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エピローグ
家族の形は
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※授賞式の後、ノアの家でお祝いをするお話です
「アシュリー、大丈夫?ちょっと緊張してる?」
家を出る時は普通だったが、人通りの多い通りに出る直前になって彼がそわそわし始めた。
「だって、やっぱりこう…
何年振りかもわからないから、緊張もするよ。」
今日の彼は家にいる時と同じ。美しい金色の髪も、水色と青の混じった瞳も、陶器のように白い肌も、全てそのままだ。
「誰よりも綺麗だから、むしろ胸を張って歩いていい。」
「そんな、普通だよ。」
「そんなこと言ったらバチが当たる。新聞でも美しすぎるって書かれてたし、アシュリーに関する取材の依頼が殺到して断るの大変だったんだから。」
「それはテオのせいだし…」
またそんなことを言って。彼は自分の美しさに無頓着すぎると思う。
「でも綺麗なことに変わりはないでしょ?」
「…女たらしみたい。」
顔を真っ赤にして手で口と鼻を覆い隠す姿も絵になる。耳元のピアスが手で退けられた髪の間で強調され、美しく光っていた。
「女誑しはノア。僕はアシュリーだけだからいいの。まあ、そのノアも今は違うけど。」
「もともとあの人も見つけるのが遅かっただけだけどね。」
「それもそうだね。」
何気ない会話をしているうちに打ち解けたのか、商店街に入るあたりではアシュリーもいつも通りの様子に戻っていた。
周りからざわざわと聞こえる声は、冷たいものではない。ねえちょっとあの2人…と言った感じだ。
「あんなにみられると恥ずかしいよ。」
視線になれないからか、彼は明らかに足を早め、商店街をはやく抜けようとする。そんな姿が人間らしくて可愛いと思う。
今日は、ノアの家で受賞のお祝いをするために外に出た。あのあと記事を読んだノアから散々
「テオは大胆になったなー。昔は性教育さえちゃんとされてなかった子供だったのに。」
などと、関係ないことで無限にからかわれたのは別の話だ。人通りの多いところを抜け、ノアの部屋のベルを鳴らす。
「いらっしゃい。テオ、アシュリーさん。」
迎えてくれたのはカルロさん。今は緩くウェーブした美しい栗色の髪を肩下まで伸ばしている。
今日はスーツではないけれど、相変わらず自分に似合う服を着ていて、一つ一つの仕草はとても美しく映る。少し動くだけでサラサラと音がしそうなほど揺れる髪も、きっととても気を使っているのだろう。
「これ、差し入れです。」
手ぶらで行くのもなんだから、アルコール度数の低めのワインを持ってきた。甘くて飲みやすく、あまり強くない僕とカルロさんでも楽しめるもの。
「今日はテオのお祝いなんだから気を使わなくていいのに。」
彼の微笑みも、随分と柔らかくなったと思う。初めて見た頃はあんなに、どこか寂しそうだったのに。
ノアは奥で料理をしている。すでにテーブルにはいくつかの色とりどりのディッシュが並んでいて、見るからに美味しそうだ。やっぱりノアの作るものは洒落ている。
「ちょっとテオ、手が離せないからあっちの味付け手伝って。」
ノアは急いでいたのか2つの手鍋を同時に火をかけ、そして片方をフランベしようとしている。もう片方は確かにもうほぼ完成で、最後に少し味付けをすればおしまいといった感じ。
「今行く。」
キッチンに向かうと、カルロさんが止めに入る。
「主役にそんなことさせちゃダメだよ。」
「カルロは料理できないだろ。」
ノアが笑って言う。カルロさんに対してノアは、1番口調が柔らかく、砕けている。家族の誰としゃべっている時より幸せそうだ。
「それはっ…そうだけど、、、。」
「じゃあ俺がやるよ。」
口ごもるカルロさんの代わりにアシュリーが名乗り出た。
