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死へと向かい、生へと戻る3
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あれから数分経過して、新しいお茶が用意されると何事も無かったかのように話しが始まった。セレンの暴走かとも思ったが、本気らしい。隣でスンッとした顔で紅茶を飲んでいる。
(死なないようにしなければ!)
モグラは心の中で強く握りこぶしを握った。
「さて、では・・・死の淵に立ったとはどういうことかね。」
(え、この話しの流れでそれ行くのか!?)
内心ファイゼンベルグは心をかき乱されていたものと思ったがそうではないらしい。さすが槍神と言われるだけのことはあるとモグラは思ったが、手が少し震えている。はぁ、と一言ため息をつくとモグラは話し始めた。
「全てをお話しすると長くなりますので掻い摘まんで話します。」
空気がどっと重くなるのを感じる。ここから先は知った者が後悔するような内容だと言うことを2人は感じ取っていた。
「師匠から最初に言われたのは、強くなりたいか?と言うことでした。選択しろ、今のままで居続けるか、それとも死と生を行き来するかと・・・俺は強くなりたいと言いました。すると師匠はお前を弟子と認めると言い、最初は里の案内と寝る場所を紹介され、詳しく言えないのですが一週間ほどは里の者達の仕事の手伝いをしました。オーガの里の者達はずば抜けて身体能力が高く、自分には全く歯が立たない仕事ばかりで着いていくのがやっとでした。そして、修行が始まりました。」
「なるほどな。」
「どうしたんですか?」
「師匠とやらは軽い仕事をやらせて彼の実力を測ったのだよ。その漢出来るな。」
モノクルをキラーンと光らせる。話を続けますと言って気にしないことにした。
「最初は毒を飲みました。」
「毒・・・」
セレンはスカートの裾をグッと握る。
「ただ飲むのでは無くスキルを取得できないようにする秘薬を飲んでからですが。」
「馬鹿な・・・それでは死んでしまうぞ!」
ファイゼンベルグはガタっと音を立てて前のめりになりながら驚く。無理もなかった。貴族社会や裏の家業を行う者は少なからず少量の毒を飲む訓練をする。それも死なない程度の量だ。そうすることで毒耐性というスキルを得ることが出来る。スキルは成長させることでさらに上位の毒を飲んでも死ななくなる。そういう確約があるからこそ挑める行為なのだ。
「そうです・・・最初は呼吸困難、目眩吐き気などが襲い、3日くらいは立ち上がることが出来ずにいました。しかし1年後、俺はなぜそうするのかを理解しました。一つ死ぬなら死ぬで良い、二つ人を超えること。これが師匠の目的です。」
「それはどういうことかね?」
「そうですね・・・。何かナイフのようなモノはありますか?」
そう訪ねると、ファイゼンベルグは胸ポケットにしまっていた護身用のナイフを取り出しモグラに投げて渡した。そしてモグラは空中で右手で取り、左手を机に広げた。
「一体何するの!?」
そう言われてセレンの顔を見て微笑むと一気にナイフを振り下ろした。一瞬、目を背けるが、見るとナイフは先端だけしか刺さっていない。
「な、こ、これは!」
「嘘・・・だってあんなに強く振り下ろしたのに!?」
驚きのあまりファイゼンベルグは立ち上がった。
「どうやら毒をスキル無しで飲むことで細胞自体が強化されるようです。師匠から教わりました。過酷な環境にいることで人は成長する。ただ、出来るのはそもそも勇者に選ばれたからだそうです。」
「そんなことで驚いているのでは無い!・・・こんな、こんなことになるほどに、君を・・・君を責めていたのか・・・私たちは!」
「・・・言ったはずです、生と死ではなく、死と生を行き来すると・・・。」
セレンは気絶しそうになっていた。ただ、淡々と話すモグラはもはやレオンではなくなってしまっている。どんなことが有ればここまで人間は変われるのか。地獄の淵に立ってそのさまを覗き込んでいる感覚に襲われている。
「話しはもうやめましょう。セレンが辛そうにしています。」
「・・・そうだね。また今度にしよう。ただ二つ聞きたい。」
ファイゼンベルグは憔悴している。ただギルド長として確認しなければならないことがあった。
「一つ、その傷は何だ?」
「これは・・・師匠との模擬試合でついた傷です。胴と足がサヨナラしましたが、脊髄は繋がっていたので水龍の秘薬で直りました。ただ、本気では無かった、スマンと謝られてしまいましたが。テンション上がってやってしまったとのことです。」
「そ、そうか・・・では、二つ目だ。」
一度間を開けるとモグラの目を真っ直ぐと見た。
「君は強くなってこの街に戻ってきた。後悔は無いのかい?」
「ありません。あるはずが無い。セレンは生きている。他の皆も無事だった。あるとすれば・・・女将さんの旦那さんを護れなかった事です。それなのに女将さんはいつも俺を気遣ってくれる。だから、その恩に報いたい。そう思います。」
セレンは思った。変わってしまったところもある。だが、変わらないところも確かにあった。聞こえていた。ジーク逃げろ。その言葉を聞いて自分達は逃げることが出来た。
「変わって無いよ。大丈夫。うん、大丈夫。」
その言葉を聞き齢60の紳士は微笑んだ。大丈夫だろう。どんなことがあっても、周が認めたのだから乗り越えられるだろうと心の中で呟いた。
(死なないようにしなければ!)
