断力がある。それに人となりは申し分ない。アタシはそんなソフィー殿が羨ましいぞ」
 「ぺったんこなのに⁉」
 「ソフィー殿、他人を容姿で判断するのは簡単だ。しかしな、容姿に囚われず、人となりを見てくれる相手の方がソフィー殿を幸せにしてくれると思うぞ」
 なんか話をはぐらかされている気がする。だけどアリサさんの言葉にはそんな私の感情を打ち負かすだけの説得力がありました。
 アリサさんは私より4つ上でそれだけ経験を積んで価値観を作り上げてきたんだと思う。私はそれを否定しないし、むしろ共感できるというか余裕の表情すら見せるその姿がちょっとだけ羨ましかったりします。
 「アリサさんって、なんかお姉さんみたいですね」
 「ソフィー殿は一人っ子ではなかったか?」
 「そうですよ。でも、お姉さんがいたらこんな感じなのかなって」
 「母親と言われるよりマシか。ま、アタシも同じような感じだ。妹がいればこんな風に手を焼くんだろうなってな」
 「私、そんなに手を煩わしてますか」
 「たまにだけどな。でも、それはそれで楽しいから気にするな」
 ニコッと微笑むアリサさんはやっぱり大人だ。いつも優しく、時には厳しく諭してくれるアリサさん。私もいつかはアリサさんみたいな女性になりたいと思う温泉旅となりました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...