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PART 3 : ワンダリング・パラレルワールド
No.21 智と科学と傲慢 ~ナツの世界(後編)
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アキたちがやって来たことにより、良樹も離れていった。
……どうもアキに怯えているような気配はあるが、それがなぜなのかは本人にもわかっていないようだ。
「アキさん、フユさん。これを」
淡々と、事務的に、笑顔一つも浮かべず風見が二人へとあるものを手渡す。
「ありがとう~」
「……ぁりがとぅ……」
二人へと渡されたのは、ナツが持っていたのと同じ小さな箱――『超科学収納ボックス』である。
「着替え等は全て揃えてあります。使い方は――」
ちらりとナツへと視線を向けて、
「後で聞いておいてください」
それだけ言う。
(……?)
風見のその様子に違和感を覚えたハルは、ナツの方へと視線を向けるが……。
「……」
ナツは先ほど良樹に詰め寄られた時よりも更に暗く沈んだ、まるで世界の終わりが来たかのような表情をして俯いていた。
H世界とN世界はかなり近しい。良樹や風見の容姿が変わっていないことからもそれは確実だ。
『いる』『いない』の差はあれど、『いる』人物間の関係も近しいと思われる。
そうなると、ハルと良樹が親友・良樹の彼女が風見ということは、N世界ではそれが逆転している――ナツと風見が友人同士である可能性が高いとハルは考えたのだが……。
(…………? なんだ、この違和感は……?)
何か引っかかるものがあることにハルは気が付いた。が、その正体は掴むことができず――
「おい、てめぇ」
「……何だよ」
良樹に声を掛けられたことで思考が中断された。
相変わらず顔は同じなのに敵愾心剥き出しの目を向けられるのは堪えるが、ハルは平静を装う。
「俺のナツミに傷一つつけたら許さねぇからな!」
「…………あ、ああ……」
「あ、あの……諸星君……」
「あー、くそ! 俺もそっちに行ってナツミを守ってやりてぇ!」
「また喧嘩ぁ~? んもぅ、『メッ』しないとダメかしらねぇ~?」
「ひぃっ!? あ、あ、アキさん……ち、違うっすよ!?」
再びほとんどの視線がハル……というより良樹へと集まった。
その様子を横目に、風見はフユへと箱を渡しつつ、一言二言声をかけていた。
「諸星君、そろそろいきましょう」
「……チッ。
じゃ、またな、ナツミ~」
「う、うん……。
……あの、マキちゃん……」
用事は済んだ、とばかりにさっさとその場を離れようとする風見に、恐る恐る声をかけるナツであったが、
「……」
風見は一切視線を向けることなく、名残惜しそうな良樹と共にその場から離れるのであった。
「……はぁ」
良樹たちが離れた後、ナツは大きなため息を吐く。
そのため息は、良樹のことなのかあるいは風見のことなのか――
ハルが何か声をかけようとするよりも早く、ナツは気持ちを切り替え少し照れたような笑顔を浮かべる。
「ごめんね、皆。変なとこ見せちゃって」
「いや……」
あの状況で何も動けなかったことを詫びればいいのか、気にしてないとでも言えばいいのか。
ハルにはわからなかった。
「アキ姉たちの『超科学収納ボックス』も受け取ったし――後は私の道具を持っていけばオッケーかな? 昨日はハルのところに急いで行ったから、最低限しか持ってなかったしねー。
ちょっと寄り道してから、ハルの部屋に戻りましょうか」
気になるところはいくつかあったが、まだ明確な疑問とまではなっていない。
諸々を呑み込みつつ、ともかくここからが『本番』なのだ――そうハルは思うのだった。
雑然と様々な(何に使うのか見当もつかない)道具を次々と『超科学収納ボックス』へと放り込み、4人は『超科学パラレルワールドゲート』を潜ってハルの部屋へと向かう――
……どうもアキに怯えているような気配はあるが、それがなぜなのかは本人にもわかっていないようだ。
「アキさん、フユさん。これを」
淡々と、事務的に、笑顔一つも浮かべず風見が二人へとあるものを手渡す。
「ありがとう~」
「……ぁりがとぅ……」
二人へと渡されたのは、ナツが持っていたのと同じ小さな箱――『超科学収納ボックス』である。
「着替え等は全て揃えてあります。使い方は――」
ちらりとナツへと視線を向けて、
「後で聞いておいてください」
それだけ言う。
(……?)
風見のその様子に違和感を覚えたハルは、ナツの方へと視線を向けるが……。
「……」
ナツは先ほど良樹に詰め寄られた時よりも更に暗く沈んだ、まるで世界の終わりが来たかのような表情をして俯いていた。
H世界とN世界はかなり近しい。良樹や風見の容姿が変わっていないことからもそれは確実だ。
『いる』『いない』の差はあれど、『いる』人物間の関係も近しいと思われる。
そうなると、ハルと良樹が親友・良樹の彼女が風見ということは、N世界ではそれが逆転している――ナツと風見が友人同士である可能性が高いとハルは考えたのだが……。
(…………? なんだ、この違和感は……?)
何か引っかかるものがあることにハルは気が付いた。が、その正体は掴むことができず――
「おい、てめぇ」
「……何だよ」
良樹に声を掛けられたことで思考が中断された。
相変わらず顔は同じなのに敵愾心剥き出しの目を向けられるのは堪えるが、ハルは平静を装う。
「俺のナツミに傷一つつけたら許さねぇからな!」
「…………あ、ああ……」
「あ、あの……諸星君……」
「あー、くそ! 俺もそっちに行ってナツミを守ってやりてぇ!」
「また喧嘩ぁ~? んもぅ、『メッ』しないとダメかしらねぇ~?」
「ひぃっ!? あ、あ、アキさん……ち、違うっすよ!?」
再びほとんどの視線がハル……というより良樹へと集まった。
その様子を横目に、風見はフユへと箱を渡しつつ、一言二言声をかけていた。
「諸星君、そろそろいきましょう」
「……チッ。
じゃ、またな、ナツミ~」
「う、うん……。
……あの、マキちゃん……」
用事は済んだ、とばかりにさっさとその場を離れようとする風見に、恐る恐る声をかけるナツであったが、
「……」
風見は一切視線を向けることなく、名残惜しそうな良樹と共にその場から離れるのであった。
「……はぁ」
良樹たちが離れた後、ナツは大きなため息を吐く。
そのため息は、良樹のことなのかあるいは風見のことなのか――
ハルが何か声をかけようとするよりも早く、ナツは気持ちを切り替え少し照れたような笑顔を浮かべる。
「ごめんね、皆。変なとこ見せちゃって」
「いや……」
あの状況で何も動けなかったことを詫びればいいのか、気にしてないとでも言えばいいのか。
ハルにはわからなかった。
「アキ姉たちの『超科学収納ボックス』も受け取ったし――後は私の道具を持っていけばオッケーかな? 昨日はハルのところに急いで行ったから、最低限しか持ってなかったしねー。
ちょっと寄り道してから、ハルの部屋に戻りましょうか」
気になるところはいくつかあったが、まだ明確な疑問とまではなっていない。
諸々を呑み込みつつ、ともかくここからが『本番』なのだ――そうハルは思うのだった。
雑然と様々な(何に使うのか見当もつかない)道具を次々と『超科学収納ボックス』へと放り込み、4人は『超科学パラレルワールドゲート』を潜ってハルの部屋へと向かう――
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