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束の間の休息5
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時は過ぎ、朝焼けが気持ちよく窓から入る。ガルナが目覚めるとベッドの脇にセレンが寝ていた。
(あれ、私、どうしたんだっけ。なんか記憶が曖昧だな~。なんでここにセレンがいるんだ?)
ガルナの記憶は2日前からあやふやだった。たしか、誰かに誘われ、騎士団本部前まで行って、何かをぼこぼこにしたことは覚えている。
(誰だっけ。ふぁ~・・・それにしても朝か。起きるかね。)
そう思って立ち上がると、やけにいい匂いがする。ハーブのさわやかな香りだ。どうしたのだろう。フェルトがハーブティーでも入れてくれているのだろうか。そう思い、階段を降りると、王子一行が机や床で寝ている。ファルシオンはワイングラス片手に壁にもたれかかりながら寝ていた。
「え、何があった?」
「起きましたか。」
「え、モグラ!あんたいつ帰ってきたの!」
モグラが厨房から出てくる。ガルナは驚いた。
「き、記憶が無いのですね。というかそれだけ酒を飲んで良くぴんぴんしておられますね。」
「い、いやー・・・ここ数日間の記憶があやふやで・・・。」
そう言うと、モグラは軽い朝食を作り、二人で食べる。サンドイッチを頬張りながら何があったのかをガルナに伝えた。ガルナはコロコロ表情を変えて聞いている。その話しをしていてモグラはああ本当に覚えていないんだなと理解する。
「へーじゃあの際どい恰好したおど踊り子ちゃんが悠久の魔導士なんだ。なんか、凄い組み合わせでギルティアを倒したのね。」
「ええ・・・。」
少しの間、双方無言となる。ガルナは天井を見つめている。それを見てモグラは何か言おうとするが何も言葉が出てこない。ギルティア討伐は任務であり、過去の清算でもあるが、ガルナにとってそれは何なのだろう。ここ数週間共に暮らしてわかったのだが、彼女はそあまり気にしないようにしていたという方が正しい。自分が戻ってきて、いろいろ思うところはあっただろうが、あえて触れずに来ていたというのに、ここに来て討伐してきたと報告する自分は滑稽に見える。復讐・・・その対象に自分も入っているはずだ。ルドルフもそうだったように自分を恨んでいる者など何人もいるだろう。
「あーあ、全くそうかよ。」
ガルナは大声を出し、沈黙を破った。ガリガリと頭を掻きながら、乱暴に吐き捨てる。
「ガルナ殿自分は・・・。」
「そんなサーカスみたいな集団に倒されて、ギルティアにとってはいい気味だな。」
「へっ?」
「私も見て見たかったよ。そんな面白集団に倒される奴の顔をよ。大層悔しかっただろうさ。」
二ッと笑いながら、モグラの眼を見る。
「気にしてはござらんのか。拙者は・・・。」
「それ以上は言うなよ。私はあんたが帰ってきてよかったと思ってる。それも自分を鍛えなおしてきたんだ。ギルティアを倒せるほどによ。本当は気にしてたさ。あんたが戦って、死んだ報告を受けた時、夫も皆、皆死んだ・・・。帰ってきたのは、あんたのプレートと仲間だけ・・・。私は勇者であるあんたを恨んでた。ただ、数日後、戦えなくなって神殿勤めになったセレンの顔を見た時、その考え方は無くなった。お前に対して一番許せないことは何かわかるか?」
モグラは首を横に振ったが、理解はしていた。
「セレンはなあれから無理して笑うようになった。心配かけないようにってな。でも・・・」
あんたが死んでから、毎朝目の下を真っ赤にしてひきつった笑顔でいた彼女に一報も入れなかったことだ。
モグラはグッと手を握った。それは自分の弱さだとかそういうのでない。一番自分を思ってくれた人に対してやってはならない非礼。
「ガルナ殿、すま・・・いや、セレンを支えてくれて感謝する。自分が礼を失したばっかりに迷惑をかけてしまった。だが、もう彼女を一人にしない。いや、一人ではなかったな。俺は彼女をもう離さない。」
「わかってんじゃねーの。上出来だね。」
ガルナは階段に目配せする。ん?と思い見るとセレンが隠れて聞いていた。
「い、いや、セレン。これは・・・。」
「ぶひゃははっは。」
思わずガルナは噴き出した。大声で笑ったせいで、寝ていた面々が起きだした。何だ何だと目を擦りながら、モグラを見る。
「い、いや、これは・・・」
両者赤面し、顔から火が出そうだった。そして、セレンは逃げ出した。
「セレーーーーーーーーーン!」
そう言うが、宿屋を飛び出して、神殿の方に走っていった。追いかけようとするが、ファルシオンが掴みかかり、「良くも気持ちよく寝てたのに起こしてくれたわね!」とモグラを押さえつける。手を広げるがもうそこにセレンはいなかった。
「ファル姉、離してくれ!拙者は・・・・拙者はーーーーー!」
モグラは叫んだ。腹の底から叫んでいる。ガルナは腹を抱えて笑い転げた。後に残ったのはモグラのううという悲しい・・・ただただ悲しい悲痛の声だけだった。
(あれ、私、どうしたんだっけ。なんか記憶が曖昧だな~。なんでここにセレンがいるんだ?)
