34 / 63
34.腑に落ちない
しおりを挟む
奇々怪々なユーのセーラー服を見てからというもの。
「……うーん?」
俺はキッチンで豚バラ肉を炒めながら、頭を捻っていた。
ユーの制服には無地のタグが着いていた。とても外見の似た別物という可能性も考えたが、あのセーラー服はどう見たってうちの高校のものだ。ご丁寧に校章の刺繍がされてあった。
しかし衣料品のタグはそうそう掠れるものでは無い。洗濯しても、長いこと着続けたってタグは色落ちしない。落ちたところであんなに真っ白になることはまず無い。あの制服のタグは元々白かったとしか考えようがない。
しかし、タグが白い制服が売っているはずはない。そもそもユーは170cm強の背丈があり、そう簡単に制服は入手出来ないはずだ。考えれば考えるほど入手経路が謎めいている。
うなれど悩めど、俺の推理力だけでは答えに辿り着けなさそうだ。
「うーん……ん?」
ふと、気がついた。なんだか下が焦げ臭い。
目線を下げると、フライパンから煙がもくもくと出ていた。
「ぎゃあ!焦げてんじゃねえかっ!!」
慌てて生姜焼き……、もとい生姜焼き過ぎを陸揚げし、フライパンの焦げを落とす。だから俺にマルチタスクはどだい無理なのだ。
「考えごとしながら料理とか、するもんじゃねえな……ああ……」
試しにひとつ、菜箸でつまんで食べてみる。
歯に触れた瞬間パッサパサに焦げた表面が崩壊し、苦味が口いっぱいに広がる。ひと噛みするとほのかに生姜焼きの塩気を感じたが、それをかき消すような渋みと焦げ臭さがある。生姜焼きのくせに、生姜を感じない。もはや原型すら残っていないほど焼き尽くされている。
「……まっず」
ダイニングテーブルで一人、顔を顰めていると、
「いやー気持ちよかったゆー!」
タオルを首にかけたユーが風呂から出てきた。だいぶしっかりと浸かったらしく、頭からは湯気が上がっている。
「おう、おかえり。湯加減は問題なかったみてえだな」
「バッチリだったゆー!……ん?何食べてるんだゆー?それになんか焦げ臭くないかゆー?」
ユーはすんすんと鼻を鳴らした。
「ああ、ちょうど料理焦がしちまってな……っていうか嗅覚はあるのかお前の体。てっきり飯食えねえし感覚とか無いもんだと思ってたが」
「ふふふ、実は最近実装したんだゆー!その他にもうっすら味覚も感じられるようになったんだゆー!あっ、ちょうどいいところに……!貰ってくゆー!」
「あっ、箸あるから使え!」
俺の静止も間に合わず。ユーは真っ黒な生姜焼きをひょいとつまみ上げるなり、口に放り込んだ。そして数秒咀嚼して、
「ふふっ、苦いゆー」
と、はにかんだ。炭の塊みたいなのを食べたはずなのに、何故かユーは満足気だ。
「わざわざ真っ黒なやつ食わなくったって、せっかく飯が食えるならちゃんとしたやつ用意したのによ……口直しに水いるか?」
「いらないゆー!せっかく食べられたのにもったいないゆー!」
「なんだそれ。よく分からねえけど腹壊すなよ?」
相変わらず、ユーが何を考えているかはまるで分からない。しかし、この焦げの山を捨てなくて良くなりそうで助かった。
安心したついでに、悲惨な生姜焼きが出来上がった原因の一つを直接聞いてみることにした。
「そういや、お前あのセーラー服どこで用意したんだ?買ったのか?タグが真っ白だったんだが……」
俺の質問にユーの体がビクリとはねた。
「た、タグ?タグって何だゆー?」
「服の裏地に縫い付けてる札だ。原材料とか製造元、取扱の注意とが書いてある。正規品だったらちゃんとそういうのが書いてるはずなんだが、お前のには無くてな」
「そ、そうだったのかゆー!?気が付かなかったゆー!」
「気が付かなかったって、どういうことだ?」
「あれ、コズハの見ながらぼくが自作したものだったんだゆー!だから内部の模倣まで手が回らなかったんだゆー!」
「……なるほど?そういうことか」
確かに外見だけを見ていれば、細部までは観察ができないだろう。いや、待てよタグってそもそも着てたら見えない位置にあるよな。そもそもタグがあること自体知らない奴が、白い布切れだけつけるなんてことがあるか?
