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第百一話
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「お帰りなさい! 主都はどうだった?」
クロエが温かい笑顔で迎えてくれる。
「すごくキレイでした! 湖がキラキラして・・・、街並みもすてきだし、子供たちがセヴラン様を慕っている様子が微笑ましかったです」
なんだか遠足とか修学旅行から帰ってきた小学生とか中学生が、母親に嬉々として報告しているようで、気恥ずかしい。小学生の時には、もう、母親は家を出て行ってしまっていたのだから、そういう経験が無かったわけで、奈々実はクロエの温かい母性にとても感謝している。
しかし母性は、時に温かいだけではない。
「それはよかったけど、ナナミ、有酸素運動サボったでしょう?」
指摘されてギクリとする。
「えっ? どうしてわかるんですか!?」
「わかるわよ! 少しリバウンドしてるでしょ!?」
否定できない。セヴランの生家で出される食事が美味しくてパクパク食べてしまったのは事実だし、エルネストにコショネ呼ばわりされることにイライラして、自棄食い的に過食気味になっていたことも否定できない。
「こ~れ~は、何っ?」
脇腹に手を回され、むにむにっと肉を掴まれて、奈々実は飛び上がった。
「ふぎゃあっ!」
「せっかくいい感じで痩せ始めていたのに! 明日からは有酸素運動増やすわよ!」
「ひええっ!」
「ひええじゃない! はい!」
「はいっ!」
温かい母性だけではない。鬼教育官の顔もばっちり健在だ。
「クロエ。ナナミを馬に乗せてやってくれないか?」
突然、セヴランが口を挿む。
「腹筋と体幹をしっかり鍛えるには乗馬がいいだろう? 一人で乗れるようにしてやって欲しいんだ」
「かしこまりました」
「ニケの傷が治ったら、遠乗りに行こう。ちゃんと練習しろよ?」
「はい・・・」
今度、馬に乗る場合には是が非でもズボンで! と心の中で叫ぶ。
クロエが温かい笑顔で迎えてくれる。
「すごくキレイでした! 湖がキラキラして・・・、街並みもすてきだし、子供たちがセヴラン様を慕っている様子が微笑ましかったです」
なんだか遠足とか修学旅行から帰ってきた小学生とか中学生が、母親に嬉々として報告しているようで、気恥ずかしい。小学生の時には、もう、母親は家を出て行ってしまっていたのだから、そういう経験が無かったわけで、奈々実はクロエの温かい母性にとても感謝している。
しかし母性は、時に温かいだけではない。
「それはよかったけど、ナナミ、有酸素運動サボったでしょう?」
指摘されてギクリとする。
「えっ? どうしてわかるんですか!?」
「わかるわよ! 少しリバウンドしてるでしょ!?」
否定できない。セヴランの生家で出される食事が美味しくてパクパク食べてしまったのは事実だし、エルネストにコショネ呼ばわりされることにイライラして、自棄食い的に過食気味になっていたことも否定できない。
「こ~れ~は、何っ?」
脇腹に手を回され、むにむにっと肉を掴まれて、奈々実は飛び上がった。
「ふぎゃあっ!」
「せっかくいい感じで痩せ始めていたのに! 明日からは有酸素運動増やすわよ!」
「ひええっ!」
「ひええじゃない! はい!」
「はいっ!」
温かい母性だけではない。鬼教育官の顔もばっちり健在だ。
「クロエ。ナナミを馬に乗せてやってくれないか?」
突然、セヴランが口を挿む。
「腹筋と体幹をしっかり鍛えるには乗馬がいいだろう? 一人で乗れるようにしてやって欲しいんだ」
「かしこまりました」
「ニケの傷が治ったら、遠乗りに行こう。ちゃんと練習しろよ?」
「はい・・・」
今度、馬に乗る場合には是が非でもズボンで! と心の中で叫ぶ。
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