『アシュリー(さん)は座ってて!』
僕とノアが口を揃えて言うと、アシュリーが俺は主役でもないのにと口を尖らせて拗ねる。たまに見せる子供らしいところも、また愛おしいと思う。
そして手を洗ってノアの隣に行く。
「塩と胡椒だけでいい?」
「いや、少しバジルもかけて。」
「わかった。」
「ほんっとに、表情豊かになったよなー。お前。」
僕を横目にみながらノアが笑う。手が離せないなら目も離すな、というツッコミはやめておこう。
「変わったのはノアもでしょ。」
お互い様だ。ノアは無表情ではなかったが、今の彼を見ていて、ずっと見せてきたのは上っ面だけ貼り付けたようなものだったのだとわかった。
結局みんな、何かしら抱えているということなのだろう。
「ははっ。言えてる。」
雑に笑う笑い方さえも、前よりも色を帯びている気がする。彼もまた、子供のように素直な部分を得て一つ成長したのだと思う。
「できたよ。」
「こっちもできたから、並べるか。」
「じゃあ、テオの受賞を祝って。」
全ての料理を盛り付けて並べると、グラスにワインを注いで乾杯をした。
「それにしてもテオ、メディア騒がせるほど派手にやってくれるとか、ほんとっ…
すまん笑いが止まらないっ…」
いつまでこのネタを引きずられるのだろう。確かに引きずるぐらいのことをした僕も悪いけれど、言われすぎると恥ずかしくなる。
「だから笑いすぎだって。カルロさんも言ってあげてください。」
「ノア、人のこと笑いすぎると後で返っててくるよ。」
カルロさんの真剣に言う言葉は、ひどく説得力を帯びていて、聞いているこっちまで怖い。
「何それ、お前が言うと怖いっ!!」
ノアが本気で怯えて笑うのをやめる。
「感謝はしてるけど、いきなりされてびっくりしたよ。」
しかし今度はアシュリーが笑いながらからかってきた。
賑やかな食卓、温かい人達。誰も血は繋がってないけれど、こんな関係でさえ、家族だと思う。
そしてそれは、1番近くでずっと寄り添ってくれた、アシュリーのおかげだと、いつも思っている。
「アシュリー、大丈夫?ちょっと緊張してる?」
家を出る時は普通だったが、人通りの多い通りに出る直前になって彼がそわそわし始めた。
「だって、やっぱりこう…
何年振りかもわからないから、緊張もするよ。」
今日の彼は家にいる時と同じ。美しい金色の髪も、水色と青の混じった瞳も、陶器のように白い肌も、全てそのままだ。
「誰よりも綺麗だから、むしろ胸を張って歩いていい。」
「そんな、普通だよ。」
「そんなこと言ったらバチが当たる。新聞でも美しすぎるって書かれてたし、アシュリーに関する取材の依頼が殺到して断るの大変だったんだから。」
「それはテオのせいだし…」
またそんなことを言って。彼は自分の美しさに無頓着すぎると思う。
「でも綺麗なことに変わりはないでしょ?」
「…女たらしみたい。」
顔を真っ赤にして手で口と鼻を覆い隠す姿も絵になる。耳元のピアスが手で退けられた髪の間で強調され、美しく光っていた。
「女誑しはノア。僕はアシュリーだけだからいいの。まあ、そのノアも今は違うけど。」
「もともとあの人も見つけるのが遅かっただけだけどね。」
「それもそうだね。」
何気ない会話をしているうちに打ち解けたのか、商店街に入るあたりではアシュリーもいつも通りの様子に戻っていた。
周りからざわざわと聞こえる声は、冷たいものではない。ねえちょっとあの2人…と言った感じだ。
「あんなにみられると恥ずかしいよ。」
視線になれないからか、彼は明らかに足を早め、商店街をはやく抜けようとする。そんな姿が人間らしくて可愛いと思う。
今日は、ノアの家で受賞のお祝いをするために外に出た。あのあと記事を読んだノアから散々
「テオは大胆になったなー。昔は性教育さえちゃんとされてなかった子供だったのに。」
