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魔王の娘と冬 中
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あーー、とりあえず服買いに行こうか。これから先どんどん寒くなっていくし、暖かい服は合った方がいいと思うんだ」
天を仰ぐのを止めた勇者はマーナにそう言って笑っていた。マーナの目が点になってから勇者を見る。
「でも私お金持ってないから……」
「気にしなくても大丈夫だよ。俺が好きでやることだし、子供が寒い日に暖かい服を着てないのを見るのは嫌なんだよ。暖かい格好をして欲しい。だからね、俺のためだと思って」
マーナに視線を合わせた勇者が気にしないでと笑う。マーナは納得できなさそうに唇を尖らせていたが、やがては頷いていた。頷くマーナにほっと胸をなでおろして勇者はそれでは買い物に行こうと立ち上がる。でもそのすぐ後にああと声を上げてマーナを見下ろしていた。
「……服を買いに行くにも今その服しかないん、だよね。あーー、どうしよう。服は絶対買わなくちゃいけないだろうけど、でもその服で外にでたら絶対に寒いし……。俺が買いに行くにも女の子の服とか分からないしな……
あーー。こういう時どうしたらいいんだ」
がしがしと勇者は乱暴に己の頭を撫でていく。その姿を見ながらマーナはどうしたらいいのだろうかときょろきょろと視線を泳がしていた。冬など体験したこともないから勇者がそこまで悩む理由が分からない中、鼻水が垂れてずるりとすすっていた。気付いた勇者がまだ寒い。もう少し暖炉に近づいて。布団もう一枚被ろうかと慌てて取りに走っていた。
勇者の慌てようにまたマーナの首が傾いてしまう。
暖かいもの飲もうかと熱いマグカップを手渡されてマーナはそれをじっと見つめた。勇者はバタバタと動いて洋服ダンスの中を見ている。
んーーと何かを考えては唸っていた。
「冬服は絶対必要。雪だって降るだろうし……」
雪と聞いてマーナの肩が大きく跳ねていた。勇者の方を振り向いてはワクワクとした態度を見せるが、勇者は集中していてそれには気付かなかった。あーーと一頻り頭を抱えてからそうだとマーナの方を見る。
ごめんなんだけどとそう言ってきていた勇者にマーナはワクワクとしていたのは引っ込めてどうしましたと答えた。もしよかったなんだけどと勇者の目元には深い皴ができて頼み込むみたいに手を合わせた。
「俺の服着てもらえないかな」
「へっ?」
「大きいし、おっさんの服だし、嫌だと思うけど今の寒さには代えられないと思うんだ。俺の服なら多少は防寒対策になる筈だから。頼む」
この通りと勇者が頭を上げる。その姿を見下ろしすマーナは呆然としながらもそれは良いですけどとそう答えてチア。
勇者の顔がぱっと輝いて、じゃあ、早速着替えようかと洋服ダンスの中から一着の服を取り出していた。
今勇者が来ている首までの服と似たような感じのものだが、それよりも生地が熱くもこもことしていそうなものだった。もらったけどあんまり着てないから匂いとかもついてないと思う。そう言いながら差し出してくる。
差し出された服を受け取った後、マーナはあたりを見渡し勇者を見た。自分の服を見下ろせば慌てて勇者は服の上から来てくれていいからね。あくまで寒さ対策のものだからとし少し早口で答えていた。
頷いてマーナは服の上から勇者の服はマーナにはでかくてひざ丈より下までずっぽり隠れてしまっていた。手もぶかぶかで指先すらも出ていない。
その姿を見て分かっていたことだろうが勇者は頭を抱えた。
「やっぱこうなるよね。あーー、これ動きにくいかな。とりあえず腕はまくろうか。ほら手出して」
自分も手を出しながら勇者が言うので、マーナは勇者の元に手を差し出していた。ぶらんと長い袖が垂れ下がる。
勇者の手が袖を一つ一つまくりだした。丁寧にまくって何重にもしたところでようやっとあーなの手が出てくる。ほっとしながらもう片方の手も同じようにしていた。
「これで手は大丈夫だね。足の方は大丈夫。動くのに支障ないかな。
もし動きにくかったら言ってね。切るか縫うかするから」
「大丈夫ですよ。それに暖かくてとても嬉しいです。ありがとうございます」
勇者は心配そうにマーナを見て、足や腕を確認していたが、マーナの方はというと嬉しそうに笑って胸元の所余っている布を握り締めていた。首筋の部分もマーナには大きく布がたくさん余って口元などがそれで隠れてしまっている。
「じゃあ、買い物に行こうか。あ、でもその前にちゃんと飲み物は飲んでね。しっかり体温めてから買いに行こう。まだ手もこんなに冷たいから温めないと
勇者がほっとして笑顔になりながら、マーナの体に触れていく。つめたくないかどうか確認しているだけとはいえ、大胆な触り方であった。
こそばゆいのにマーナの背が丸まっていく。大丈夫ですよとか細い声が出て初めて勇者は己の手のことに気付いて謝罪していた。
