エスケープ

荒俣凡三郎

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机の上の城

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まだまだ物語としては未定ということだろう。
例えば、何も置かれていない机の上には、当然ながら何もない。
手を置けば、机の上には手が現れるし、足を乗せれば、足がでてくる。
同じように机の上にノートを置いて、物語が生まれてくる。

それと同じようにして、ここに物語を書いていこうと思う。
ビックバンが起きる前の宇宙のようだと思う。
物理法則が働くこの世界を作るのに神様はいったいどれだけの力を使ったのだろう。神様と同等の力を持っているとは思わない。私が持てるのはご飯をのせたしゃもじと茶碗が持てる程度のものだ。(だからご飯を食べるくらいのことはできる)

まだテレビや雑誌で紹介されたことはない。
これからの話もしない。
あるのはただ、見るのが嫌で嫌で仕方がない画面と原稿の締め切りだ。右側では締め切りをタイマーが親切にもカウントダウンしてくれている。

ため息でわずかに開いた口の中、上の八重歯で下の八重歯をガリガリと削る。

ある程度書いたら離脱する。
ここはそういう場所だから。
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