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凍雲の章
過去《中》
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こうして二人がほとんど話さなくなったまま、地元にある八重中学校に入学し、そこでの生活が始まった。八重中学校は松前小学校だけでなく、染井小学校と四季小学校の二校の生徒たちも通う先でもある。そのうちの一校、四季小学校というのはガラの悪さが地元ではダントツで、その中でもトップクラスの悪ガキが優華たちと同時に入学してくるということもあって、入学式では先生たちの間から違った意味で緊張感が漂っていた。
そんな中学に通ってくる生徒の噂はさすがの優華でも知っていた。目を付けられないようひっそりと生きていくのが一番だと感じた優華は、小学校の時以上に周りの女子たちとの距離をおき、ほとんどの時間を一人で過ごすようになった。
小学生の時からの知り合いも当然多いので、誰とも喋らない、ただ一人でずっと本を読んでいる優華の噂は瞬く間に周囲に広がり、数日過ぎたころから周りからの好意的でない視線を多々、感じるようになった。その視線から逃れるために一人で過ごす時間を増やす、だが、教室に入れば周囲の好意的でない視線に晒され、そしてまた一人で過ごす時間を増やすという悪循環な生活を送っていた。
そんな生活を過ごしているうちに、入学後最初の中間試験の時期がやってきた。女子トイレで優華はほかの同級生たちがこっそり話していたのを耳にした。なんでも『自分が一番でなければならない』、『自分が一番なのは当たりまえ』という思考を持つ同級生がいるらしいと。
言われてみれば、確かにその同級生は自意識過剰、勝利主義なのは普段の学校生活から分かった。どうやら松前小学校での優華の成績を聞いていたらしく、入学して最初の中間試験前は粘着質に優華に向かって一方的に絡んできたのを記憶していた。試しに一度、その試験で優華はあえて手を抜いた。案の定、その同級生――――住田亮真は学年でトップの成績だったようで、鼻高々に“松前小で良い点数取ってても、所詮俺にはかなわないだろうな”とわざと優華に聞かせるためにクラス内で大きな声で言い、取り巻きたちも優華の方を見て嘲笑していたのが分かった。
優華は彼らの行動に呆れて心の中だけでため息をついたが、余計な火種をまき散らしたくもなかったので、黙って彼らの嘲りを受けるだけにとどめた。
そして、その試験が終わってこれからも手を抜こうと決めた矢先の期末試験で、住田が想像以上に厄介な性格だと気づいた。それは、自分が認めた相手にしか勝ちを譲らない性格だったのだ。住田と同じ四季小学校出身の女子が家庭科で学年トップを取ったが、彼はその女子に向かってはさわやかな笑みでお前が成績トップなら問題ない、とはっきりと言っていたのだ。その裏でご愁傷さまというような顔を優華に向けたものだから、優華は呆れを通り越して笑ってしまいそうな思いをした。
その後も優華は四回の試験で手を抜いた。今思えば、もうその頃から先生たちも優華のことを松前小学校で優秀だった『仁科優華』ではなく、ただの平均点しか取れない『仁科優華』として扱うようになっていた。
そんな中学に通ってくる生徒の噂はさすがの優華でも知っていた。目を付けられないようひっそりと生きていくのが一番だと感じた優華は、小学校の時以上に周りの女子たちとの距離をおき、ほとんどの時間を一人で過ごすようになった。
小学生の時からの知り合いも当然多いので、誰とも喋らない、ただ一人でずっと本を読んでいる優華の噂は瞬く間に周囲に広がり、数日過ぎたころから周りからの好意的でない視線を多々、感じるようになった。その視線から逃れるために一人で過ごす時間を増やす、だが、教室に入れば周囲の好意的でない視線に晒され、そしてまた一人で過ごす時間を増やすという悪循環な生活を送っていた。
そんな生活を過ごしているうちに、入学後最初の中間試験の時期がやってきた。女子トイレで優華はほかの同級生たちがこっそり話していたのを耳にした。なんでも『自分が一番でなければならない』、『自分が一番なのは当たりまえ』という思考を持つ同級生がいるらしいと。
言われてみれば、確かにその同級生は自意識過剰、勝利主義なのは普段の学校生活から分かった。どうやら松前小学校での優華の成績を聞いていたらしく、入学して最初の中間試験前は粘着質に優華に向かって一方的に絡んできたのを記憶していた。試しに一度、その試験で優華はあえて手を抜いた。案の定、その同級生――――住田亮真は学年でトップの成績だったようで、鼻高々に“松前小で良い点数取ってても、所詮俺にはかなわないだろうな”とわざと優華に聞かせるためにクラス内で大きな声で言い、取り巻きたちも優華の方を見て嘲笑していたのが分かった。
優華は彼らの行動に呆れて心の中だけでため息をついたが、余計な火種をまき散らしたくもなかったので、黙って彼らの嘲りを受けるだけにとどめた。
そして、その試験が終わってこれからも手を抜こうと決めた矢先の期末試験で、住田が想像以上に厄介な性格だと気づいた。それは、自分が認めた相手にしか勝ちを譲らない性格だったのだ。住田と同じ四季小学校出身の女子が家庭科で学年トップを取ったが、彼はその女子に向かってはさわやかな笑みでお前が成績トップなら問題ない、とはっきりと言っていたのだ。その裏でご愁傷さまというような顔を優華に向けたものだから、優華は呆れを通り越して笑ってしまいそうな思いをした。
その後も優華は四回の試験で手を抜いた。今思えば、もうその頃から先生たちも優華のことを松前小学校で優秀だった『仁科優華』ではなく、ただの平均点しか取れない『仁科優華』として扱うようになっていた。
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