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にゃん編
自殺志願者~第一話 生まれ変わったなら
しおりを挟む「お前、死ぬのか?」
「止めないで下さい、本気なんです」
見知らぬ男は
短くなった煙草を
河に投げ捨てると
こう笑った。
「俺も一緒に飛んでやるよ」
【Looking for Myself~第一話 生まれ変わったなら】
集団練炭自殺が未遂に
終わってから半年…。
前を向いて頑張ろう
リクとカエルと
約束したのに
「にゃん、最近どう?連絡ないから心配してるよ」
「おーい、連絡寄越せー」
三人だけのグループLINE。
二人が私を心配してる。
「大丈夫、元気だよ♡」
私はそう、嘘の返信を送った。
所詮ね、文字じゃ
人の感情は読み取れないから。
「そう?よかったー」
「なんかあったら相談しろよー?」
ほらね。
うまく騙されてくれたでしょ?
本当は心が軋んでた。
よく、飛び込んだ人を見つけた電車が
キキキキキッと悲鳴をあげて
止まろうとするシーン
ドラマとかで見たことない?
まさにあんな感じだった。
きいきい鳴りながら
無理に運転し続けた心は
壊れた歯車みたいに
もう身体を動かす事もやっと。
鬱病と
起立性調節障害
自傷癖
無気力症候群
母にはいつも
もっとしゃんとしなさい
と言われるけれど
しゃんとしたくても
出来ない
父には学校行けと
言われるけれど
行きたくても
いじめという地獄が
広がっていて
朝だって
体がだるくて動かない。
こんな私は
「不必要」かと聞けば両親は
苦笑いを零すだけだ。
そこに何の救済がある?
その沈黙は
「YES」と言われているも
同然だった。
一緒に自殺しようと思った、
二人の仲間に…
本当の事をいえないのは
せっかく死なずにやろうと思ってる、
彼女たちをわざわざこちら側に
引っ張りたくないからだった。
結局、私はひとりぼっち。
「出ていけ!!お前のような奴はこの家の子じゃない!」
この日
私は父と大喧嘩をした。
不登校に近かった高校
担任の先生から
このままでは留年すると
母の元へ電話があったのだ。
いじめのことは
両親には言えていない。
父は厳格な人だ。
いじめを理由に不登校なんて
許してくれるはずもないし
母に泣かれるのは目に見えていた。
私だって
いじめがなくて
起立性調節障害を
上手くコントロール出来れば
高校に通いたい。
だけど、根本を
両親に話せない私は
それをうまく伝えられなかった。
父はそんな私に苛立ったのだろう。
思いきり頬を張られ
そう言われたのだった。
母は止めたけれど
私は母の静止をふりきって
裸足のまま家を飛び出した。
涙も、出ない。
着の身着のまま出てきた。
お風呂上がり
ノーブラ
白のワンピース
髪は濡れたまま
足は裸足
それでも
深夜だったことが救いだ。
繁華街から
離れているここは
人通りもまばらだった。
どこをどう…
走ってきたんだろう。
いつの間にか私は
鉄橋の中央にいた。
田舎だからなのか
自殺を考える人など
いないからなのか
さしたる柵もない。
ふと見下ろせば、
死はすぐに私を
包み込んでくれそうだった。
「もう、いいかな…」
未練なんてない。
だけど、ふと…
リクとカエルの事が
頭をよぎる。
彼女たちは
泣いてくれるだろうか。
いや、きっと私が今
さよならの言葉を
LINEに入れさえしなければ
彼女たちは私の死すら
知ることもない。
連絡がとれずに
1週間くらいは
心配するかもしれないけれど
きっとあとは忘れていく。
半年も経てば
にゃん?あの子
そんな名前だったっけ?
そんな事言われるに違いない。
「あー…せめて1ヶ月は、にゃんどうしてるかなって思い出して欲しいなぁ……」
そんな独白を呟きながら
私は橋の欄干の上に上がった。
裸足でよかった。
靴を脱ぎ捨てる、手間が省ける。
「あ……遺書……」
書いてない、と思ったけれど
私は、欄干の上から
向こうの街の灯を見て
嘲るように笑う。
「まあ、いいや。死ぬ理由…伝えたい人なんていないもんね」
ヒュウヒュウと風が吹き付けた。
気持ちのいい風だ。
絶対、絶対
この世で生きてるより
ここから落ちる瞬間
私は安らいでいるはずだ。
ほんの少しの恐怖を
心の隅へ追いやるために
そう自分を奮い立たせた。
私の目には
街の灯が虚しく映る。
いつからこんな
冷めた人間になったんだろう。
生まれ変わったら…
街の灯を見つめて
さあ、私もおうちに帰ろうと
スキップなんか踏めるような
幸せな人生を歩みたい。
そんな人生へシフトする為に
私はこの1歩を踏み出して
世界を……飛ぶんだ
目を閉じる。
これを開いたら
飛ぼう。
息を大きく吸った。
と、その時だ。
「おい、そこのお前。パンツ見えてるぞ」
「え!?」
誰も気にも止めないと思っていた場所
ふいに男の声がかけられて驚いた。
ワンピースの裾を押さえて
あちこち挙動不審に見回しても
誰もいない。
「つーか、下乳まで見えてるぞ」
下……乳!?
ということは下!?
思わず視線を下へ
目を凝らせば
橋の下の川べりに人がいた。
彼は足早に堤防を登って
私の居る橋の上まで回り込む。
とても軽快な
ステップを踏んで
私の側に現れたその人は
25、6歳程の
背の高い男性だった。
彼は欄干の上の私を見上げる。
死んだような目だった。
それでも、どこか
強い眼差しに
私の心臓は射抜かれる。
やがて、彼は言った。
「お前、死ぬのか?」
「止めないで下さい、本気なんです」
「そんな格好でそんなとこに突っ立ってたら、さすがにな、遊びだなんて思わねえよ」
見知らぬの男は
短くなった煙草を
河に投げ捨てながら
こう笑う。
「俺も一緒に飛んでやるよ…よっ」
欄干の上に登った彼は
両手を広げる。
鳥にでもなったつもりだろうか。
「え……?」
まさか死ねない
私はタカを括っていた。
「死ぬんだろ?一緒に逝こうって言ってんだ」
だけど、彼の眼差しは
痛いほど真剣だ。
僅かにたじろぐ…。
「ど、どうして見ず知らずのあなたと無理心中みたいなことしなきゃなんないんですかっ」
すると、彼は含み笑って
「へえ、飛ばねえの?じゃあお先」
「え……?」
そう告げたが早いか
まるで兎がぴょんと跳ねるように
私の目の前から姿を消した。
スローモーションにすら
見えたその一瞬の間の後
バッシャーンッッ
物凄い力で水を叩く様な音が
耳を劈いたのだ。
私はその現実を
受け止められるまで
目を剥き
彼が消えた私の隣を
見つめ続けることしか
出来なかったのだった。
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