幸介による短編恋愛小説集

幸介~アルファポリス版~

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胸きゅん*ちょっと大人な物語

フェチズム

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「まーい」


「うん」


「もうちょっとこっちおいで♪」 


「や」


「は、なんでだっ」


「におい、嗅ぐ気でしょ?」


「お、俺ぁ、そんな事しねえよ」



絶対嘘だ。


私の彼、光之介は


生粋のにおいフェチ。


隙さえあらば


私の側でスンスン


鼻を動かすのが癖になっている。



今だってベッドの中。


「あーさむっ」


そんな事言いながら


布団の中に顔ごと潜り込んで


絶対、寒いとか嘘。


中でスンスンしてるはず。



私はおもむろに


布団を剥いでみる。



「わっ。何すんだよ!せっかくの舞の匂いが!」


「やっぱり…」


布団の中にこもった匂いなんて


絶対くさいのに


どうしてこうも嗅ぎたがるのか。


はぁーっとため息をつくと


光之介がもそもそ動き出して


私の顔を覗き込む。


「なあ、ひいた?」


「別に、引かないけど」


「けど?」


「なーんでそんなに匂い嗅ぎたいの?」



彼はきょとんと目を丸くして


私にこう言った。



「え、舞の匂いだからだけど?」


普通にこんな


恥ずかしいこと言うんだから。





「なんか、コウが嗅ぎたがる場所って絶対くさいよねー。舞、くさいって言われてるみたいでさあ、恥ずかしいんだってば」



光之介の自尊心を傷つけないように


本音を挟んで笑いながら伝える。


すると光之介も負けじと


真剣な眼差しで訴えた。




「いや、興奮する。くさくない、香ばしい」


「やだ、胡麻みたいな言い方しないで」


「失礼なこと言うな、舞の神がかった匂いをゴマなんかと一緒にするな」



今度は、ちょっと怒り出す。


興奮スイッチも怒りスイッチも


一体どこに潜んでいるやら


まるで光之介は地雷男だ。




一計を案じた私は


攻勢に転じた。



「ねー、コウー」


「んー?」


「じゃあ私も嗅いでみていい?」


「……やだ」


「なんで?」


「恥ずかしから」


「なんでコウが良くて私は駄目なの?不公平じゃんっ」


私はガッチリガードし始めた光之介の布団に


潜り込んで、無理やりお腹に乗っかり


また布団を剥いでやった。




「光之介、捕獲!」



「あー、俺今ぁ舞を下から眺めてる…いい眺め」



また変なこと言ってるし。


下から見上げる人間って


たるみが目立って絶対、やばい。



口元を隠すふりをして


首のあたりを隠す。



光之介は私の変なところばかり


見たがるし、嗅ぎたがる。



そのまんまの私がいい


なんて言うけれど


私は出来るなら光之介には


綺麗でいい香りがして


もっと好きになってもらえるような


そんな私を見て欲しい。




私は光之介の上半身に


ぺったりと体を添わせて


光之介の首のあたりを


スン、鼻を鳴らして嗅いだ。


ん!?


光之介の首は何故か


甘い匂いがする。



あんなに汗、かいたのに。



スンスン、


何度も嗅いでみる。



そのうち光之介が音を上げた。




「あー、やべ恥ずいー…」


「ちょ、待って。今、人体の神秘が!」


「なぁ舞、もういいんじゃね?」


そう言われて我に返る。


私、今一生懸命


光之介の匂いを嗅いでた…


顔から火が出そう。



静かに光之介から離れ


あわよくば今の醜態を 


記憶から抹消してもらおうと


言葉を重ねていく。




「てか!なんでこんな甘い匂いするの!?」


「えー?何もしてねえよ」


「香水とか!」


「香水なんて人工物なんでー」


「サプリメント!」


「めんどくせーし」


「ずるっ!」


「ずるいってぇ言われてもなあ」


「あ、まさか食べ物?甘い物食べた?」



「あー…」


光之介は私の手を引っ張って


腕の中に私を連れ込んだ。



そして、スン


一度、鼻を鳴らして囁く。



「昨日…舞を食った」



また、こんな事言う。


心臓が何度も跳ねた。


おかげで私の顔は真っ赤だ。




心臓が


いくつあっても足りないよ。



「ねえ、コウ」


「んー?」


「今、私がコウの匂い嗅いで甘い匂いって思ったように、コウも私の匂いは甘く感じたりするわけ?」



それなら


光之介の匂いフェチ


ちょっとだけわかる気がする



好きな人だから


いい匂いに感じる


それなら嬉しい。



私は、んー、と唸る光之介の顔を


じっと見つめて答えを待った。



やがて光之介は


にへぇ、と笑ってこう言った。




「俺ぇ、舞の汗の匂い、好き」


「やっぱり汗くさいんじゃん!期待して損したっ」


「もっかい、嗅がして?」


「いや!!」



私の彼、光之介は


暇さえあればスンスン


隙さえあらばスンスン


隙がなくてもスンスン


どうしようもない匂いフェチ。



でも、三年も


こんな匂いフェチと一緒にいると


だんだん、だんだんと


この匂いへの執着が


光之介の愛情に感じてくる。



絶対、相容れない


理解できないと思ってたのに…




光之介がまた頭の上で、


すん、鼻を鳴らす。



「あ、また嗅いだっ」


「…舞、ほんと好き」


「もー…」


今では、この


困ったスンスンも



「私もコウが大好きだよ」




ちょっとだけ


愛しいのです。




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