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鬼5
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一方的な虐殺。その光景を目の当たりにした者は二人いた。一人は人間の騎士、もう一人は魔将の幹部フイジャという名の女の魔族だった。生きているのではない。生かされた。仲間を3人殺され一人の首を抱えながら走っていた。
「はやくギル様に伝えなくては・・・」
作戦は完璧だった。魔術に詳しい者が街に潜入し、結界を弱体化させ、魔物を使って結界を破壊、その後は魔族4人で街から逃げようとする人間を蹂躙する。シンプルだが、人間を根絶やしに出来る作戦。だが、一人のオーガの格好をした変質者が友人の死体を持って現れた。魔物の軍勢に死体を投げ入れ、その後は前列の魔物から次々と、一列ずつ殺していった。最後は自分を護ろうとした友人2人に対して、
「魔王軍と手を切るなら生かす。そうでなければ単なる敵だ。」
と青白く光る月のような冷酷な目をして言い放った。そして「そうか」と言いながら一歩前に出た瞬間、二人の首は飛んでいた。その首の一つを空中で手に取ると、
「魔将に伝えろ。お前らを一人ずつ殺してやる。殺されたくなければ自害しろとな。その首を持って、サッサと行け。お前は降伏しなかった。伝えたら自害しろ。苦しみたくなかったらの話だが・・・。」
そう言って男は帰って行った。魔法もスキルも使わない、単なる戦闘。それだけに恐ろしい感情を植え付けられていた。城ではその3人と陽気な4人組を加えた仲間達で良く呑み、よく話しをした。いつか人間や亜人共を駆逐して、奪った土地でのんびり暮らす。この襲撃はその一歩だったはず。だが、今は復讐心も湧かず、ただ必死に生き延びる事だけを考えている。この事をギルディア将軍に伝えれば生き延びれるかもしれない。その一縷の望みに縋り付いていた。
「人間、人間、人間、オーガじゃない人間、あれは人間じゃない・・・」
口から考えを吐き出しながらの逃走。性格は冷静で無口。よく仲間からは部下とコミュニケーションを取るように言われていた、どちらかというと頭脳派タイプの彼女は今や恐怖で饒舌になっていた。するとある神話を思い出した。勇者と魔王が戦争を始める前の時代の話。その神の一柱。
「あれがまさかそうなのか!あれが、あれが、あれ、あれが!最強にして恐怖と畏怖で戦争を終わらせる神!デーモンやオーガとは違う神格を得たモノ!」
「鬼なのか!!!!」
立ち止まり嗤い始める。なんだ私達は神と戦っていたのか。そう言いかけて思い切り胃の中の物が口から出た。胃がひっくり返るくらいに嘔吐する。それが終わったら今度は子供のように泣き出した。
時間が立ち、意識が薄れるほどの疲労を感じた。横に転がった友人の顔は朝日に照らされて安らかに見えた。
「自害しろ。」
彼の声が耳元で聞こえた気がした。今思えばその顔は冷酷ではなく何かを諭しているようにも感じられた。
「今行くよ。」
薄らと笑みを浮かべると彼女は腰から短剣を抜き、膝の上に置いて、恋人の首を抱きしめた。
「はやくギル様に伝えなくては・・・」
作戦は完璧だった。魔術に詳しい者が街に潜入し、結界を弱体化させ、魔物を使って結界を破壊、その後は魔族4人で街から逃げようとする人間を蹂躙する。シンプルだが、人間を根絶やしに出来る作戦。だが、一人のオーガの格好をした変質者が友人の死体を持って現れた。魔物の軍勢に死体を投げ入れ、その後は前列の魔物から次々と、一列ずつ殺していった。最後は自分を護ろうとした友人2人に対して、
「魔王軍と手を切るなら生かす。そうでなければ単なる敵だ。」
と青白く光る月のような冷酷な目をして言い放った。そして「そうか」と言いながら一歩前に出た瞬間、二人の首は飛んでいた。その首の一つを空中で手に取ると、
「魔将に伝えろ。お前らを一人ずつ殺してやる。殺されたくなければ自害しろとな。その首を持って、サッサと行け。お前は降伏しなかった。伝えたら自害しろ。苦しみたくなかったらの話だが・・・。」
そう言って男は帰って行った。魔法もスキルも使わない、単なる戦闘。それだけに恐ろしい感情を植え付けられていた。城ではその3人と陽気な4人組を加えた仲間達で良く呑み、よく話しをした。いつか人間や亜人共を駆逐して、奪った土地でのんびり暮らす。この襲撃はその一歩だったはず。だが、今は復讐心も湧かず、ただ必死に生き延びる事だけを考えている。この事をギルディア将軍に伝えれば生き延びれるかもしれない。その一縷の望みに縋り付いていた。
「人間、人間、人間、オーガじゃない人間、あれは人間じゃない・・・」
口から考えを吐き出しながらの逃走。性格は冷静で無口。よく仲間からは部下とコミュニケーションを取るように言われていた、どちらかというと頭脳派タイプの彼女は今や恐怖で饒舌になっていた。するとある神話を思い出した。勇者と魔王が戦争を始める前の時代の話。その神の一柱。
「あれがまさかそうなのか!あれが、あれが、あれ、あれが!最強にして恐怖と畏怖で戦争を終わらせる神!デーモンやオーガとは違う神格を得たモノ!」
「鬼なのか!!!!」
立ち止まり嗤い始める。なんだ私達は神と戦っていたのか。そう言いかけて思い切り胃の中の物が口から出た。胃がひっくり返るくらいに嘔吐する。それが終わったら今度は子供のように泣き出した。
時間が立ち、意識が薄れるほどの疲労を感じた。横に転がった友人の顔は朝日に照らされて安らかに見えた。
「自害しろ。」
彼の声が耳元で聞こえた気がした。今思えばその顔は冷酷ではなく何かを諭しているようにも感じられた。
「今行くよ。」
薄らと笑みを浮かべると彼女は腰から短剣を抜き、膝の上に置いて、恋人の首を抱きしめた。
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