失格勇者の剣聖無双

来栖川

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悔恨と戦争2

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「ま、魔族だ!魔族がいるぞ!」 

(フームこの状況はまずいの。) 

モグラが森に突っ込んでいった後、数十分して再び魔物が攻めてきた。今度は魔族も数人いる。おそらくギルティアの部下だろうが、本気で妖精の村を潰す気なのだろう。 

(皆構えよ!隊列を整えるのだ!雑魚は儂が相手をする。怯むな!) 

「貴様らは今日で終わりだ!ギルティア様が後方にいるのだ!蹂躙せよ!蹂躙せよ!」 

魔族は魔術を詠唱すると打ってきた。それを受け、数人が吹っ飛ぶ。それに負けじと妖精族の後方にいる魔術隊が詠唱し、それぞれの属性の魔術を放つとそれに合わせて歩兵隊が突撃する。向こうの歩兵のすべてが魔物であるため、隊列はあまりとれていない。地の利も妖精たちにある。だが、数と力は向こうが上であり、元々戦いで消耗していた者たちは次々に打たれていく。 

「イフェーリカ様、ここはもう持ちません!引いてください!」 

クルルとゲイルはイフェーリカの前に立つとそう進言する。だが、イフェーリカは引かない。 

(あの者がギルティアを打ち倒すまで何とか持ちこたえい!) 

イフェーリカは鼓舞するがこの状況だ。30分ほどで瓦解してしまうだろう。それにイフェーリカは魔法を放つことが出来ない。彼が魔法を放つと妖精の村とその周辺は炎の海にと化してしまう。それはすべての終わりを指していた。 

「何とかならないか!?畜生!」 

「もう・・・終わりなのでしょうか。お爺ちゃん・・・。」 

そう言ってシルフィーはイフェーリカの袖をひっぱりか細い声を出す。 

(・・・・。) 

イフェーリカ何も言わず、俯いた。 

(これは儂の不振によるものじゃ。すまぬシルフィーよ。お前だけでも、お前だけでも逃げておくれ。) 

「嫌だ!私は逃げないよ!私はこの村の出身なの!この村を捨てて逃げる!みんな死んでいくのに!私だって戦うよ!」 

その時だった。 

「よく言った!勇敢なる若い娘よ!この状況でそれを言うとは君は大成するぞ!」 

どこからともなく声が聞こえる。周りを見回しても何もない。だが、空を見上げた時、月もなく、星もない。その異変に気付いたのは、クルルとゲイル、そしてイフェーリカだった。 

(む、何じゃ、何なのじゃ!あのバカでかい船は!) 

空には船が浮かんでいた。髑髏マークが描かれ、脇には海と風の紋様が描かれている。魔族は空を見て、なんだなんだと言っている。そして、男や女の雄たけびが聞こえたかと思ったら、次々と飛び降りるもの、縄梯子が掛けられ、そこから降りてくるものが魔王軍を蹴散らしていく。魔族の一人が声を挙げる。 

「あ、あ、あれは海賊風海だーーーーーーーーー!!!!」 

海賊風海は魔族でも有名だった。あの髑髏を見たら背を向けて逃げ出せ。あれに戦いを挑むものはよほどの馬鹿か無謀なものだ。子供のころからそう教わる。実際、とある魔族の砦は一人残らず殺され、溜めてあった財宝はひとつ残らず奪われるということがあり、魔族にとって恐怖の代名詞となっていた。 

「に、逃げろーーー!!殺されああああああああああああ!!!」 

魔族と魔物の叫び声がそこかしこから聞こえる。 

妖精族は立ち尽くし、イフェーリカ達は棒のように立っていた。 

「イフェーリカ殿ご無事か!!」 

隻腕のでかい剣を肩に背負った大男がイフェーリカに駆け寄った。そこには槍を持った身なりの整った男もいる。 

(ファイゼンベルグ、アーグストか!) 

「申し訳ございません!遅れましたことをお詫び申し上げます!」 

ファイゼンベルグとアーグストは跪き、謝罪を述べる。 

「して状況は!」 

(全く、わしが知りたいくらいじゃよ。) 

シルフィー、ゲイル、クルルの三人は目が白くなり呆然としている。え、どういう状況?というとファイはシルフィーに声を掛ける。 

「シルフィー殿、あなたの要請を受け、助けに来ました。あなたがいなければ領主二人の首が飛び、世界は魔王の手に落ちていました。本当にありがとう。」 

そう言うと「へっ?」と言いながらファイを見る。 

「あの、大丈夫なんでしょうか?」 

「がははは!娘っ子!我らを見て気絶しておる!」 

(全く、二人とも来るなら普通に来い!3人とも気を失ってしまったではないか!) 

「はは、海賊にそれを言いますか?それは無理ですね。船長は派手なのが好きですし。」 

(はあ、もう好きにせい・・・心臓がさけそうじゃ。まったく今どきは空から降ってくるのが、流行っているのか?) 

「今時と言うと俺たち以外に降って来たみたいな言い方ですな。」 

(実はの・・・。) 

イフェーリカは事の経緯を話した。妖精村が襲撃を受けた際、モグラが助けてくれたこと。走り去ったことを。するとギルド長はやはりそうでしたか。と言った。 

「それで気になる点がもう一つ・・・。」 

(なんじゃ?) 

「ファルシオン殿は来られましたか?」 

(ああいたぞ。奴め姿を隠しておった。) 

「というと、モグラ君を付けていたのではないですか?」 

(想像通りじゃ。なにやら目を輝かせておったぞ。) 

「そうですか。なら向こうは問題ありませんね。」 

(ほう。お主、聖剣の勇者を信じているようじゃな。) 

「ええ、私は信じていましたよ。」 

そう話していると、後方から小さい修道服を着た人間が駆け寄ってくる。 

「イフェーリカ様、ご無事で何よりです。」 

セレンはイフェーリカに跪いた。ほうと呟き彼女の顔を見ると驚く。以前会った時は、死んだ者の顔をしていたが、見違えるほどに生気を取り戻している。 

(ほっほっほ。わしゃ無事じゃ。それよりお主顔色だいぶ良くなったな。少し、ほんのすこーーっし心配しとったわい。) 

「?何がでしょうか?」 

(わからなければそれでいいんじゃよ。それより傷が深いものが多くいる。癒しておいてくれないか?) 

「はい!」 

セレンは駆け出し、妖精の手当てを始める。それを見たイフェーリカはなるほどな。と呟いた。 

(ファイゼンベルグ・・・貴様が奴を信頼している理由がわかったよ。) 

「でしょ。」 

「むーーー!!おい、ファイよ!俺たちも行こう!早くしないとあの暴走女2人に全部倒されてしまう!楽しみで仕方ないのだ!!」 

「ええそうですね。久々に私も暴れたいですし、行きましょう!それでは私たちはこの辺で。」 

(おい、待て二人とも・・・せめて村だけは破壊せんでくれよ。) 

にこりと笑い不穏な表情でファイは言った。 

「それはーしょうがないということで!では!」 

(ちょ、待て・・・貴様らーーー待たんかーい!!!) 

二人の背中を見ながらイフェーリカはしょうの無い奴らだと愚痴をこぼす。三人は相変わらず、立ったまま失神していた。後に、妖怪跋扈の大戦争と呼ばれたそれは実際には狂気に満ちた人間たちが魔族を殲滅した戦いとして歴史に残ることになった。
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