などと、関係ないことで無限にからかわれたのは別の話だ。人通りの多いところを抜け、ノアの部屋のベルを鳴らす。
「いらっしゃい。テオ、アシュリーさん。」
迎えてくれたのはカルロさん。今は緩くウェーブした美しい栗色の髪を肩下まで伸ばしている。
今日はスーツではないけれど、相変わらず自分に似合う服を着ていて、一つ一つの仕草はとても美しく映る。少し動くだけでサラサラと音がしそうなほど揺れる髪も、きっととても気を使っているのだろう。
「これ、差し入れです。」
手ぶらで行くのもなんだから、アルコール度数の低めのワインを持ってきた。甘くて飲みやすく、あまり強くない僕とカルロさんでも楽しめるもの。
「今日はテオのお祝いなんだから気を使わなくていいのに。」
彼の微笑みも、随分と柔らかくなったと思う。初めて見た頃はあんなに、どこか寂しそうだったのに。
ノアは奥で料理をしている。すでにテーブルにはいくつかの色とりどりのディッシュが並んでいて、見るからに美味しそうだ。やっぱりノアの作るものは洒落ている。
「ちょっとテオ、手が離せないからあっちの味付け手伝って。」
ノアは急いでいたのか2つの手鍋を同時に火をかけ、そして片方をフランベしようとしている。もう片方は確かにもうほぼ完成で、最後に少し味付けをすればおしまいといった感じ。
「今行く。」
キッチンに向かうと、カルロさんが止めに入る。
「主役にそんなことさせちゃダメだよ。」
「カルロは料理できないだろ。」
ノアが笑って言う。カルロさんに対してノアは、1番口調が柔らかく、砕けている。家族の誰としゃべっている時より幸せそうだ。
「それはっ…そうだけど、、、。」
「じゃあ俺がやるよ。」
口ごもるカルロさんの代わりにアシュリーが名乗り出た。
『アシュリー(さん)は座ってて!』
僕とノアが口を揃えて言うと、アシュリーが俺は主役でもないのにと口を尖らせて拗ねる。たまに見せる子供らしいところも、また愛おしいと思う。
そして手を洗ってノアの隣に行く。
「塩と胡椒だけでいい?」
「いや、少しバジルもかけて。」
「わかった。」
「ほんっとに、表情豊かになったよなー。お前。」
僕を横目にみながらノアが笑う。手が離せないなら目も離すな、というツッコミはやめておこう。
「変わったのはノアもでしょ。」
お互い様だ。ノアは無表情ではなかったが、今の彼を見ていて、ずっと見せてきたのは上っ面だけ貼り付けたようなものだったのだとわかった。
結局みんな、何かしら抱えているということなのだろう。
「ははっ。言えてる。」
雑に笑う笑い方さえも、前よりも色を帯びている気がする。彼もまた、子供のように素直な部分を得て一つ成長したのだと思う。
「できたよ。」
「こっちもできたから、並べるか。」
「じゃあ、テオの受賞を祝って。」
全ての料理を盛り付けて並べると、グラスにワインを注いで乾杯をした。
「それにしてもテオ、メディア騒がせるほど派手にやってくれるとか、ほんとっ…
すまん笑いが止まらないっ…」
いつまでこのネタを引きずられるのだろう。確かに引きずるぐらいのことをした僕も悪いけれど、言われすぎると恥ずかしくなる。
「だから笑いすぎだって。カルロさんも言ってあげてください。」
「ノア、人のこと笑いすぎると後で返っててくるよ。」
カルロさんの真剣に言う言葉は、ひどく説得力を帯びていて、聞いているこっちまで怖い。
「何それ、お前が言うと怖いっ!!」
ノアが本気で怯えて笑うのをやめる。
「感謝はしてるけど、いきなりされてびっくりしたよ。」
しかし今度はアシュリーが笑いながらからかってきた。
賑やかな食卓、温かい人達。誰も血は繋がってないけれど、こんな関係でさえ、家族だと思う。
そしてそれは、1番近くでずっと寄り添ってくれた、アシュリーのおかげだと、いつも思っている。
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