わからせ公国

FF F2000

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第0章

台風公国

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重々しく、それでいて力強い、そしてかん高いエンジン音を響かせながら、第24独立遊撃艦隊は激しい嵐の中一路本国へと向かっていた。
客人が乗っているため通常であればわざわざこんな悪天候の中進むなんてことは普通はしないのだが、目的地がこの先にあるのだから仕方がない。
嵐が止むことはないことを分かっているため艦隊は前進を続けた。

「……ぎもぢわるい゛…吐きそう……」
揺れる船内、当たり前のことではあるが客人は絶賛船酔いに襲われている最中だった。
「こんなに揺れるなんて思ってなかったんだもん…うぷ…」
嵐の中を通るから、かなり揺れると乗艦時に散々注意を受けていたのだが、客人は言う。
「だってこんなに揺れるなんて誰も思わないじゃないか‼︎」
実際かなり揺れてはいるもののこれでも他国の船よりは全然揺れてないほうである。
「うそつけ!これで揺れてないって言い張るんだったらよその船なんて今頃海の藻屑だぜ!?」
ご名答。実際昔に侵略しに来ようときた奴らは大抵嵐に飲まれているのだ。
なんならうちの国の船もときどき…
「は?」
そんなジョークを飛ばしている間に、ついに嵐を抜けられそうだ。
「お客人、もうすぐ抜けるから辛抱してくれ!」
そう言われ男は外を見た。
なるほど確かにさっきまでの揺れはウソみたいになくなり、陽まで差し込んできた。
「おいおいどうなってるんだよコレ」
さて、もうそろそろだ。
視界には緑豊かな島が見えてきた。
この島こそ我々の故郷であり、目的地でもあるロネリネス公国である。
直径130km程度の小さな島であるが、周囲は約800km、沿岸が複雑に入り組んでいるものの、ちょうどアイルランドより2回り小さい位のサイズ感だ。
「へぇ…コレが難攻不落の超科学要塞国家の台風公国か…思いの外きれいな島だな…」
ネーミングセンスについては触れないでおくとしよう。
だがしかし要塞国家というのは非常に的をいた表現だ。
ロネリネス公国は敵対する国や組織に侵略されることがないよう、しかし海岸の景観に配慮して石積みの防壁がぐるりと島を囲っているのだ。
さらに防壁には沿岸砲台としての役割もあるため艦砲やミサイルなどなど設置されている。
おまけに島中に秘匿基地やら秘密砲台なんていうビックリドッキリメカまであるため、まさに「要塞」のような島だった。
また島を囲むように発生している嵐はほぼ止むことはなく、中央に島の分穴が空いているため台風のようにも見えるのだ。

「それにしてもすごいな…あっちゃこっちゃに道が走ってるし線路まで敷いてある。」
小さな国ではあるが、世界屈指の超文明国家なのだ。しっかりとした交通網が敷かれている。
それに今どき大抵の国には鉄道に道路くらいあるだろう。
余談だが、この道はもともと防衛隊の戦力を迅速に移動させる為に作られたもので、線路に関しても装甲列車や列車砲が展開するためのものだったりするのだが、ここではあまり触れないでおこう。

さてさて、いよいよ帰港の瞬間である。

タグボートの助けを借りることなく接舷し、タラップが降りると客人は足早に船を降りた。
「ここが首都か~これまた立派だな。近未来な街に巨大な港、山上には中世っぽい城まで立ってるし、いろんな船も出入りしてて活気があるなぁ‼︎」
「ふふふ残念だがここは首都じゃないぞ。
もっとも、そういうふうに見えてしまうのもある意味仕方がないがな」
「誰だアンタ、それに一体どういう意味だ…?」
どこからか現れた男はすぐに切り返す。
「どういうことだと思う?」
「質問に質問で返すなよ。んー…実は首都はなくて同じくらいの街が複数あるとかか?」
「ブッブー、ハズレー!!」
(ウザッ...!)
客人は間に触るような物言いに苛立ちを覚えたが、男は気にせずに続ける。
「ここは海運の要衝ではあるが実はそれだけで首都でもなんでもないんだ。
これだけちっぽけな島だ。それに地図にも載っていなけりゃ衛星で覗き見もできん。
情報がない中敵が攻め込んで来てこの街並みを見てみたらどう思う?」
「...そりゃあさっきの俺と同じように思うだろ。周りには森しかないみたいだし」
「そういうことだ。ここを首都だと思っった敵さんを攻め込ませて、住民の非難した街ごと敵を吹っ飛ばしたりもできるって訳だ。
ちなみに本当の首都はこの街から少し行ったところにあるんだが、あそこは巨大砲やシールドなんかで守られていて...とここまでだ。ここから先はまた後で話そう。」
男はそう言って歩き出した。
「おいおい、そこで切るなんて酷いじゃないか。ちょっと待てよ!」
そう言って客前は男を追いかけようとして、ふと振り返る。
「それにしてもこの船、改めて見るとかなりでかいよなあ…」
それもそのはず、彼が乗っていたのは300m越えの大型艦、航空重巡洋艦なのだから。
全長304m、三胴型の船であるこの艦は2本の飛行甲板に5機の15.5cm連装砲、対艦、対空ミサイル等々を装備し最高速は50kt、艦載機も30機程乗っている。

外洋に出る(他国の領土や領海に勝手に作った秘密基地や海洋プラットフォーム型の拠点を置いている)艦隊には大体1~2隻程度配備されているくらいには使いやすい船であるためよく見る船でもある。

先程の男を探そうと周りを見渡すと、駐車場にいた。どうやら待ってくれていたらしい。
客人がこちらに着くや否や、
「さてどこに行きたい?」
と聞いてきた。
あらかじめ渡されていた資料を読んでいた客人は少し考えた後、
「じゃあ歴史博物館に行きたいかな」
「ほぉう、中々勤勉なこった…
滅多に来られない場所なのにお勉強とはまったくエライねえ」
そう言って男は今度は道路に向かって歩き始めた。
「おいおい、車で行くんじゃないのかよ?」
「博物館の駐車場は狭くてなぁ。それに近いからな、路面電車で行った方が車よりも早く着くんだよ。」
ちょうどやってきた路面電車に2人は乗り込んだ。

路面電車に乗り揺られること数分、博物館前の駅に到着した。
「よしついたz」
「うおおお⁉︎なんだこれ⁉︎戦艦か?戦艦なのか?ウホホーイ!」
「~~~!!!」
「あれ、どうしたの?」
「じゃかましい!耳が壊れるかと思ったぞ‼︎
…まあいい、さっさと博物館に入ろう。」
「えー」
「えーじゃないの。
それに博物館に説明が色々ついてるが、前知識がないとわからんことも多いからな。
解説がなくてもいいならこのまま置いていくぞ?」
「よし、じゃあ行こうか」
2人の姿は博物館の中へ消えていった。
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