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第5章波乱と激動の王都観光
274・不老不死の呪い
しおりを挟む「出てこい、盗人め!」
そんな声がしたので慌てて外に出ると、
そこに宙に浮いた白髪の大男が仁王立ちしていた。
「出てきたな!
ピーちゃんをどこにやった!?」
「あのピーちゃんって何のことですか?」
「ん? お前はあの時の人間か?」
「え、どこかでお会いしましたか?」
「この山に登る時に挨拶しただろう。
あまりないことだから覚えていた。
確かにお前じゃないな。
山に挨拶する礼儀を持った人間がピーちゃんを盗むとは思えない。
でもだとしたらピーちゃんはどこに居るんだ?」
「あのそもそもあなたは何者ですか?」
「俺はこの山に住む精霊だ。人は俺を山神様と呼ぶ」
「精霊? そのわりには姿が見えていますが…」
「俺をそこらの精霊と同じにするな。
俺は精霊の中でも神に近い存在だ、
俺ぐらいのレベルになると人間の前に姿を現すことなど造作も無い」
「で、ぴーちゃんとは何ですか?」
「俺の大切なペットだ。赤い羽根が自慢の鳥だ」
「それってまさか不死鳥ですか?」
「確かに人間達の間ではそう呼ばれているな。
ピーちゃんの血を飲めば人間は確かに不老不死になる。
そのために今まで多くの人間がピーちゃんを狙ってきた。
だから俺が守ってやらないとダメなんだ。
しかし俺が少し目を離した隙にピーちゃんを盗まれてしまった。
だから俺は盗んだ犯人が逃げ出さないように、
山に大量の雪を降らしたんだ」
「ああ、だから春なのに雪が降っていたわけですか」
「それで探していたらお前達の居るテントを見つけたわけだ」
「そうだったの。
でもセツナならきっとピーちゃんの居場所が分かると思うわ」
「本当か!?」
「はい、あっちの方に居ます」
エリアマップで検索するとすぐに居場所が分かった。
「案内してくれ!」
「分かりました。みんなはここで待っていてください。《飛翔》」
そうして私は案内することにした。
周囲には雪があるので飛んでいくことにした。
「あそこの洞窟です」
そうして洞窟の中に入るとそこに3人の男と、
鳥かごに入った不死鳥が居た。
「だ、誰だ!?」
「あなた達が不死鳥を盗んだんですか!?」
「そ、それの何が悪い!」
「そんなに長生きしたいんですか?」
「俺は長生きには興味ねぇよ。
でもコイツを欲しがっている金持ちはいるはずだ。
そいつに売りつけてがっぽり儲けるのさ」
「この外道が!!!」
その時山神様から猛吹雪が吹き荒れる。
私は思わず顔を押さえる。
そして吹雪が止んだので顔を上げると、
3人の男達は凍り付いていた。
「え、殺したんですか?」
「いいや、殺していない。
ピーちゃんを攫った罰として、
10年間はこのまま凍り付けだ。
10年経ったら自然と氷は溶けるが、
その後どうなろうと知ったことではない」
「それっていくらなんでもかわいそうな気が…」
「それは気にする必要はない。
こいつらは登山者の中でもろくでもない生き方しかしておらん。
これぐらい自業自得というものだ」
そう言うと山神様はピーちゃんの入っている鳥かごを開いた。
「ああ、無事で良かった」
「ピィピィ」
鳥かごから出ると不死鳥のピーちゃんが嬉しそうに鳴いた。
それを見て山神様は、
本当にピーちゃんを大事にしているのだということが分かった。
「お前達にはお礼をしないといけない。
そうだ。俺の屋敷に来るといい。歓迎しよう」
「それなら仲間も連れていいですか?」
「ああ、もちろんだ」
そうして一旦テントのあった場所に戻った。
「ではお前達を俺の屋敷まで案内する。行くぞ」
そうして気がついたら目の前に氷で出来た大きな屋敷があった。
その中に入っていくと、寒そうな外見とは裏腹に中は暖かかった。
そうしてリビングのような所に通される。
「すごいこれ、全部氷だ」
その部屋の家具は全部氷で出来ていた。
私達は氷で出来たソファに座る。
「さぁこれを飲むが良い」
そうして暖かい飲み物を渡された。
コップも氷で出来ているが、なんで溶けていないんだ?
