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風雲は急を告げている3
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(こいつは駄目だ・・・もう俺たちは全滅だ。)
一人の兵士は木に腰かけ、仲間が戦っている姿を見てそう思った。
(妖精騎士団は壊滅、村は崩壊、魔王軍勝利・・・挙句の果てには人類皆殺し。)
一人一人魔物に特攻しては死んでいく。妖精の血は虹色だ。それが、木の幹に大量にかかる。その光景は綺麗だが、しかし、仲間の身体が引き裂かれて下に転がっているのを見て、そういう風にとらえているものは異常だ。実際に死の淵に立ってみて自分がそれだと気づいた時、ああ本当に死ぬのかと改めて思う。訓練は万全だったはずだ。自分はたまにサボっていたが、あいつはまじめに取り組んでいたはずだ。剣をまじめに振りながら、飛行訓練では説教を毎回のように聞く。そんな毎日。そんな毎日だったはずだ。
(なんで・・・なんでこいつが死ななきゃいけないんだよ!)
絶望に立たされ、気が抜けるほどの大敗。そんな中転がってきた友人の死体を見て激昂する。腹が立って、畜生と言いながら剣だったそれを手に取る。もはや木の棒と化したそれを右手で持ち、魔物に対して振り投げる。無力な一撃。
(はぁ、はぁ、ハヒャーーーー!)
無理やりに呼吸を整えると詠唱を唱える。
(もう関係ない!仲間なんて知るか!俺の友人はあいつだけ・・・あいつだけだった!)
仲間が前線にいるというのに大魔法の魔法陣を展開する。
「おい!やめるんだ!」
女性妖精の声が聞こえる。
「やめるんだゲイル!!」
「関係ねーーーーー!!!!」
その時である。何かが飛んでくる。ヒューと言う音が遠くから聞こえた。段々とその音が大きくなるとまずは妖精が、次に魔物が周りを見回す。
(なんだ!何かが近づいてくる!!)
耳鳴りがするほどの轟音に思わず両手で耳を塞ぎ詠唱をやめる。あたりを見回すが何もない。その時だった。フッと上を見る。周りが静かになったかのようだった。両手を耳から放すとその光を凝視する。
「何だあれは!?隕石か?」
「いや、あれは・・・。」
蒼い光と共に何かが落ちてくる。ゲイルはしっかりと見ていた。人間。あれは人間だ。口をパカンと開け、あ、あ、と言う声だけ発することができる。
「ゲイル?」
女性の妖精、クルルはゲイルのそれを見て、声を掛けようとするが、それは轟音とともにかき消された。
ガーーーーーーーーーーン!!!!!
その音と共に木が折れ、地面がえぐれる。魔物の何匹かはその衝撃でバラバラになるもの、遠くまで飛ばされるもの、木の枝に突き刺さるもの・・・不思議なことに妖精は何ともなかった。いや、何人かは気を失った。
「遅くなってしまったか。」
髪は金髪、特徴的な角、そして見慣れぬ服装。クルルはすぐに気付いた。
「オーガ・・・オーガだ!」
「すまぬ。救えぬ者もいたようだ。許せ、シルフィー・・・気を失っているか。」
そのオーガは周りを見て、クルルに声を掛ける。
「妖精殿、すまぬがこの者を頼む。」
「シル!おーい!おーい!」
クルルはシルフィーを抱き上げると体を前後にゆする。が、完全に目を回しており、全く反応しない。
「では・・・。」
「待て!何だ!何なんだお前は!」
ゲイルはオーガを指さすと震える声でがなり立てる。腰には5本の包丁をさしている。どう見ても武器とも思えないそれは異様な光を発している。
(こいつは普通じゃない!なんでこんな奴がここにいる!?)