モグラは心の中で強く握りこぶしを握った。
「さて、では・・・死の淵に立ったとはどういうことかね。」
(え、この話しの流れでそれ行くのか!?)
内心ファイゼンベルグは心をかき乱されていたものと思ったがそうではないらしい。さすが槍神と言われるだけのことはあるとモグラは思ったが、手が少し震えている。はぁ、と一言ため息をつくとモグラは話し始めた。
「全てをお話しすると長くなりますので掻い摘まんで話します。」
空気がどっと重くなるのを感じる。ここから先は知った者が後悔するような内容だと言うことを2人は感じ取っていた。
「師匠から最初に言われたのは、強くなりたいか?と言うことでした。選択しろ、今のままで居続けるか、それとも死と生を行き来するかと・・・俺は強くなりたいと言いました。すると師匠はお前を弟子と認めると言い、最初は里の案内と寝る場所を紹介され、詳しく言えないのですが一週間ほどは里の者達の仕事の手伝いをしました。オーガの里の者達はずば抜けて身体能力が高く、自分には全く歯が立たない仕事ばかりで着いていくのがやっとでした。そして、修行が始まりました。」
「なるほどな。」
「どうしたんですか?」
「師匠とやらは軽い仕事をやらせて彼の実力を測ったのだよ。その漢出来るな。」
モノクルをキラーンと光らせる。話を続けますと言って気にしないことにした。
「最初は毒を飲みました。」
「毒・・・」
セレンはスカートの裾をグッと握る。
「ただ飲むのでは無くスキルを取得できないようにする秘薬を飲んでからですが。」
「馬鹿な・・・それでは死んでしまうぞ!」
ファイゼンベルグはガタっと音を立てて前のめりになりながら驚く。無理もなかった。貴族社会や裏の家業を行う者は少なからず少量の毒を飲む訓練をする。それも死なない程度の量だ。そうすることで毒耐性というスキルを得ることが出来る。スキルは成長させることでさらに上位の毒を飲んでも死ななくなる。そういう確約があるからこそ挑める行為なのだ。
「そうです・・・最初は呼吸困難、目眩吐き気などが襲い、3日くらいは立ち上がることが出来ずにいました。しかし1年後、俺はなぜそうするのかを理解しました。一つ死ぬなら死ぬで良い、二つ人を超えること。これが師匠の目的です。」
「それはどういうことかね?」
「そうですね・・・。何かナイフのようなモノはありますか?」
そう訪ねると、ファイゼンベルグは胸ポケットにしまっていた護身用のナイフを取り出しモグラに投げて渡した。そしてモグラは空中で右手で取り、左手を机に広げた。
「一体何するの!?」
そう言われてセレンの顔を見て微笑むと一気にナイフを振り下ろした。一瞬、目を背けるが、見るとナイフは先端だけしか刺さっていない。
「な、こ、これは!」
「嘘・・・だってあんなに強く振り下ろしたのに!?」
驚きのあまりファイゼンベルグは立ち上がった。
「どうやら毒をスキル無しで飲むことで細胞自体が強化されるようです。師匠から教わりました。過酷な環境にいることで人は成長する。ただ、出来るのはそもそも勇者に選ばれたからだそうです。」
「そんなことで驚いているのでは無い!・・・こんな、こんなことになるほどに、君を・・・君を責めていたのか・・・私たちは!」
「・・・言ったはずです、生と死ではなく、死と生を行き来すると・・・。」
セレンは気絶しそうになっていた。ただ、淡々と話すモグラはもはやレオンではなくなってしまっている。どんなことが有ればここまで人間は変われるのか。地獄の淵に立ってそのさまを覗き込んでいる感覚に襲われている。
「話しはもうやめましょう。セレンが辛そうにしています。」
「・・・そうだね。また今度にしよう。ただ二つ聞きたい。」
ファイゼンベルグは憔悴している。ただギルド長として確認しなければならないことがあった。
「一つ、その傷は何だ?」
「これは・・・師匠との模擬試合でついた傷です。胴と足がサヨナラしましたが、脊髄は繋がっていたので水龍の秘薬で直りました。ただ、本気では無かった、スマンと謝られてしまいましたが。テンション上がってやってしまったとのことです。」
「そ、そうか・・・では、二つ目だ。」
一度間を開けるとモグラの目を真っ直ぐと見た。
「君は強くなってこの街に戻ってきた。後悔は無いのかい?」
「ありません。あるはずが無い。セレンは生きている。他の皆も無事だった。あるとすれば・・・女将さんの旦那さんを護れなかった事です。それなのに女将さんはいつも俺を気遣ってくれる。だから、その恩に報いたい。そう思います。」
セレンは思った。変わってしまったところもある。だが、変わらないところも確かにあった。聞こえていた。ジーク逃げろ。その言葉を聞いて自分達は逃げることが出来た。
「変わって無いよ。大丈夫。うん、大丈夫。」
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