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「なにそれ!!運命じゃん!!」

「うん。」

「俺だったらそんな冷静じゃいられないよ!!相手のこと考えただけでどきどきして、今にも会いたくてたまらなくなってそわそわして落ち着かなくなっちゃう!」

「今そんな状況。代弁してくれてありがとう。」

「…見えねー…。」

谷津は苦笑いしながら言った。

俺はどうやら感情が表に出にくい性質らしい。よく言われるので自覚はある。

「…谷津ならどうする?」

先程ぐるぐると1人で考えていたことも、谷津と話せば少しは解決するかもしれない。

「えっと、その人は傷が治ったら連絡してこいって言ったんだよな…?」

「うん。」

谷津は腕を組み、うーん…と言いながら真剣に考え込んでいる。

「とりあえずお礼の連絡をするかな!治るまで連絡してくるな、とは言われてないし!」

…確かに。

「谷津、頭いいな。」

「え、うそありがともっと褒めて!!」

「天才」

「だろー!!」

谷津は得意気にふふんと鼻を鳴らした。

犬耳と尻尾が見える。谷津みたいなSubなら、俺がDomでも絶対好きになる。俺と違って人懐っこくてコミュ力が高くて、思いやりがあって、友達としても本当にいい奴だ。

「そういえば学祭の出し物、執事喫茶に決まったらしいぜ!」

…このタイミングでなんの前ぶりもなくこの情報を言うのはどうかと思うけれども。

谷津はスマホを片手に意気揚々としている。

「…俺は裏方をやる。」

「お前が前に出なくてどーすんだよ!!むしろ目玉だよ、女子が騒いでっし!!」

「…嘘だ… 」

俺の学科では、一年生のみ約40人単位のクラスごとに出し物をやる。ちなみに谷津が髪を染めたのは別の、サークルの出し物のためだ。

…しかし、これはひどい。工学部で女子が3割と驚異の女子率を占めているのが、まさか裏目に出るとは…。

クラスLINEを覗くと、クラスリーダーが発言していた。

“話し合いの末、出し物は執事喫茶に決定しました。明日の昼休みに話し合いがあります。女子は調理と装飾、男子は装飾と力仕事と執事役に分かれるので、やりたい役職を決めておいてください。”

「…明日休もうかな… 」

言うつもりはなかったが、気づいたら口からこぼれ出ていた。

「多分いてもいなくても幹斗は執事で決定だと思うぜ。」

谷津がため息混じりに答える。

「…まじか。」

「まじで。」

由良さんのことと学祭のこと、ベクトルの違う2つの事象に脳が振り回され訳がわからない。

「ボウリング行きたい… 」

「まじ?いくいく!!今からチャリで行こうぜ。…と、その前に腹減らない?」

「ありあわせでいいなら作るけど。」

「食べる!!幹斗の飯意味わかんないくらい美味いんだよな!!」

あまりにわけがわからなかったので昼食を取ったあとボウリングに行き腕が死ぬまで投げ続け、家に帰って風呂に入ったらもうくたくたでぐっすり眠れた。

次の日結局執事役にされた挙句、目上の人へのメールの送り方がわからず教授に対して打つ要領で由良さんにメールを送ったら後でその文面を盗み見た谷津に“ちょっと堅すぎあり得ない”、と言われたのは、また別の話である。
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