ゲイルはクルルの前に立ち守るように身構える。すると、オーガは名乗りを挙げた。
「拙者は獅子神モグラと申す!シルフィー殿の依頼を受けて推参した!助太刀致す!」
それを聞いたクルルとゲイルは口を開けた。思ってもみなかったオーガの助け、たくさん死んで、たくさん怖い思いをした。だからだろう。いつも適当なゲイルが涙を流し、膝から崩れ落ちた。
「助かるのか?俺たちは・・・。」
モグラは黙って頷くと、それを見たクルルがゲイルの背中に抱き着く。
「ゲイル・・・私たちは助かるんだ。良かった、良かったよーーー!」
二人の泣き叫ぶ声が妖精の村に木霊した。シルフィーは地面に落ち、アウッと声を出し、クルルに踏みつけられ、ブクブクと口から泡を吹いていた。何ともシュールな光景だが、う、うむとモグラは再度頷いた。
一人の兵士は木に腰かけ、仲間が戦っている姿を見てそう思った。
(妖精騎士団は壊滅、村は崩壊、魔王軍勝利・・・挙句の果てには人類皆殺し。)
一人一人魔物に特攻しては死んでいく。妖精の血は虹色だ。それが、木の幹に大量にかかる。その光景は綺麗だが、しかし、仲間の身体が引き裂かれて下に転がっているのを見て、そういう風にとらえているものは異常だ。実際に死の淵に立ってみて自分がそれだと気づいた時、ああ本当に死ぬのかと改めて思う。訓練は万全だったはずだ。自分はたまにサボっていたが、あいつはまじめに取り組んでいたはずだ。剣をまじめに振りながら、飛行訓練では説教を毎回のように聞く。そんな毎日。そんな毎日だったはずだ。
(なんで・・・なんでこいつが死ななきゃいけないんだよ!)
絶望に立たされ、気が抜けるほどの大敗。そんな中転がってきた友人の死体を見て激昂する。腹が立って、畜生と言いながら剣だったそれを手に取る。もはや木の棒と化したそれを右手で持ち、魔物に対して振り投げる。無力な一撃。
(はぁ、はぁ、ハヒャーーーー!)
無理やりに呼吸を整えると詠唱を唱える。
(もう関係ない!仲間なんて知るか!俺の友人はあいつだけ・・・あいつだけだった!)
仲間が前線にいるというのに大魔法の魔法陣を展開する。
「おい!やめるんだ!」
女性妖精の声が聞こえる。
「やめるんだゲイル!!」
「関係ねーーーーー!!!!」
その時である。何かが飛んでくる。ヒューと言う音が遠くから聞こえた。段々とその音が大きくなるとまずは妖精が、次に魔物が周りを見回す。
(なんだ!何かが近づいてくる!!)
耳鳴りがするほどの轟音に思わず両手で耳を塞ぎ詠唱をやめる。あたりを見回すが何もない。その時だった。フッと上を見る。周りが静かになったかのようだった。両手を耳から放すとその光を凝視する。
「何だあれは!?隕石か?」
「いや、あれは・・・。」
蒼い光と共に何かが落ちてくる。ゲイルはしっかりと見ていた。人間。あれは人間だ。口をパカンと開け、あ、あ、と言う声だけ発することができる。
「ゲイル?」
女性の妖精、クルルはゲイルのそれを見て、声を掛けようとするが、それは轟音とともにかき消された。
ガーーーーーーーーーーン!!!!!
その音と共に木が折れ、地面がえぐれる。魔物の何匹かはその衝撃でバラバラになるもの、遠くまで飛ばされるもの、木の枝に突き刺さるもの・・・不思議なことに妖精は何ともなかった。いや、何人かは気を失った。
「遅くなってしまったか。」
髪は金髪、特徴的な角、そして見慣れぬ服装。クルルはすぐに気付いた。
「オーガ・・・オーガだ!」
「すまぬ。救えぬ者もいたようだ。許せ、シルフィー・・・気を失っているか。」
そのオーガは周りを見て、クルルに声を掛ける。
「妖精殿、すまぬがこの者を頼む。」
「シル!おーい!おーい!」
クルルはシルフィーを抱き上げると体を前後にゆする。が、完全に目を回しており、全く反応しない。
「では・・・。」
「待て!何だ!何なんだお前は!」
ゲイルはオーガを指さすと震える声でがなり立てる。腰には5本の包丁をさしている。どう見ても武器とも思えないそれは異様な光を発している。
(こいつは普通じゃない!なんでこんな奴がここにいる!?)
ゲイルはクルルの前に立ち守るように身構える。すると、オーガは名乗りを挙げた。
「拙者は獅子神モグラと申す!シルフィー殿の依頼を受けて推参した!助太刀致す!」
それを聞いたクルルとゲイルは口を開けた。思ってもみなかったオーガの助け、たくさん死んで、たくさん怖い思いをした。だからだろう。いつも適当なゲイルが涙を流し、膝から崩れ落ちた。
「助かるのか?俺たちは・・・。」
モグラは黙って頷くと、それを見たクルルがゲイルの背中に抱き着く。
「ゲイル・・・私たちは助かるんだ。良かった、良かったよーーー!」
二人の泣き叫ぶ声が妖精の村に木霊した。シルフィーは地面に落ち、アウッと声を出し、クルルに踏みつけられ、ブクブクと口から泡を吹いていた。何ともシュールな光景だが、う、うむとモグラは再度頷いた。
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