贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第4章起業しましょう。そうしましょう

251・エドナの涙

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「《氷結《アイス!》》」

私は氷結魔法を魔族に向けて放った。

「くっ、何故私を攻撃する?
悪いのはその男だろうが!」
「あなたを放ってはおけません!
ここで討伐します!」
「そうか分かったわ。
私のエドナをさらったのはお前達だな!」

そう言った瞬間魔族の髪が赤く激しく燃える。

「だからエドナは目の前にいるでしょう」
「嘘をつくな!」
「嘘なんかじゃなくて本当に…!」
「セツナいくら言っても無駄ですよ。
彼女の中ではエドナは赤ん坊のままで止まっています」

そうフォルトゥーナが言った。

「よくもエドナを、エドナを返してもらうぞ!」

そう言うと魔族の周囲に炎の玉がいくつも生まれる。
そしてそれが全部私に向かってきた。

「くっ、《結界!!》」

私は結界魔法で攻撃を防いだ。

「エドナを差し出せ、そうすれば命だけは助けてやる」
「エドナは目の前にいるだろ!」

そうリンが叫んだ。

「黙れ、エドナはどこに居る!?」

そう言うと魔族の周囲を炎が包む。

「どうやら魔族の周囲は、
炎のせいで高温になっているみたいですね」
「そうですか、《結界》」

確かにさっきからすさまじい熱気を感じる。
私は念のため、ブッチさん達の周りに強力な結界を張った。

「下手に攻撃するとこっちもヤケドを負いそうですね。
とりあえず魔法攻撃で遠くから攻撃しておきましょう」
「私も攻撃した方が良いかしら?」
「いや、エドナは炎魔法しか使えないからダメです。
私の予想だと多分あの魔族は、
火属性の攻撃を受けると体力が回復すると思います」
「ところで妾が手伝った方がいいか?」

タツキがそう言った。

「自分達で何とかするので大丈夫です。
本当にピンチになった時だけ助けてください」
「分かった」
「ボクも戦闘能力はそんなに無いから見物しているよ」

そうプロムが言った。

「行きます。《氷檻(アイス・プリズン)》」

私は強力な氷魔法を放った。

「くっ、寒いのは嫌いよ!
炎よ。燃えろ!」

魔族の周囲に炎が燃え広がる。

「《聖槍(ホーリーランス)》」
「《氷檻(アイス・プリズン)》」

私とフォルトゥーナが魔法攻撃で攻撃する。

「がはっ」

攻撃がかなり効いているのか、魔族が膝をつく。

「くっ、ぐがぁああー!」

そう魔族がうなると魔族の胸から黒い玉が出てくる。

「あれは!?」
「プロム、知っているんですか?」
「幽霊を強制的に魔族に変える魔道具だよ!
セツナ、あれを破壊するんだ!
あれこそ、彼女を魔族に変えた元凶だ」
「はい! 《疾風刃(エア・カッター)》」

私は風魔法を放ち、黒い玉を破壊する。

「あ、ああぁあぁああー!!」

魔族がそう叫ぶとその体から黒い光を放って爆発した。

「ああ…エドナ…エドナはどこ?」

そして爆発が収まると、
魔族の体が砂のように崩れ始めた。

「もう体が維持出来ない…エドナ…どこに居るの?」
「だからエドナは…」
「しっ!」

私はリンの言葉を遮る。

「あのエドナのお母さん、
エドナは今この屋敷に居ませんが、
元気で暮らしています」

私はそう嘘をつくことにした。

「そうだったの…。なら良かった…。
なら最後にエドナに伝えてほしいの。
永遠に愛していると。
あの子には幸せになってほしいの。
だからお願い、絶対に伝えてね」
「分かりました。絶対に伝えておきます」
「ありがとう…」

そう言うと魔族は…エドナのお母さんは消え去った。

「完全に居なくなったわね。
成仏したのかしら…」
「結局最後までエドナが、
エドナだって気がつきませんでしたね…」
「エドナ」

その時ブッチさんが口を開いた。

「エドナ、帰ってこい」
「え?」
「お前が本当にわしの子なら、話は別だ。
家に帰ってこい。
すぐに婚約者を選んで――」
「お前ー!!」

私はブッチを思いっきり殴った。
そして私の体を黒いオーラが取り囲む。

「お前のせいでエドナがどれだけ苦しんだと思っている!!
そもそものことの発端はお前が話をきちんと聞かなかったせいだろう!?
エドナが不倫して出来た子だと言われてどれだけ傷ついたか分かるか!?
家を勘当されてエドナがどれだけ苦労したと思っている!?」

私は馬乗りになってブッチを殴り続ける。

「や、止め…」
「お前が嘘を信じずに話を聞いていれば良かったんだ!
お前が全部悪いんだー!!」

私はひたすら殴っていく、拳が血まみれになっていく。

「その程度にしておかないと死んでしまいますよ」

殴りかけた手をフォルトゥーナが掴んだ。
そして私はハッと我に返る。

「《完全治癒《パーフェクトヒール》
全く止めるのがあと1分遅かったら殺していましたよ」

フォルトゥーナがブッチさんに回復魔法をかけた。

「うっ」
「あの大丈夫ですか、ブッチさん」
「ヒッ、近寄るな」

ブッチさんは怯えているのか後ずさる。

「お父様…」

その時黙って見ていたエドナが口を開いた。

「私はあなたの知るエドナではありません」
「何を言って…」
「あなたの知るエドナは死にました。
死体は土になりました。
だから私はエドナではありません。
そういうことにしておいてください…」

そう言うとエドナは背を向けて歩き出した。

「エドナ!」

私はエドナの後を追いかける。

「エドナ、大丈夫ですか」
「大丈夫じゃないわ…」

エドナは外を歩きながらそう言った。

「もう心の中はぐちゃぐちゃよ…。
私は今まで母を恨んでいた…。
でも母は不倫なんてしていなかった。
全部父の勘違いだったなんて…私は、私は」

そう言うとエドナは立ち止まる。
私はエドナの両手を握った。

「エドナ、泣いてください」
「え?」
「こういう時に感情を抑える必要はありません。
悲しかったら泣きましょう。
胸ならいつでも貸しますから」
「うっ…うわぁぁー!」

そう言うとエドナは膝をついて私の胸にしがみついて泣き始めた。
私はエドナの体をぎゅっと抱きしめてあげたのだった。

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