一番近くに。

沈丁花

文字の大きさ
22 / 68
一番近くに

僕の思い

しおりを挟む
ああ、そうか。そうだな。同じだったんだ。

「僕も多分、同じだと思う。」

「え?」

「ノアにアシュリーの話を聞いて自分が支えたかったって嫉妬した。

ピアスをあけてもらった日、アシュリーの真剣な表情が近くにあって顔が熱くなったし、その夜はずっとそのことを考えて眠れなかった。

ここ最近は食欲もないし、あんまり上手に眠れない。

アシュリーを独り占めしたい。でも僕といても幸せになれないなら、僕以外の人と幸せになってほしいと思う。」

最初からそうではなかったけれど、次第にきっと好きが色々な意味を持つようになっていた。中でも下に心がつく恋と真ん中に心のつく愛。その2つはどんどん色濃くなっていたのかもしれない。

だから、おそらく僕もアシュリーと同じ気持ちでいた。

目の前でアシュリーは、信じられないというような顔をしている。今日の彼はなんだかすがるような目で見てきたり、泣きそうな顔をしたり、目を丸くして驚いたり、表情がコロコロ変わって忙しい。

そして、立ち上がると、ベッドに座っているような状態の僕を、横からぎゅっと抱きしめた。

「ごめん、テオ、それは本当?」

「ねえ、テオ、

…俺はテオがいないと幸せじゃない。恋人としても、家族としてもずっと一緒にいてくれる?」

あんなにずっと一緒にいる約束を何度も確認するようにさせたのに、それでもなお不安そうに尋ねてくるところが可愛い。

「もちろん。それにずっと一緒にいたいのは、僕の方が上だから。

…1ヶ月の間、一回も来なかったの、すごく辛かった。」

また無邪気な笑みが戻る。

口元を緩めて、目を細めて、顔がくしゃっと崩れるように笑う姿は、一番初め出会ったときに見たまるで作られたような美しい笑みに比べて、もっとずっと魅力的だと思った。

かと思うと、今度はピアスをあけたあの時のような表情をした彼が言った。

「テオ、ごめん。我慢できない。キスしていい?」

そんな顔をされてノーと言えるわけがない。

黙って承諾の意味を込めて目を瞑ると、静かで丁寧に口付けられた。お互いのピアスが触れて小さく音がなる。

長い口づけの間僕は、静かに丁寧にされたのに、ノアの時とは違い爆発しそうな鼓動を、彼に聞かれないようにと心から願っていた。

長く静かな口づけが終わると、アシュリーはまたベッドの横の椅子に腰かけ、赤みを帯びた顔を隠すように遠くを見ながら今度はテオの番だよ、と言った。

「ノアから聞いた。ノアの家に居た女の人と、何があったの?」

アシュリーにあんな告白をさせておいて、自分が黙っているのはアンフェアだろう。僕は覚えている限り全ての、アシュリーに助けられる前までの話をした。

途中からもう怯える必要のない終わった話なのに涙があふれ、アシュリーはずっと背中をさすりながら話を聞いてくれた。

「もちろんあんな状態で路地裏に捨てられていたから、きっと酷い扱いを受けてきたんだろうとわかっていた。でも、許されることじゃない。

それでも生きていてくれて、ありがとう。」

話を全て聞いた後、アシュリーはそう言って彼も涙を流した。震える僕を抱きしめながら、彼はありがとうを繰り返す。

話してくれてありがとう、生きていてくれてありがとう、俺を好きになってくれてありがとう、生まれてきてくれてありがとう、…

たくさんのありがとうは、きっとアシュリーになら辛かったね、と、同情されても嬉しかったと思うけれど、

それ以上にずっと嬉しくて、その1つ1つを噛み締めて、全部忘れないようにしようと思った。

この人が自分の恋人になると思うと、こんなに心が綺麗で大丈夫なのかと心配になる。

ありがとうはいくつも続き、いつか地球にまでありがとうなどと言い出しそうな勢いだ。

だから、アシュリーの口を優しく手で覆い、言葉を止めた。

「アシュリーこそ、出会ってくれてありがとう。」

この人となら、ずっと一緒にいたい。だから彼が望む限りずっと、側にいようと誓った。

恋人として、家族として。

1番近くに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

処理中です...