魔王の娘(6歳)は勇者が欲しい

わたちょ

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魔王の娘と幼馴染 前

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 翌日、日の出が昇ると共に起きた勇者はマーナが眠るベッドをみて首を傾けていた。マーナはベッドで恐らく寝ているのだろうが、布団の中に頭から潜っていてその姿を見ることはできない。代わりに布団の上から卵のように丸まった塊を見ることはできた。
 おそらくそれがマーナで布団の中俯きに膝を抱えて寝ているんじゃないかと思われる。旅の途中は様々な人と関わり、共に眠ることがあったがこのような寝相の相手は初めて出会った。寝苦しくないのだろうかと不思議に思いつつもまだまだ起きる時間でもないので起こそうとまでは思わなかった。
 顔を洗い、朝食の準備を進めていく。
 そうしていると早い段階でもぞもぞと布団が動きだしていた。小さな頭が白いシーツの下から出てきてぴょっこりと顔を見せる。その目はすぐに勇者を見るとにっこり笑いおはようございますと元気な声を出していた。
寝起きの良さに感心しながら勇者もおはようと笑う。
「朝食の準備はもう少しかかるから待っていてね」
「はい。何かお手伝いできることありますか」
「大丈夫だよ。椅子に座ってゆっくり待ってて」
「……分かりました」
 何故だかマーナの唇は尖ったものの言われたままにベッドから降りると椅子に座って大人しく待っていた。手際よく朝食を作っていく。野菜を大量に入れたスープとパン。簡素だが美味しいいつもの朝食のメニューだ。パンは安く固いものを使っているので今日は少し考えた後スープの中に浸して出す。
 魔族というのは全員歯が頑丈はイメージだが、さすがに子供に自分も苦労して食べているものを出す気にはなれなかった
 テーブルに並べると嬉し気に勇者に向けてほほ笑む。
「とても美味しそうです。これマーナが食べてよいのですか」
「うん。口に合うか分からないけどたくさん食べてね」
「はい」
 いただきますと二人手を合わせて食べ始めた。一口目を含んだマーナは幸せそうにその頬を緩めて美味しいですと満面の笑みを浮かべる。嘘ではなく気に入ってくれたのだろう。次々と口の中に詰め込んでは食べてくれていた。勇者もその姿を見ながら食べていく。今日はこの後何の予定もなく迎えがくるまでの間二人で家の中で過ごす予定だった。
 勇者が食べ終わったころもまだマーナは食べていた。子供だからなのかマーナの一口は勇者の一口よりもずっと小さくて量が少ないけど大体いつも勇者は一足先に終わってもう少し合わせて食べてもよかったのではと後悔するのだった。
 今日もまた後悔するのだったが、そんな時間は短かった。マーナが食べ終わったのではなく後悔しそうになった時に、勇者はいるよと幼馴染が家の中に入ってきたのだ。
 えっと勇者の目が見開く。それよりもずっとマーナの目が見開いて突然入ってきた幼馴染の姿を見た。幼馴染の目も見開いてマーナと勇者を見る。
 え、ええと幼馴染から戸惑った声が聞こえてくる。あっと勇者は口を開けてマーナと幼馴染を見る。彼女が来るなんて話は幼馴染には一つも言っていなかったことを思い出したのだ。
「ゆ、勇者どうしてこんな早朝からそのこが……」
「いや、その昨日から泊まりに来ていて……」
「泊りってまさかこの家で一緒に寝て……。え、は。あんた何して」
 幼馴染が引きつった声で問いかけてくる。勇者は頭を抱えた。ただでさえマーナと婚約してからと云うもの何処かみんなの様子がいつもと違うと言うのに、こんなところで何かを勘違いされでもしたらと冷や汗が流れていく。だが勇者はまだ冷や汗を流すには早かったのだ。
 勇者様と勇者の前から冷ややかな声が聞こえてくる。
 そちらを見たら瞳孔まで見開いてじっと見てくるマーナの姿が見える。ま、マーナちゃんと引き攣った声。どうにかしなければ。どうにかこの状況を逃げなければと目が泳ぐ。どんな敵にもひるむことなく挑んできたが、これは無理だった。
 何かを言おうと幼馴染の口が開く。そうだと勇者は叫んだ
「わざわざどうしたんだよ。いつもこんな時間に来ないだろう」
 何か用事があったんじゃとしどろもどろで口にする姿には勇者の威厳なんてものは欠片もなかった。どうしたんだとヘラりと口角を上げて幼馴染を見る。
 幼馴染はじっと勇者を見たが、すぐにそれがと神妙な顔を作った。
「昨日の地震で山崩れが起きたらしいの。幸い人が住んでいるような場所じゃないからけが人はいないんだけど、道がつぶれて通れないんだって。このままじゃ町にも行けないから勇者に手伝ってほしいって」
「場所は」
「西側よ」
 話を聞くや否や勇者は立ち上がっていた。さっと剣を手にし他の荷物も身に着けていく。そこまで準備してからちらりとマーナの方を見た。
 マーナは二人の話を聞いて目を丸くしていたが、勇者の視線に気づくとすぐに笑っていた。行ってらっしゃい。おとなしくここで待ってますと勇者が何かを言う前から彼女は言っている。
 ぐっと罪悪感で胸を押しつぶされるが、勇者としてはここでいかないわけにもいかない。頼むと頭を下げると、次は勇者は幼馴染を見ていた。
「悪いけど、マーナちゃんのこと俺が帰ってくるまで見て手上げてくれないかな。
すぐ終わらせて急いで帰ってくるから」


「え、でも私も」
「子供を一人でいさせるわけにもいかないだろう」
 一瞬だけ幼馴染は顔を歪ませていた。それに勇者は気付くことなくマーナを頼むと幼馴染を真剣な目で見てお願いした。
 仕方ないわねと彼女が頷いてすぐに勇者は動き出す。
 じゃあ言ってくると二人に告げて部屋かの中からすごい速さで出ていていた。
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