りっぷすてぃっく

幸介~アルファポリス版~

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─温泉旅行─

待ち合わせ

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車内では、ドSの甘王子に


ときめかされっぱなし。



私はこの温泉旅行に


一抹の不安を抱きながら



やっと宿につく。



ロビーに置かれた卓球台。


まだ荷物も置いていないのに


タクヤはやる気満々で


番頭さんから


ラケットとピンポンを借りてきた。



定番、卓球で汗を流す。



でも、勝てるわけがないじゃない。



徒競走は万年ビリッケツ。


生理痛が…なんて言って


体育はズル休みばかり。


球技大会では何故か


ソフトボールの上に乗っかって


しりもちをついたくらいの


運動音痴なんだから。



「弱っ、勝負にもなんねーじゃん」


「わ、悪うございましたねっ」


「俺の上で、あんだけ動けるくせに」


「う、うるさいよ!?少し黙って!」



ちょいちょい


タクヤは工口オヤジと化す。


私は人に聞かれるんじゃないかと


冷や冷やしながら


タクヤの背を叩いた。








卓球でかいた汗を流そうと


私たちは大浴場にやってきた。



「あがったらそこで待ってるね」


お風呂上がりの待ち合わせ


実はちょっと、憧れだったりする。



「俺の方が絶対早い」


タクヤはため息をついた。




「じゃあ、待っててね」


「…上のゲーセンで遊んでるわ」


「え!?」


「時間の無駄じゃね?」


「お風呂上がりの待ち合わせって恋人の温泉旅行の醍醐味じゃない!?」


「暇なのは嫌なんだけど」



本気で嫌そう。


駄々っ子タクヤだ。


こうなると私の彼氏様は


テコでも動かない。



「わかりました、ゲーセンでいいです」


「嫌そうだな、すんげえ棒読み」


「多少の棒読みは勘弁してください、楽しみにしてたんですお風呂上がりの待ち合わせ」


「そりゃ残念でした♪」



嫌がってるのを見て楽しめる


それがドS王子、タクヤ。



もう、これはどうしようもない。



私は気分を切り替えて


大浴場を堪能した。


広いお風呂


湯船の中で肌を触ると


つるつるとつやめく。



5つくらい若返った気分だ。


自然と繋がったような露天風呂。


小鳥がきれいな歌声で鳴く。


木々は風に揺れていた。


心地のいい風が


熱くなった肌を冷ましてくれる。





「んーーー、開放的!」



都会の喧騒から逃れて


大自然と触れ合う。


こんなぜいたくってない。



温泉をゆっくり堪能して


タクヤの前に出ても


恥ずかしくないように


スタイリングとメイクも


バッチリ済ませた。



ふと時計を見ると


タクヤと分かれてから


早一時間を超えていた。



「やっば、絶対怒ってる!」



いくらゲーセンで


暇を潰しているとはいえ


宿のゲームセンターは小さい。


タクヤの事だ。



すぐに飽きて、ご立腹。


急いで暖簾をあげると


タクヤの黒髪が


待ち合わせベンチの上から


ぴょこんと飛び出てる。





待っててくれたんだ…。




それだけの事なのに


嬉しくて心臓が、跳ねた。



「お、お待たせぇー…」


私は様子を窺うように


タクヤの前方へと回り込む。




「遅いっ、お前何してんの、完全に湯冷めした」


と、言いつつ、


タクヤの顔は怒っていなかった。




「えへへ」


「何笑ってんだよ」


「へへ、ごめんー」


上機嫌で謝る私に


タクヤはベンチから立ち上がる。



「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」


「待っててくれたから」


「……運転で疲れてゲーセンまで行きたくなくなったんだよ」


少し濡れ残った髪をかきあげて


バツが悪そうにそうつぶやく。


普段とは形勢が逆転したみたい。



「んーそっかそっかー♪」


ちょっとした優越感にひたる私に



「お前、すんげえ単純だよな…」


タクヤは呆れたように息をつく。




「そう?」


「今までよく生きてこれたなと思うよ」


「ひどー」


今はどんなに


酷いこと言われても


気にしない。


だって気まま勝手な俺様タクヤが


1時間も、ベンチで待っててくれた。



他の誰でもない



私の事を待っててくれた。



上機嫌でスキップを踏む私を


しばらく見つめながら


歩いていたタクヤが



「ほら」


今度はそう言って手を差し出す。



「え?」


背の高いタクヤを見上げれば


少し、顔が赤いみたい。



「え、何?」


「わかんねえのかよ鈍感」


「はて?」


「はて、じゃねえだろ、手!」



タクヤは苛立ちを装って


足早に私の手のひらをさらっていく。



くん、と引っ張られるその力が愛しい。




「お前、単純だからな。こういうのが好きなんだろ」



優しくすることに


慣れてないもんね。



耳まで真っ赤。



意外にも可愛い一面を


見せてくれたタクヤに私は



「うん、大好き」


小さくそうつぶやいて笑った。
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