ガルナの記憶は2日前からあやふやだった。たしか、誰かに誘われ、騎士団本部前まで行って、何かをぼこぼこにしたことは覚えている。
(誰だっけ。ふぁ~・・・それにしても朝か。起きるかね。)
そう思って立ち上がると、やけにいい匂いがする。ハーブのさわやかな香りだ。どうしたのだろう。フェルトがハーブティーでも入れてくれているのだろうか。そう思い、階段を降りると、王子一行が机や床で寝ている。ファルシオンはワイングラス片手に壁にもたれかかりながら寝ていた。
「え、何があった?」
「起きましたか。」
「え、モグラ!あんたいつ帰ってきたの!」
モグラが厨房から出てくる。ガルナは驚いた。
「き、記憶が無いのですね。というかそれだけ酒を飲んで良くぴんぴんしておられますね。」
「い、いやー・・・ここ数日間の記憶があやふやで・・・。」
そう言うと、モグラは軽い朝食を作り、二人で食べる。サンドイッチを頬張りながら何があったのかをガルナに伝えた。ガルナはコロコロ表情を変えて聞いている。その話しをしていてモグラはああ本当に覚えていないんだなと理解する。
「へーじゃあの際どい恰好したおど踊り子ちゃんが悠久の魔導士なんだ。なんか、凄い組み合わせでギルティアを倒したのね。」
「ええ・・・。」
少しの間、双方無言となる。ガルナは天井を見つめている。それを見てモグラは何か言おうとするが何も言葉が出てこない。ギルティア討伐は任務であり、過去の清算でもあるが、ガルナにとってそれは何なのだろう。ここ数週間共に暮らしてわかったのだが、彼女はそあまり気にしないようにしていたという方が正しい。自分が戻ってきて、いろいろ思うところはあっただろうが、あえて触れずに来ていたというのに、ここに来て討伐してきたと報告する自分は滑稽に見える。復讐・・・その対象に自分も入っているはずだ。ルドルフもそうだったように自分を恨んでいる者など何人もいるだろう。
「あーあ、全くそうかよ。」
ガルナは大声を出し、沈黙を破った。ガリガリと頭を掻きながら、乱暴に吐き捨てる。
「ガルナ殿自分は・・・。」
「そんなサーカスみたいな集団に倒されて、ギルティアにとってはいい気味だな。」
「へっ?」
「私も見て見たかったよ。そんな面白集団に倒される奴の顔をよ。大層悔しかっただろうさ。」
二ッと笑いながら、モグラの眼を見る。
「気にしてはござらんのか。拙者は・・・。」
「それ以上は言うなよ。私はあんたが帰ってきてよかったと思ってる。それも自分を鍛えなおしてきたんだ。ギルティアを倒せるほどによ。本当は気にしてたさ。あんたが戦って、死んだ報告を受けた時、夫も皆、皆死んだ・・・。帰ってきたのは、あんたのプレートと仲間だけ・・・。私は勇者であるあんたを恨んでた。ただ、数日後、戦えなくなって神殿勤めになったセレンの顔を見た時、その考え方は無くなった。お前に対して一番許せないことは何かわかるか?」
モグラは首を横に振ったが、理解はしていた。
「セレンはなあれから無理して笑うようになった。心配かけないようにってな。でも・・・」
あんたが死んでから、毎朝目の下を真っ赤にしてひきつった笑顔でいた彼女に一報も入れなかったことだ。
モグラはグッと手を握った。それは自分の弱さだとかそういうのでない。一番自分を思ってくれた人に対してやってはならない非礼。
「ガルナ殿、すま・・・いや、セレンを支えてくれて感謝する。自分が礼を失したばっかりに迷惑をかけてしまった。だが、もう彼女を一人にしない。いや、一人ではなかったな。俺は彼女をもう離さない。」
「わかってんじゃねーの。上出来だね。」
ガルナは階段に目配せする。ん?と思い見るとセレンが隠れて聞いていた。
「い、いや、セレン。これは・・・。」
「ぶひゃははっは。」
思わずガルナは噴き出した。大声で笑ったせいで、寝ていた面々が起きだした。何だ何だと目を擦りながら、モグラを見る。
「い、いや、これは・・・」
両者赤面し、顔から火が出そうだった。そして、セレンは逃げ出した。
「セレーーーーーーーーーン!」
そう言うが、宿屋を飛び出して、神殿の方に走っていった。追いかけようとするが、ファルシオンが掴みかかり、「良くも気持ちよく寝てたのに起こしてくれたわね!」とモグラを押さえつける。手を広げるがもうそこにセレンはいなかった。
「ファル姉、離してくれ!拙者は・・・・拙者はーーーーー!」
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