贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第3章謎の少女とダンジョン革命

174・色違いの魔物③

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「《疾風刃(エア・カッター)》」

とにかくひたすらハーピーを倒しながら村の奥へと進む。

「く、くるなぁ!」

その時、杖を振り回しながら、
村長がそう叫んでいるのが目に入った。

「おじいちゃん!」
「ネル!? 今までどこに…?」

村長がそう言った時、一頭のハーピーが村長の体を掴んだ。

「や、止めろ!!」

そしてハーピーは大口を開け村長の喉を引きちぎって食べた。

「そ、そんなおじいちゃん!」

村長の体が地面に落ちた。

「う、あああー!」

ネルがそう叫んだ時、風が吹き荒れた。
そして彼女の右目を隠していた髪の毛が上がる。

「え?」

そこに有った右目の色はオパールのような色をしており、
何かの刻印のような物が浮かんでいた。

「あれは精霊眼!?」

フォルトゥーナが驚いたように声を出す。

「精霊眼って何ですか?」
「今はそれより彼女を止めなさい!
このまま放置しておくと大変なことになります!!」
「う、うん、分かった。
ネル落ち着いて!!」

私はネルを抱きしめる。

「おじいちゃんが…」
「大丈夫だから!
フォルトゥーナが治してくれるから!!」

そう言うとネルは落ち着いたのか、風がやんだ。

「今のは一体…」

ネルは驚いたように自分の手を見る。

「それよりフォルトゥーナ、村長に回復魔法を!」
「分かりまし――!?」

その時突然現れたハーピークイーンが、
フォルトゥーナの喉元を掻き切った。

「やれやれ会話の途中に居なくなるとは、
失礼にも程がありますよ」

そうハーピークイーンが言った。

「フォルトゥーナ! 大丈夫!」
「が、ごっ、がっ」

喉を掻き切られているせいか、
フォルトゥーナは言葉にならないようだ。

「くっ」

エドナが持っていた弓でハーピークイーンを射るがかわされる。

「やれやれこれで終わりですか?
本当に他愛も無い」
「イオ!」
「行くのだ!」

イオが民家の上に飛び乗り、ハーピークイーンに飛びかかる。

「なっ」

完全に油断していたらしいハーピークイーンはイオに顔面を殴られ、
地面に転がる。

「くっ、よくも私を地面につけましたね!
ハーピーよ。この者らを抹殺しなさい」

そうハーピークイーンが言うと、
村に居た全てのハーピーがこちらに向かってきた。

「行きます。《焔熱砲(バーニング・カノン!)》」
「行くわよ!」
「行くのだ!」
「戦うか」
「俺に任せるッス!」
「うちも本気出すわ」
「…行くぞ」

そうしてみんなでハーピーをひたすら倒した。
そして最後の一体を倒した。

「んな…」

これにはさすがにハーピークイーンも唖然としていた。

「さぁ最後に言い残す言葉はないですか?」
「くっ、人間風情が!」

そう言うとハーピークイーンは飛びかかってきた。

「《焔熱砲(バーニング・カノン!)》」

そして超強力な火炎魔法をお見舞いしてやった。
ハーピークイーンは塵となって消えた。

「これで依頼は達成ですが…」

私は村の惨状に目をやった。
多くの死体が転がっていたからだ。

「とりあえず埋葬しておきましょう」

そうして村を回ったが生き残った人は6人しか居なかった。

「フォルトゥーナ、喉は大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。
私には再生能力がありますから、しかし村長は…」

村長は戦っているうちにひっそりと亡くなってしまった。

「おじいちゃん…」

ネルは村長の手を握って泣いていた。
虐待されていたとしても、
ネルにとっては大切な人だったかもしれない。

とりあえずいつまでも死体を放置してはいけないので。
穴を掘って埋葬することにした。
かなりの重労働だったが、
日が傾く時には全部埋葬し終えることが出来た。

「おじいちゃん…お父さん」

村長と父親の墓を見てネルは涙を流していた。

「しかしこんなところに精霊眼を持つ者がいるとは…」
「フォルトゥーナ、精霊眼って何ですか?」
「生まれつき精霊と高い親和性を持つ人間のことです。
人間というより精霊に近い存在ですね。
精霊眼を持つ者は存在しているだけで、
精霊を癒やし、自然の力を高めてくれます
まぁ精霊眼を持つ者は、
精霊にとってオアシスのような存在です」
「そうなんですか」
「といってもこの村の惨状を見ると、
どうやらこの村の住人は本気で精霊を怒らせてしまったようですね」
「え、怒らせると何かあるの?」
「精霊は自然の存在ですよ。
それを怒らせるということは自然を敵に回すということです。
この村の畑が少ないのも納得ですね。
怒った精霊が畑から離れてしまったのでしょう。
それで畑が実らなくなったのだと思います」
「えっとそれだと村が滅んだのは私のせいですか…?」

ネルが涙ぐんでそう言う。

「いいえ、精霊を怒らしたことと、
色違いの魔物が現れたことは無関係でしょう。
でもどちらにせよ。精霊眼を持つ者を怒らせたのです。
この村は遅かれ早かれ滅んでいたと思いますよ」
「……」
「ネル、そう浮かない顔をしないでください。
この村が滅んだのは、完全に村人の自業自得です。
最初から私達のうちの何人かを村に残れば、
村は滅びることはなかったでしょう」
「フォルトゥーナ、それは確かにそうだけど、
ネルの気持ちも考えてあげなよ」
「アネゴ、それはいいんですけど、
この子をこれからどうするッスか?」

トッドがそう言った。

「確かに保護者はもう死んでしもうたし、
これからどうするんのや?」
「それなら私が――」
「それなら俺が面倒を見る」

私が面倒を見ますと言いかけた時、
元ギルドマスターのアレックさんがそう言った。

「え、アレックさん。良いんですか?」
「ああ、家族が一人増えても俺なら養っていける。
お嬢ちゃん、どうするんだ?」
「えっと良いんですか?」
「ああ、放ってはおけないからな」

そうしてネルはアレックさんが面倒を見ることになった。
そうして私達はカシス村を後にした。

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