そう思ったが飲んだ瞬間にその疑問は消えた。
なんと甘酒だったのだ。
「これってどこで手に入れたんですか?」
「知り合いの精霊から貰ったものだが?
気に入ったのならやろうか?」
「ぜひ、ください!」
「それよりここって寒そうな外見なのに、
中はずいぶんと暖かいのね」
「ああ、お前達が来るから部屋の温度を上げたんだ。
俺が普段暮らしている温度はお前達には少し低すぎるからな。
俺は山の精霊だから、こういうことも出来る。
ちなみに家具は溶けないよう魔法をかけている」
「そうなんですか」
「ところで聞きたいのですが、
不死鳥の血は本当に人を不老不死にさせるのですか?」
「それを聞いてどうするつもりだ?」
フォルトゥーナがそう聞くと、
部屋の温度が少し低くなった気がした。
「フォルトゥーナ、何てこと聞くんですか」
「こういうことははっきりしておいた方が良いんです。
実はこの子の姉が病気でしてね。
不死鳥の血を少しわけてもらうことは出来ませんか?」
「そうか、だがそれだけは止めておいた方が良い。
不死鳥の血を飲めば確かに病気は治るが、
不老不死となってしまう」
「不老不死になると何かまずいんですか?」
「1度不老不死になると何をしても死ななくなる。
文字通り何をしてもだ。
例え何万年経っても、何億年も経っても死ねない。
しかし死ねなくなるのはあくまで肉体だけで、
精神を保護してくれることはない。
それがどれほどの苦痛か分かるか?」
「えーとつまり肉体は不老不死だけど、
精神は人間のままってことですか」
「ふむ、それは地獄じゃな」
「そうだ。近しい人、大切な人はいつも先に死ぬ。
でも自分は死ねない。
それがどれほどの苦痛かはお前らにも想像はつくだろう。
それにだ。1度不死鳥の血を飲めば、
例え太陽に飲み込まれようとも、星が滅んでも永遠に生き続ける。
不老不死というよりは呪いに近いな」
それを聞いてゾッとした。
星が滅んでも生き続けるとかどんだけヤバイんだよ。
そういえば最強の生物になったはいいものの、
宇宙空間に放り出されて、
そのまま永久に宇宙空間をさまよったって話を漫画で読んだことがある。
呼んだ時はゾッとしたが、マジであんなのになるのは嫌だ。
「じゃあ止めといた方が良さそうですね」
「そう言ったのはお前達が初めてだな。
不老不死になりたくないのか?」
「無いです。
身の丈に合わないことして地獄に落ちた人を知っているので」
「俺も無いなー。興味すらないよ」
「私も無いわね。人間はいつか死ぬから人間なのよ」
「わたくしも無いですね」
「私も無いのだ」
「妾は神じゃからもうすでに不老不死ではあるからな。
血など飲まずともやっていけるぞ」
「アタシはちょっと興味はあったけど、
話を聞いた限りデメリットが多そうだから止めとくよ」
「僕も不老不死はいいや。
でもそうなると姉上の病気はどうなるんだ?」
「わたくしが治すので大丈夫ですよ」
「そうそうフォルトゥーナならどんな病気も治せますからね」
「お前らは不思議だな。
俺が嘘をついているとは思わなかったのか?」
その時山神様が渋そうな顔でそう言った。
「え、何でですか?」
「俺が嘘をついていてお前らを騙している。
そう言った奴が昔いた」
「え、何で山神様が嘘をついているなんて思うんですか?」
「さぁな。俺が言ったことを諦めさせるための嘘だと思い。
俺を倒して不死鳥の血を飲んだ奴が昔いたんだ」
「え、本当に?」
「それから三百年後、奴は殺して欲しいと再び俺の前に現れたが、
俺にはどうすることも出来なかった」
「忠告をきちんと聞いていれば良かったのに…」
「まぁ1度不死鳥の血を飲んだ者は何をしても死ぬことはない。
だからきっと今も奴は生き続けていることだろうな」
何ともいえない話だった。
ちゃんと忠告を聞いていれば良かったのに…。
人の話を聞くことってやっぱり大事だな。
そう思った一日だった。
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