失格勇者の剣聖無双

来栖川

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束の間の休息4

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「はい、次そこ!まだぬめりが取れとらんじゃないかモグラ!」 

「も、もうその辺に!」 

「だ・ま・れ!貴様がこの国の王子だとしても、この宿屋は僕の国だ!」 

「貴様!王子に対して何たる無礼!」 

「何をいうとるんや・・・あーん・・・剣持つならモップもてやおっさん。」 

 あの事件が起こってから、フェルトの様子がおかしくなった。いつもの優しいフェルトはどこへやら・・・完全にヤクザと化していた。各面々はモップを持たされ、ハーブの香りのする液体を付け、床や窓を拭く。その作業を20の鐘が鳴るまでやっている。国の王子だというのに掃除をやらされており、カーリーンとルドルフは溜まらず不敬罪で首を刎ねるというが、変態王子は素直に従うように言いつける。それを見てモグラは何かあったら俺が護るとモップを強く握るのだった。 

 だが、21の鐘が鳴った時には匂いが取れ、宿は清潔になっていた。相変わらずこの店の主人であるガルナは部屋で伸びている。呼吸はしているが、意識は無い。セレンとファイゼンベルグは時折交代しながら面倒を見ている。 

「はー疲れた。」 

「はは、お疲れ様。」 

「さ、さすがの私ももう限界です。王子は全く疲れてませんね。」 

「ルドルフ・・・情けないぞ。エルドラドの船の掃除はこの10倍だ。もっと鍛えなきゃね。」 

カーリーン、ルドルフは机に突っ伏している。フェルトは奥のキッチンで料理を始めた。フンフーントントンと鼻歌と共に小気味よい音が聞こえる。なにやら大きな魚を持っていたが、それを調理している様子だ。良い匂いがする。するとガランガランと音を立てて新しい客が入ってくる。 

「はーい。掃除ご苦労様。」 

「ファルシオン殿。どうしてここへ。」 

「ん?ここはフェルト君の宿屋でしょ。料理を食べに来たのだけど?」 

「え?料理?」 

「あ、ファル姉。久しぶり!」 

「なんと、ファルシオン殿とフェルト殿は知り合いだったのですか。」 

「あ、うん。会うのは200年ぶりかな。僕が子供の頃だったからエルフの里にいた時にあったんだよ。母さんの店の常連さんで元々パーティーを組んでたらしいから。でも、良くここだってわかったね。」 

「ああ、あなた湖で釣りしてたでしょ。それから付けてきてたんだけど、あなたが入っていったところから凄いにおいがしてね。」 

「ちょっとは助けてよ。」 

「あはは、冗談?言うようになったわね。」 

それを聞いて、そこにいた者達は驚いた。いや、驚くだろう。悠久の魔導士のパーティーと言えば、もはや伝説となっている。ダンジョンの地図はほとんど彼女たちが書いたものだし、優れた現代の魔導書、魔術書はほとんどが彼女達が書いたものだ。フェルトがそんな伝説のエルフの血を引いている。もはや、王族よりも権威を持っているのに等しいのである。だが、 

「フェルト殿はどうしてコックになられたのですか?」 

カーリーンは聞いた。どう考えても血筋を考えれば魔法、魔術を極めて魔導士になった方がいい。料理系のギフトを神からもらい受けたとしても、魔力自体は人族の中でも高いはずだ。だが、フェルトは首を振った。 

「僕は母さんが作った料理が好きなんですよ。僕のギフトは錬金術師ですが、エリクサーを作った時、結局それが最終地点だった。どんなに優れたものを作成できたとしてもその薬を超えられなかった。できたものは全て劣化したもの・・・結局、僕が作りたかったものは何なのか考えたんですよ。そしたら、料理に行きつきました。料理は無限です。人によって作るものが全く違う。同じレシピのはずなのに全く違うものが出来る。だから料理人になったんです。」 

「へ?エリクサー?」 

「つ、作れるのですか。」 

「作れますよ。素材さえあれば・・・ていっても伝説級、神話級の素材が多数必要ですけど。」 

「はは、フェルト殿は前から思っていましたが、本当に料理以外にしか興味が無いのですね。」 

「そうですね。結局、素材さえあれば何とでもなってしまいますから。」 

いやいやいや、と皆口をそろえて否定する。前述したが5年に一度、錬金術師協会が優れたものを選出し、出来るか出来ないかのものを、いとも簡単に出来ると言った。それをフェルトに聞くと、 

「ああ、錬金術師協会のエリクサーですか。駄目ですね。素材がそもそも違います。あれは粗悪品ですよ。良くて半分の効果しか得られません。そんなもの使っちゃえばいいのに・・・」 

と答えた。それを聞いた時、ああ本当なんだと驚愕する。 

「化け物しかいないのかこの宿屋は・・・。」 

「ルドルフ。世間は狭いものだろ。不敬罪になんてして見ろ。僕たちがどうなるかわからない。」 

「そうですね。危うく生ける伝説を殺してしまうところでした。」 

「?。良くわかりませんが、皆さん料理が出来ましたよ。今日は自信作です。モグラさん、出しましょうか。」 

「そうですね。生ものもありますし、出しましょう。」 

「あ、私、ワインで!」 

「じゃあ私はエールをもらおうか。」 

「では、私もエールをお頼みします。」 

「僕は白ワインで頼むよ。」 

「はいはい、じゃあ上等なものを出しますね。」 

そう言って、カルパッチョ、ステーキ、唐揚げなど多種多様な料理が運ばれて来る。面々は料理を食べると、王城の料理人よりも上手いとヘンリーは太鼓判を押した。時々ヘンリーの父親である現国王がシルドの街に出かけていた理由がわかる。 

「なるほどね。親父がお忍びで出かけるわけだ。」 

「国王様が何か?」 

「いや、何でもない。それよりもルドルフは時々ここにきて食べているんだろう。隠しているとは・・・まったく不敬だぞ。」 

「め、滅相もございません。誘おうとはしているのですが、なにぶん、誘おうにも時々冒険者として活躍していて、いないことが多いではないですか。」 

「はは、ごめんごめん。でも、今度は誘ってくれよ。」 

「わかりました。」 

騒がしく、楽しいときはすぐに終わってしまう。ヘンリーは自分の父親がカウンターで飲んでいる姿を想像して、微笑んだ。 
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