「なあ、ユー。あれ本当にお前が……」
俺が聞き返そうとした途端、
「あーっ!」
ユーが思い出したかのように叫んだ。
「なんだよいきなりうるせぇな」
「ナナイってたしかまだお風呂入って無いんだゆー?じゃあぼくと一緒に入らないかゆー?」
「藪から棒にやべえ提案してくるんじゃねぇ。俺は1人で入るからお前はそこでテレビでも見てろ」
「えー!観察させてくないのかゆー?」
「ダメに決まってるだろ!それにお前はさっき入ってたじゃねえか!」
「そんなつれないこと言わないで欲しいゆー!別に入っちゃダメなんてことも無いはずだゆー!」
「だから!俺はお前と入りたくねえんだよ!」
「なんでだゆー?裸体を見せ合うだけなのに……」
「それが嫌なんだよ!!!」
結局、俺は逃げるように風呂に入ることにした。
「……うーん?」
俺はキッチンで豚バラ肉を炒めながら、頭を捻っていた。
ユーの制服には無地のタグが着いていた。とても外見の似た別物という可能性も考えたが、あのセーラー服はどう見たってうちの高校のものだ。ご丁寧に校章の刺繍がされてあった。
しかし衣料品のタグはそうそう掠れるものでは無い。洗濯しても、長いこと着続けたってタグは色落ちしない。落ちたところであんなに真っ白になることはまず無い。あの制服のタグは元々白かったとしか考えようがない。
しかし、タグが白い制服が売っているはずはない。そもそもユーは170cm強の背丈があり、そう簡単に制服は入手出来ないはずだ。考えれば考えるほど入手経路が謎めいている。
うなれど悩めど、俺の推理力だけでは答えに辿り着けなさそうだ。
「うーん……ん?」
ふと、気がついた。なんだか下が焦げ臭い。
目線を下げると、フライパンから煙がもくもくと出ていた。
「ぎゃあ!焦げてんじゃねえかっ!!」
慌てて生姜焼き……、もとい生姜焼き過ぎを陸揚げし、フライパンの焦げを落とす。だから俺にマルチタスクはどだい無理なのだ。
「考えごとしながら料理とか、するもんじゃねえな……ああ……」
試しにひとつ、菜箸でつまんで食べてみる。
歯に触れた瞬間パッサパサに焦げた表面が崩壊し、苦味が口いっぱいに広がる。ひと噛みするとほのかに生姜焼きの塩気を感じたが、それをかき消すような渋みと焦げ臭さがある。生姜焼きのくせに、生姜を感じない。もはや原型すら残っていないほど焼き尽くされている。
「……まっず」
ダイニングテーブルで一人、顔を顰めていると、
「いやー気持ちよかったゆー!」
タオルを首にかけたユーが風呂から出てきた。だいぶしっかりと浸かったらしく、頭からは湯気が上がっている。
「おう、おかえり。湯加減は問題なかったみてえだな」
「バッチリだったゆー!……ん?何食べてるんだゆー?それになんか焦げ臭くないかゆー?」
ユーはすんすんと鼻を鳴らした。
「ああ、ちょうど料理焦がしちまってな……っていうか嗅覚はあるのかお前の体。てっきり飯食えねえし感覚とか無いもんだと思ってたが」
「ふふふ、実は最近実装したんだゆー!その他にもうっすら味覚も感じられるようになったんだゆー!あっ、ちょうどいいところに……!貰ってくゆー!」
「あっ、箸あるから使え!」
俺の静止も間に合わず。ユーは真っ黒な生姜焼きをひょいとつまみ上げるなり、口に放り込んだ。そして数秒咀嚼して、
「ふふっ、苦いゆー」
と、はにかんだ。炭の塊みたいなのを食べたはずなのに、何故かユーは満足気だ。
「わざわざ真っ黒なやつ食わなくったって、せっかく飯が食えるならちゃんとしたやつ用意したのによ……口直しに水いるか?」
「いらないゆー!せっかく食べられたのにもったいないゆー!」
「なんだそれ。よく分からねえけど腹壊すなよ?」
相変わらず、ユーが何を考えているかはまるで分からない。しかし、この焦げの山を捨てなくて良くなりそうで助かった。
安心したついでに、悲惨な生姜焼きが出来上がった原因の一つを直接聞いてみることにした。
「そういや、お前あのセーラー服どこで用意したんだ?買ったのか?タグが真っ白だったんだが……」
俺の質問にユーの体がビクリとはねた。
「た、タグ?タグって何だゆー?」
「服の裏地に縫い付けてる札だ。原材料とか製造元、取扱の注意とが書いてある。正規品だったらちゃんとそういうのが書いてるはずなんだが、お前のには無くてな」
「そ、そうだったのかゆー!?気が付かなかったゆー!」
「気が付かなかったって、どういうことだ?」
「あれ、コズハの見ながらぼくが自作したものだったんだゆー!だから内部の模倣まで手が回らなかったんだゆー!」
「……なるほど?そういうことか」
確かに外見だけを見ていれば、細部までは観察ができないだろう。いや、待てよタグってそもそも着てたら見えない位置にあるよな。そもそもタグがあること自体知らない奴が、白い布切れだけつけるなんてことがあるか?
「なあ、ユー。あれ本当にお前が……」
俺が聞き返そうとした途端、
「あーっ!」
ユーが思い出したかのように叫んだ。
「なんだよいきなりうるせぇな」
「ナナイってたしかまだお風呂入って無いんだゆー?じゃあぼくと一緒に入らないかゆー?」
「藪から棒にやべえ提案してくるんじゃねぇ。俺は1人で入るからお前はそこでテレビでも見てろ」
「えー!観察させてくないのかゆー?」
「ダメに決まってるだろ!それにお前はさっき入ってたじゃねえか!」
「そんなつれないこと言わないで欲しいゆー!別に入っちゃダメなんてことも無いはずだゆー!」
「だから!俺はお前と入りたくねえんだよ!」
「なんでだゆー?裸体を見せ合うだけなのに……」
「それが嫌なんだよ!!!」
結局、俺は逃げるように風呂に入ることにした。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする
エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》
16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。
告白されて付き合うのは2か月後。
それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。
3人のサブヒロインもまた曲者揃い。
猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。
この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?
もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!
5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生!
※カクヨム、小説家になろうでも連載中!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる