人の気の毒は蜜の味。

砂名

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他人の気の毒は蜜の味。

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 「自分じゃな……、良かった…に。」

    遠くの方からサイレンが聞こえる。音が響いている。後ろから来ているのかそれとも前からなのか分からない。音が近づいてきた。そういえば、何時だかテレビで見たことがあった。救急車などのサイレンの音はドップラー現象というのに基づき、その音を聞く場所によって音の高さが変わるらしい。
 いつの間にか、人が集まっている。
ウーウー、ざわざわ、不愉快な音だ。
ああ、もう眠たい。どうか静かにしておくれ。

 この前、近所で火事があった。これは、らしいではなく実際に見た。出火元は木造の一軒家で周りは畑に囲まれていたので他に燃え移る事は無かった。しかし、その家は半分以上燃えてしまいほとんど二階部分は残っていなかった。消防車が到着して消化作業を行っている時、そのすぐ横のコンビニには人が集まってきていた。向かいの家の親子も自転車に乗り見物に行った。皆が写真を撮ったり、興奮して眺めている。家はまだ炎を上げている。
 数分たって親子が戻ってきた。すごかったねっ。こわいー。女の子が笑う。そうだな。「………………。」父親が微笑む。

 その夜、いつもと違って変に濁った風呂のお湯を見ていた。不思議に思って見ていた。するとそのタイミングで、放送が入る。区役所からだ。ああ、そういえば火事があったんだ。それならば仕方ない。
   
「可愛そうに。うちじゃなくて良かった。」
少し熱めのお湯で顔を拭い、昼間に撮った写真をSNSにあげようかと考えながら私は緩んだ顔でトプンと風呂に潜った。
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