【R18】特殊スキルは聖水でした。

日向沖

文字の大きさ
36 / 97
1章 王都ルーデリー 出会い編

1-35 ダンジョンと魔物

しおりを挟む
 ウルザたちは先に奥へと行ってしまったが、8層で少し休憩する事にする。

 話によると、池の水は魔力濃度が高い為直接は飲めないが、吸魔石(少しずつ周囲の魔力を吸収する魔石)で魔力を吸わせると、飲むことが可能だとか(ただし煮沸したほうが良い)。

「そんな便利な魔石もあるんだ…」

「吸魔石自体は珍しいものではありません。
 ただ、吸収できる魔力の量や速度、さらには吸収した魔力の放出効率によってA級からE級まで分類されます。
 C級以上は高価な為個人で持っている人は多くありません。」

 ランクの高い吸魔石は公共事業等で国や街が保有しているのがほとんどらしい。
 使い方としては電池のように魔力を蓄えるイメージだろうか。

 もう一つ気になっていた事も尋ねてみる。

「こういうオアシスみたいなフロアでも魔物って湧くの?」

 その問いにはリーズが答える。

「湧くよ、湧くっていうか、生まれる?」

 なぜか疑問形だ。

「魔物はダンジョンの子供だから。
 ダンジョンの壁の中には卵を放出する部分が有って、魔物はそこから生まれる。
 だから、ダンジョンによって違うけど、こういうオアシスみたいなフロアでも生まれるところは生まれる。」

 ただし、卵を放出する場所は簡単には増えない(変わらない)為、オアシスとか関係なく魔物の生まれないエリアを休息場所にするのだとか。

 大きなダンジョンにもなると、中間に小さな休憩用の町もあるのだとか。
 いつかそんな場所にも行ってみたい。

ーーーーーーーーー

 休息を終えると先へ進む。

 10層まで来たが、ここまでただの一匹も魔物を見ていない。

「ウルガが張り切ってるんでしょ、たぶん。」

 リーズはため息をつく。
 恐らく俺のせいだろう。

 そのまま11層まで進むと、大きな衝撃音が聞こえてくる。
 誰かが戦っているようだ。

「ウォォォォォォォ~~!!!!」
 
 シカのような角をはやした2足歩行の魔物とウルガが戦闘を行っている。
 魔物の大きさはウルガの倍はありそうだ。

 ドーン、ガシャーン

 ウルザはというと、それを少し離れたところで見守り、俺たちが入ってきたことに気付く余裕すらある。

「早かったね。」

 近づくとそう声を掛けられる。

「あんたらのせいで、この子たちのレベル上げが進まないわよ。」

「ごめん、ごめん。
 あのバカ張り切っちゃって。」

 どう見てもウルガの劣勢だが、見てるだけでいいのだろうか?

「いいんだよ、勝も負けるも自分次第さ。
 ただ、死なせない為に私がいるんだ。」

 なんてかっこいいセリフだ。
 前の上司に聞かせてやりたい。

ーーーーーーーーー

「ウゥゥゥウォォォォォオオォォオオオオ!!」

 俺は目を疑った。
 さっきまで劣勢だったウルガは、全身を毛でおおわれたかと思うと筋肉が増強して、まるでライオンそのもののような見た目になったのだ。
 その状態で反撃に出てシカの魔物にダメージを与える。

「あれは獣人化です。
 獣人系の「亜人」が持つ特殊スキルです。」

 様々な種族がいることは聞いていたが、今の説明で理解する。
 やはりこの世界でも「人間」が一般的で、それ以外を「亜人」と位置付けているのだろう。
 この国では差別はなくとも、分け方に名残りはある。

「種族によって違いますが、体力、肉体、魔力、何かしらに犠牲を強いるので、あまり長くはもちません。」

 奥義って感じでかっこいいが、浸っている暇もなさそうだ。

「あれ、まずいんじゃないか?」

「そうですね、獣人化しても力の差は歴然です。」

「いい機会さね、あんたたちが行ってきな!」

 そういってウルザは俺とミーシャを戦場に放り投げる。

 目の前には倒れたウルガと、重い攻撃を加えようとするシカ。

 倒れたウルガにシカの一撃が入る前にミーシャが蹴りで進路を逸らす。

「ウルガ!
 私の代わりにその子たちを援護に入れるよ!
 悔しかったら獣人化が解けるまでに倒して見せな!」

 その言葉を聞き満身創痍のウルガは立ち上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...