一番近くに。

沈丁花

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ss2「サンタさんの正体は」

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街を歩いていると、様々な模様、色に出会うことができる。

ひとえに黒といっても漆黒、青っぽいもの、灰色っぽいもの、赤っぽいものなど、様々なものがある。

そのたくさんの色から、どの色を使うのか考えるのが好きだ。少しだけ違う色をのぞかせる場合は、その組み合わせを選ぶのも楽しい。

色々な手芸店を回って生地を見て手で触り確かめると、これはこういうものに使いたいな、と色々なイメージが湧いてくる。

そう、あんな箱詰めの部屋で無から創り出そうなど自分には無理だった。

手芸店だけじゃない。文房具にワイン、チョコレート…

この日テオが新たに出会った色はたくさんあった。

「これください。」

見つけた中で一番使いたくなった色を持ち帰る。今日はチョコレートだった。ついでにアシュリーと夜食べるようにいくつか美味しそうなものをチョイスする。

「お客さん、可愛いからおまけ。」

店主は40台半ばくらいだろうか。ワインがよく似合う大人の男性、という印象。おそらくただちょっとセールストークをしただけだ。

ピカピカのオランジェットを二枚おまけしてくれた。いい人だ。

なのに、彼へのありがとうの声がこわばったのは、まぎれもない、本日3回目の男から言われるあのワードのせいだった。

「テオ、何か見つかった?」

退勤する社員さんたちに軽く会釈をしながら職場の自室に戻ると、ロナルドはまだそこにいた。大量の書類に目を通し、サインしたり捨てたりと、何やら忙しそうにしているが、テオが入ったことを察知すると何かいいものはあったかと、目を輝かせてこちらを見る。 

「見つけた。これ。」

紙袋に入った小箱を取り出し、包装紙を丁寧に剥がしていく。この包装紙の模様も美しい。この柄でドレスを作ったら・・・と考えると無駄にワクワクしてしまう。

「・・・チョコ?」

「うん、チョコレート。コレと同じ色艶の生地を使いたい。」

「なるほど。同じというのはどの程度で?」

「そっくり同じ程度。」

即答すると、ロナルドが頭を抱える。

「・・・倉庫探してくる。」

「僕もいくよ。」


今日見つけたから、その色を新鮮だと思ううちにある程度のことはしたい。今日見たこの色と明日見るこの色はきっとどこか違うから。

階段を降りてロナルドについていく。

「そういえば今日テオは大切な人って言ったけど、その人とはどんな関係?」

まだ忘れていなかったのか。意外にしつこいなと思う。おそらく恋人かそうでないかを問うているのだろう。ただからかっているだけならそんなこと関係ないだろうに。

それならば本当は自慢の恋人ですと胸を張って答えたい。でも、世間はきっと僕たちを否定するから。だからそのことには触れずに、しかし真実を答える。

「家族。」

そう、アシュリーは自分を一番近くで見守り、大切に育ててくれた家族だ。

「そうか。びっくりした。テオはその人のこと、大好きなんだね。その人のこと話してると一番笑ってる。」

「うん。」

大好きなんかじゃ言い表せない。愛してるよりもっと大きな表現があったとしたらそれだ。感謝している。たまらなく愛してる。ずっと一緒にいたい。

そんなことを考えていると、倉庫の重たいの前まで来た。
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