でも温めなくてはいけないからと最後にはまた手を繋いで、もうしばらくとそうしていた。
天を仰ぐのを止めた勇者はマーナにそう言って笑っていた。マーナの目が点になってから勇者を見る。
「でも私お金持ってないから……」
「気にしなくても大丈夫だよ。俺が好きでやることだし、子供が寒い日に暖かい服を着てないのを見るのは嫌なんだよ。暖かい格好をして欲しい。だからね、俺のためだと思って」
マーナに視線を合わせた勇者が気にしないでと笑う。マーナは納得できなさそうに唇を尖らせていたが、やがては頷いていた。頷くマーナにほっと胸をなでおろして勇者はそれでは買い物に行こうと立ち上がる。でもそのすぐ後にああと声を上げてマーナを見下ろしていた。
「……服を買いに行くにも今その服しかないん、だよね。あーー、どうしよう。服は絶対買わなくちゃいけないだろうけど、でもその服で外にでたら絶対に寒いし……。俺が買いに行くにも女の子の服とか分からないしな……
あーー。こういう時どうしたらいいんだ」
がしがしと勇者は乱暴に己の頭を撫でていく。その姿を見ながらマーナはどうしたらいいのだろうかときょろきょろと視線を泳がしていた。冬など体験したこともないから勇者がそこまで悩む理由が分からない中、鼻水が垂れてずるりとすすっていた。気付いた勇者がまだ寒い。もう少し暖炉に近づいて。布団もう一枚被ろうかと慌てて取りに走っていた。
勇者の慌てようにまたマーナの首が傾いてしまう。
暖かいもの飲もうかと熱いマグカップを手渡されてマーナはそれをじっと見つめた。勇者はバタバタと動いて洋服ダンスの中を見ている。
んーーと何かを考えては唸っていた。
「冬服は絶対必要。雪だって降るだろうし……」
雪と聞いてマーナの肩が大きく跳ねていた。勇者の方を振り向いてはワクワクとした態度を見せるが、勇者は集中していてそれには気付かなかった。あーーと一頻り頭を抱えてからそうだとマーナの方を見る。
ごめんなんだけどとそう言ってきていた勇者にマーナはワクワクとしていたのは引っ込めてどうしましたと答えた。もしよかったなんだけどと勇者の目元には深い皴ができて頼み込むみたいに手を合わせた。
「俺の服着てもらえないかな」
「へっ?」
「大きいし、おっさんの服だし、嫌だと思うけど今の寒さには代えられないと思うんだ。俺の服なら多少は防寒対策になる筈だから。頼む」
この通りと勇者が頭を上げる。その姿を見下ろしすマーナは呆然としながらもそれは良いですけどとそう答えてチア。
勇者の顔がぱっと輝いて、じゃあ、早速着替えようかと洋服ダンスの中から一着の服を取り出していた。
今勇者が来ている首までの服と似たような感じのものだが、それよりも生地が熱くもこもことしていそうなものだった。もらったけどあんまり着てないから匂いとかもついてないと思う。そう言いながら差し出してくる。
差し出された服を受け取った後、マーナはあたりを見渡し勇者を見た。自分の服を見下ろせば慌てて勇者は服の上から来てくれていいからね。あくまで寒さ対策のものだからとし少し早口で答えていた。
頷いてマーナは服の上から勇者の服はマーナにはでかくてひざ丈より下までずっぽり隠れてしまっていた。手もぶかぶかで指先すらも出ていない。
その姿を見て分かっていたことだろうが勇者は頭を抱えた。
「やっぱこうなるよね。あーー、これ動きにくいかな。とりあえず腕はまくろうか。ほら手出して」
自分も手を出しながら勇者が言うので、マーナは勇者の元に手を差し出していた。ぶらんと長い袖が垂れ下がる。
勇者の手が袖を一つ一つまくりだした。丁寧にまくって何重にもしたところでようやっとあーなの手が出てくる。ほっとしながらもう片方の手も同じようにしていた。
「これで手は大丈夫だね。足の方は大丈夫。動くのに支障ないかな。
もし動きにくかったら言ってね。切るか縫うかするから」
「大丈夫ですよ。それに暖かくてとても嬉しいです。ありがとうございます」
勇者は心配そうにマーナを見て、足や腕を確認していたが、マーナの方はというと嬉しそうに笑って胸元の所余っている布を握り締めていた。首筋の部分もマーナには大きく布がたくさん余って口元などがそれで隠れてしまっている。
「じゃあ、買い物に行こうか。あ、でもその前にちゃんと飲み物は飲んでね。しっかり体温めてから買いに行こう。まだ手もこんなに冷たいから温めないと
勇者がほっとして笑顔になりながら、マーナの体に触れていく。つめたくないかどうか確認しているだけとはいえ、大胆な触り方であった。
こそばゆいのにマーナの背が丸まっていく。大丈夫ですよとか細い声が出て初めて勇者は己の手のことに気付いて謝罪していた。
でも温めなくてはいけないからと最後にはまた手を繋いで、もうしばらくとそうしていた。
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