失格勇者の剣聖無双

来栖川

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暗闇を進め2

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 ギルドの受付カウンターにはライラとセレンがいた。ファイゼンベルグに神殿まで送ってもらった後、セレンは自分の部屋で修道服を脱ぎ、寝間着に着替え、ベッドに横になり、目を閉じて「なんだか大変な一日だったなー。」と呟きながら一日を振り返っていた。会議では謎のオーガの話題が出てきたが、神殿長の無言にして笑顔の圧でそれ以上のことを詰められることはなかった。ただ、ソードの街の領主、アーグストは煮え切らないという表情をしていた。おそらく、明日の会議ではそこを徹底的に聞いてくることになるだろうが、神殿長に任せておけば大丈夫だろう。そう思っていた時だった。神殿長がドアを激しくノックしてきたのだ。内容は妖精村で襲撃があった。セレン君は急いで準備して欲しいとのことだったので眠い目をこすりながら簡易の魔術書と何かあった時にと自前の杖を持ち、ライラに手を引かれながらギルドに到着した。 

「ギルド長はどこにいますか?」 

「おそらくギルド長室にいると思いますが・・・。」 

 ライラはギルド長室に入ること、そしてその付近で仕事をすることを禁じられていた。そこで行われる多くのことは、ランクの昇格か若しくは罪人を裁くとき。彼女には荷が重い話を聞かせたくないということでファイが自ら禁じたのである。その為、部屋をノックすることもライラにとっては出来ないことの一つだった。 

「ライラちゃん、ここまでありがとうね。ギルド長には言っておくから家まで一人で帰ってくれる?出来なければここで寝て行ってね。」 

 セレンはこのことを知っていた。と言うより、ファイは冒険者になるときに必ずこのことを伝える。その時の彼の顔は鬼気迫るものがあり、誰もライラと言う少女に手を出さず、中には「ライラさん、お疲れ様です!」と頭を下げる者もいる。なんだかヤクザのお嬢様のような構図だが、少なくともこの街でライラに手を出そうとする者はいないばかりか、その身を案じてストーカー紛いのようなもことをするものもいる。つまりライラの身に何かあれば街を挙げての戦争になるということだ。 

「うん、お姉ちゃん!大丈夫だよ!」 

そんなことは知らず無邪気に手を振ってライラはギルドから出て行った。「ライラ嬢がギルドを出た。」と声が聞こえた気がしたが、セレンは気にしないことにした。 

「さて・・・。」 

そう言ってギルド長室のドアをノックする。扉を開けるとファイは立っていた。槍を持ち、いつもと違う服を着て立つその姿は見たものを威圧する風体だった。 

「ギルド長・・・。」 

「セレン君、今の私はギルド長ではなく、海賊の風海(かざうみ)の副船長、ファイグと言っていただきましょうか。」 

「と言うことは・・・。」 

「ええ、戦争です。」 

 海賊風海・・・この世界にいるものでその名を知らないものはいない。エルドラドを筆頭にファイぜんゼンベルグ、アルカと言った実力者が揃ったパーティーメンバーを擁する巨大な組織である。亡国センジュブリカの王女や側近、兵士で構成された国家に等しい力を持っており、彼らに仇なした者たちは悉くが闇に消えていると言った噂の絶えない。もはや一つのギルドとしての側面を持っている。そのパーティメンバーである彼が槍を持ち、白い船長服を羽織っているということはその戦争と言う言葉は何かの例えではない。本気なのだ。 

 セレンはゴクリと唾を呑むと今起ころうとしていることは過去にないことなのだと覚悟を決める。 

「それで、妖精の村にはどうやって行くんでしょうか?馬車で行ったとしても一週間はかかります。」 

「そうですね。だから今回は私達全員が協力しようと思っています。こちらへ・・・」 

そう言うと机の引き出しを開け、本を取り出した。 

「これをこうして・・・。」 

本棚にそれをしまうとガコっという音がする。そして・・・ 

ガガガガガガ! 

大きな音と共に本棚と本棚の間が開き、重厚な扉が現れた。ファイはセレンに対してウインクすると、その扉を開けて、二人はその部屋に入った。そして、パチンと指を鳴らすとランプの日が付き、その部屋の全貌が明らかになる。 

「魔法陣!!」 

セレンは驚いた。一目ではわかる大きな空間系の魔法陣。魔法の中でも空間系の魔法に関しては秘匿か禁止されているものが多い。アイテムボックスも例外ではない。それは別に移動が自由になるからとかそういう理由ではない。純粋に死ぬ。空間魔術の欠点はその一点のみで自由に使えればそれは楽なのだが、正確に緻密に魔法陣を展開し、詠唱できなければ亜空間に放り込まれるか、意図しない場所へ飛ばされてそのまま死ぬ。例として研究が盛んだった時期、何人もの魔術師が試みたが悉く海のど真ん中、中にはダンジョンの最下層、酷いものは畑を耕していた農民が土の中から死体を見つけるという事態が相次いだ。だからこそ空間系の魔法陣が設置されていること事態に対して驚きを隠せない。 

「この魔法陣は私とファルシオンさんで作り上げた移動系の空間魔法です。他人がこれを見るのは親友であるヘンリー、そして船員とあなただけ。つまり・・・。」 

「秘密と言うわけですか・・・。」 

口を割れば殺されてもしょうがないと言ったたぐいのものをセレンに見せる。つまり、事態は急を要するということだろう。 

「よろしくお願いします。あなたに手を出せば私達はモグラさんと戦って死ぬことになります。それだけは避けねばなりません。まあ、女性に手を掛けることは私にはないので、安心していただいて大丈夫ですよ。」 

といたずらっ子のように頭を掻きながらそう話す。でも、目は本気だ。 

「了解しました。それに私、こう見えても口の堅さだけは自信あるんで!」 

「そうでしょうな。忍耐力だけでいえばあなたはこの国一番でしょう。彼をずっと待っていたのですからね。」 

パンッと両手を合掌する。 

「さ、ここで話をしていないで行きましょう。ようこそレディー、我らセンジュブリカ残党の巣窟、海賊風海へ。」 
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