幸介による短編集

幸介~アルファポリス版~

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かぼちゃの女の子

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かぼちゃが歩いてきます。


おばさんが目を凝らしてみると


大きなかぼちゃを抱えた女の子でした。


「あらあら、大きなかぼちゃね」


「かーぼちゃいいでしょー」


「かぼちゃいいねえ」


「でしょー?」


えへへと女の子は笑いました。




かぼちゃが歩いてきます。


おばあさんはクスクス笑って


大きなかぼちゃを抱えた女の子に


声をかけました。



「随分大きなかぼちゃだねぇ」


「そーでしょー?」


「食べたらおいしそうだねぇ」


「このかぼちゃは食べないのよ」


女の子は自慢げに言いました。




かぼちゃが歩いてきます。



イヤホンをしていたお兄さんは


思わずイヤホンをとって


かぼちゃを抱えた女の子に言いました。



「でっけえかぼちゃ…」


「いいでしょ?」


「それどうすんの?」


「家族でハロウィンすーの!」


女の子は嬉しそうに言いました。




かぼちゃが歩いてきます。



みすぼらしい格好のおじいさんが


大きなかぼちゃを抱えた女の子を


じいっと見つめていました。



「おじいちゃん、何してるの?」


「かぼちゃおいしそうだねぇ」


「よだれ、たれてる。おなかすいてるの?」


「もう3日何にも食べてないんだ」



そう、と女の子は呟いて


おうちへ向かって歩き出しました。




かぼちゃが歩いてきて、



1軒のおうちの中へ入っていきました。



「ただいまー」


「おかえり、かぼちゃ重たかったでしょ」


「うん…」


ハロウィンのかぼちゃを


買いに行った女の子。



行く時は確かに笑顔で行きました。


帰ったらかぼちゃにお顔を作るんだ


そう言ってスキップ踏んで行きました。



でも、帰ってきた女の子は


なんだか浮かない顔をしています。



お母さんはお料理の手をとめて


女の子を抱き上げて聞きました。



「どうしたの?」


「おじいちゃんと会ったの」


「おじいちゃん?」


「3日間、何にも食べていないんだって」



そう、お母さんはそう言いました。



女の子はそれからしばらく


リビングでゴロゴロしたり


ひとり遊びをしながら


過ごしていましたが


やがてお母さんに声をかけました。



「お母さん…」



「どうしたの?」



「ねえ、ハロウィン出来なくなったら寂しい?」



「うん?」



「あのね、あたちね」









おじいさんがいました。



みすぼらしい格好のおじいさんでした。



おうちがないおじいさんでした。


着る物も一着のおじいさんでした。


食べ物もなんにもないおじいさんでした。




スープを持った女の子が


お母さんと手を繋いで


おじいさんの元へ歩いてきます。





「おじいちゃんあのね、かぼちゃのスープいる?」




Happy Halloween♪



幸せを、召し上がれ。


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